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紙の本
ほのかにさすひかり
2001/09/14 06:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:歳三 - この投稿者のレビュー一覧を見る
活字を追いながらにして、別の世界へ没入することがある。藤沢さんの小説を読んでいるときに、何度か経験したことだ。風景が浮かび、街並みが顕れ、人物がすぐそこにいる。まさに、筆の妙であろう。
歴史、時代作家は数多いが、藤沢さんほど、小説絵巻の真っ直中に読者を引きづりこむひとは少ない。鮮明に浮かびあがる藤沢ワールドのカラーは、あえて云えば、モノトーンに近い。光のあたらない闇の部分をあぶり出す。
主人公たちは、決して成功者ではない。英雄でもない。なのに、藤沢さんの心が、彼等の存在に光を与える。女性を描いてもそうだ。はかなさの中に、艶を与えられた女達は、さりげない仕草の描写に、匂いさえ漂わせる。
短編にも長編にも、それぞれ、藤沢作品の魅力が充満し、どれを手にとっても、独特の余韻が残る。それは、何だろう? と、考えたとき、闇の中にあっても、その先に、ほのかなひかりを用意することを忘れない、藤沢さんの優しさなのだと気づくのである。
藤沢さんの作品群が詰まったこの全集を、ぜひ、多くの皆様に手にとっていただきたい。自信をもって、お勧めします。