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紙の本
介護を受ける側からの視点
2001/12/07 23:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白夜 斎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
介護保険法の施行後、介護に関する本はたくさん出ている。この本もその中の一冊である。
筆者は大学の研究者ではない。医者でもない。政治家でも役人でもない。介護ビジネスの経営者であり、進行性筋ジストロフィーという病気で首から下が動かなくなってしまった、介護を受ける側の人間である。
それゆえに、この本の見所は介護保険の制度ではない。介護される側から見た、介護の問題点の指摘の数々である。
特別養護老人ホームの実態。医療費をいたずらに増大させる延命治療。老人のサロンと化している病院。患者不在の医療。本当に介護が必要な人は自宅にいるという矛盾。
筆者は自らの体験と見聞をもとに、これらの問題を指摘していきながら、来るべき超高齢化社会に向けて、いかに老後を「グッド・タイム」にするかという展望を示している。
紙の本
「サービス」としての介護へ
2001/06/01 21:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小田中直樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
色々な議論をまきおこし、ダッチロールしながら介護保険が導入されて、はや一年。遅ればせながら、介護保険が始まる直前に出されたこの本を読んでみた。介護保険の仕組みや外国の介護の実像がコンパクトにまとめてある。そういう名前の保険があったなあとか、アメリカは低福祉で北欧は高福祉だったっけとか、それ位しか知らなかった僕には情報源として役立った一冊。
ただし、この本の目玉はそこにあるわけじゃない。著者の春山さんの一番のもくろみは、介護される人と介護する人の「心得」について、メッセージを発信することだったはずだ。まぁ僕らがよく耳にする心得っていうと、介護される人は「色々と不満もあるけど、とりあえず専門家にお任せするのが一番」あたりだろうし、介護する人は「お金にもなるし、介護される人のためにもなるし、まずは頑張ってリハビリ」ってところか。でも、春山さんは正反対の心得を説いてる。介護される人には「自分のことを一番よく知ってるんだから、自分が一番の専門家。お金を払ってるんだから、介護も商品。普通の買物みたいに、ちゃんと選ぶ。文句があったら、ノー」。介護する人には「つらいリハビリなんて、したくない人もいる、そんな人にもリハビリさせるなんて、そりゃ宗教。大事なのは、体より心のリハビリ」。
この春山さんの意見には、「介護という神聖な営みに商売っ気を持ち込むな」って反論が来るかもしれない。でも、この反論はちょっとずれてる。リハビリみたいな介護も、商品を売るという経営も、サービスを提供してる点は同じ。そう、春山さんのキーワードは多分これ、「サービス」。そして、商品とか聖職とかじゃなくて、サービスという視点から介護保険を見ようとする春山さんには、説得力がある。それは、何よりもまず、心や体の「リハビリ」を必要とする身でありながら、「商品」を扱う経営者を続けてる春山さんの日常生活に裏打ちされてるからだろう。
ただし、この本には不満もある。二つだけ挙げとこう。第一、つらいリハビリをしたくないって気持ちは「あり」だ。でも、リハビリすれば生活の質が上がる場合もある。そのときは、今の辛さと将来の辛さのどっちかを選ばなきゃならない。じゃ、誰が選べばいいんだろうか。これまで「介護する人が専門家なんだから、そりゃ介護する人に決まってる」って言われすぎたせいか、春山さんの意見は逆に(わざとかなぁ)介護される人に傾いてると僕は思う。でも、介護する人も介護される人も、独りじゃ選べないはずだ。むしろ、平凡な言葉だけど、二人でちゃんと話しあうことが大事。そのためには、二人の間に信頼感をつくりあげることが大事。そのためには、必要な環境を整えることが大事。たとえば、もっと介護する人に時間的なゆとりがなきゃ、信頼されようと頑張る気もおきないだろう。もっと介護される人に精神的なゆとりがなきゃ、介護する人と話しあう気力もおきないだろう。
第二、介護される人やその家族が「ノー」と言うことは大事だし、僕も賛成。でも、「ノー」と言おうよって言われて、誰でもすぐ「ノー」と言えるわけじゃない。そういう人に「頑張れ」と言うだけじゃ、なんか足りない。気の弱い人でも「ノー」と言えるように、家族とか友達とかボランティアとか、まわりで支える人のネットワークを簡単に作れるようにすることが必要。介護に詳しくない人でも「ノー」と言えるように、というより介護に詳しくない人がいなくなるように、介護についての知識や情報を広めるしくみを作ることが必要。これは、僕も含めて、幸運にも今はまだ介護される側にいない人々の仕事だろう。
というわけで、重いテーマなのに不謹慎な言い方だけど、予想以上に「面白かった」。上の不満をわりびいて、評価は四つ星。