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閉鎖都市巴里 上 (電撃文庫 都市シリーズ)
著者 川上 稔 (著)
文字情報によってのみ存在が可能となる都市――巴里。この都市は、最も安全に己の情報を作り、秘め、発信するために、数百年も自ら結界を張っていた。 しかし、第二次世界大戦中、...
閉鎖都市巴里 上 (電撃文庫 都市シリーズ)
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商品説明
文字情報によってのみ存在が可能となる都市――巴里。この都市は、最も安全に己の情報を作り、秘め、発信するために、数百年も自ら結界を張っていた。
しかし、第二次世界大戦中、独逸軍の言詞爆弾の爆発により、時空の連環〈メタフィジコーズ〉が生じ、巴里は1944年の一年間を繰り返す二重に閉鎖された都市となってしまった。
そして、時は現在――。米国から重騎士の訓練を受けたベレッタは、曾祖父が残したアティゾール計画を探るため、留学生として1944年の巴里へと旅立った。
はたしてベレッタという異分子を受け入れた巴里はどう変化していくのか? 独逸占領下の巴里が解放され、連環が消失した時、世界に訪れる真の危機とは!?【商品解説】
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「迦鳥の感想文『閉鎖都市巴里を読んで』」…なんてね。
2002/07/24 12:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:迦鳥 - この投稿者のレビュー一覧を見る
都市シリーズ5番目の都市はパリです。
世界からも時間の流れからも切り離され、1943〜44年の一年間を内部でひたすら繰り返し続ける閉鎖都市。
この世界は「表記しなければ消え去る文字世界」。音も味覚も何もかも、表記して始めて存在でき、自分がどこで何をしたか書かなければ、それをしたことにはならない。
そのため、この小説は登場人物たちの手記、日記、手紙、メモ、通信文といった類の文章を寄せ集めたもので成り立っています。
あいかわらずのややこしい世界観ですが、メインとなる文章が女の子2人の手記なので、受ける印象は軽やかです。
タイムパラドックスものや、巨大ロボのバトルものとしても楽しめると思いますが、私は「あしながおじさん」のような名作風・少女の成長物語として楽しみました。
また、主人公の片割れ、自動人形ロゼッタが人間らしく変化していくと同時に、句読点もなくだらだらと事実を書き綴っていた文章が生き生きと変わっていくあたりは「アルジャーノンに花束を」のようで面白く感じました。
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二人の少女は出会い、自らの生き方を定めていく
2001/01/26 15:31
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆぎり - この投稿者のレビュー一覧を見る
手記をもって自らを世界に伝えなければならない都市。数百年前に仏蘭西(フランス)をつくる遺伝詞が変換されたことにより、そこは「正確な手記によって、ものが存在できる世界」となった。それ故、文字情報によってのみ存在が可能となる。
第二次大戦中、巴里(パリ)は独逸(ドイツ)軍によって占拠されていた。しかし、独逸軍は連合国側に徐々に押され始め、ノルマンディー上陸を許す。そして、連合軍が巴里解放戦をおこなっているとき、独逸軍の運び込んだ言詞爆弾(ヴォルト・ボンベ)が爆発したことにより、時空間の遺伝詞をも変えてしまい、巴里を中心として仏蘭西は閉じられてしまった。それ以来、世界は1998年になっているにもかかわらず、仏蘭西は爆弾が爆発した1944年8月6日より先に時間は進まなくなり、1943年8月6日から1944年8月6日までの一年間を何度も何度も繰り返すことになった。巴里を含んだ仏蘭西はその同じ一年間をすでに54回も繰り返していた。
アメリカ人のべレッタは留学生として、1998年からこの閉ざされた世界である巴里にやってきた。そしてこの巴里で一人の少女・ロゼッタと出会う。いや少女というには語弊があるかもしれない。なぜならその少女とは自動人形、すなわち機械だったからだ。しかし機械とは言っても、それは自分の意志を持ち、成長していくものでもあった。それ故、べレッタと出会ったことにより徐々に感情を表し始めるようになり、変化していく。
一方、べレッタもロゼッタとの交流を通して「自分はどうありたいのか?」という疑問にぶつかっていく。自分の今まで住んでいた世界とは全く違うこの閉ざされた世界にやってきて何をすればいいのか、何ができるのか。多くに人々と関わっていくことで自分の行く道を思い定めようとする。
ここで語られる物語はその世界の特殊性故に、登場人物たちの日記形式で語られる。各々の登場人物の視点で語られる物語は始めの内は錯綜し、混乱する。しかし、次第にべレッタを中心として、一筋の方向性を見せる。そしてべレッタは一つの決断へと至る。