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- カテゴリ:一般
- 発行年月:1999.9
- 出版社: 出版芸術社
- サイズ:20cm/221p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-88293-175-3
紙の本
緑の幻影
著者 倉阪 鬼一郎 (著)
謎の伝説、奇妙な音楽、正体不明の投稿者、老婆の声、そして、忍び寄る邪神の影…。ミステリー、SFの要素も含みつつ展開する、戦慄のクトゥルー幻覚ホラー。【「TRC MARC」...
緑の幻影
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商品説明
謎の伝説、奇妙な音楽、正体不明の投稿者、老婆の声、そして、忍び寄る邪神の影…。ミステリー、SFの要素も含みつつ展開する、戦慄のクトゥルー幻覚ホラー。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
倉阪 鬼一郎
- 略歴
- 〈倉阪鬼一郎〉1960年三重県生まれ。早稲田大学大学院日本文学専攻中退。作家、翻訳家、俳人。著書に「田舎の事件」「死の影」「活字狂想曲」「赤い額縁」などがある。
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紙の本
猟奇の果ての奇妙な安堵
2002/04/18 03:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々宝砂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は20世紀最後の怪奇小説家を自称していた人だが、この本はあまり正統的な怪奇物ではない。ひねりをくわえたクトゥルー・ホラー、キャッチャーのミットに入り損ねてどこか異次元にすっ飛んでいった変化球とでも言おうか。万人におすすめできる代物ではない。しかし、どぎつい緑と赤の装丁、不気味な蛇女がモノクロで描かれている表紙、そんなものを見て狂喜するような読者には気兼ねなくおすすめしていいだろう。
倉阪鬼一郎お得意のいつもの手法だが、物語の随所に、仕掛けが施された思わせぶりな詩、奇妙なタイトルの歌などなど、アクロスティックとアナグラムがふんだんに散りばめられている。物語は、発端からホラーらしい不吉な予感とシンクロニシティーに彩られており、ホラー好きな読者を期待させずにはおかない。ホラー雑誌の編集を生業とする主人公白坂は、取材のために田舎町の温泉を訪ねる。その地は、白坂の知人である女編集者が行方を立った土地であり、謎めいた詩を投稿する読者が暮らす精神病院が建っている土地でもあり、クトゥルーを思い出させる奇妙な伝説が伝わっている土地でもある。そのうえ、その町には赤無(あかむ)という地名があり、屍が赤子を食い尽くしたという伝説が残っているのだ。言うまでもないことだが、この赤無なる地名を見てニヤニヤしない人にはこの本は不向きである。
物語が半ばを過ぎたあたりから幻覚と現実が入り交じってゆき、現実と思っていたものが次々とひっくり返される。主人公同様に読者も翻弄されてしまう。今度こそ現実と思って目醒めても、まだ悪夢の中なのだ。そして悪夢から醒めることはなく、真っ赤な血が飛び散り惨劇のさなかに幕が下りる…しかし、全く怖くない。少なくとも私には怖くない。むしろ私は、このラスト・シーンに奇妙な安息を感じる。正統的な怪奇小説ではない、という印象は、もしかしたらそういう読後感のせいかもしれない。この奇妙な安らぎがあるから、私はこの本を好きになったのだけれども。