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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.7
- 出版社: 法政大学出版局
- サイズ:20cm/445,45p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-588-67202-9
- 国内送料無料
紙の本
キッチン レストランの文化誌
著者 ゲイリー・アラン・ファイン (著),藤沢 美枝子 (訳),小池 久恵 (訳),谷林 真理子 (訳)
レストランの厨房をフィールドに「客×コック×経営者のドラマ」を社会学的・民族誌学的に分析し、グルメブームの舞台裏に迫る。コックを調査対象に、交渉によってもたらされる組織内...
キッチン レストランの文化誌
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商品説明
レストランの厨房をフィールドに「客×コック×経営者のドラマ」を社会学的・民族誌学的に分析し、グルメブームの舞台裏に迫る。コックを調査対象に、交渉によってもたらされる組織内部の秩序を研究。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ゲイリー・アラン・ファイン
- 略歴
- 〈ファイン〉1950年アメリカ生まれ。ハーヴァード大学で社会心理学の博士号を取得。現在、シカゴのノースウェスタン大学教授。著書に「うわさの心理学」ほか。
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紙の本
レストランのキッチンを覗いた社会学。そこにはどんな人間関係や組織編成がなされているのか。
2000/08/28 12:15
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投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
レストランに入る。席について注文をする。運ばれてきた料理を食べる。代金を払ってレストランを出る——。お客としての私たちがすることはこれぐらいである。時にレストランのシェフや給仕係と料理についての話をしたりすることもあるが、キッチンの中がどのような環境にあって、いかなる指揮系統で動いているのかといった話をすることはほとんどない。だから私たちお客には、コックの悩みや下働きの苦労は一切わからない。
レストランのキッチンの中と外とでは、まったく異質の人間関係が築かれているのだろうか。異なるレストランのキッチン間には、そうした人間関係に関して共通性はあるのだろうか。著者のゲイリー・アラン・ファイン氏は、レストランのキッチンという小さな空間に限定してこれらの問題に取り組むために調査を行った。
調査対象となった米国ミネソタ州のレストランは次の4つだ。「ラ・ポム・ド・テール」、「スタンズ」、「アウルズ・ネスト」、「ブレイクモア・ホテル」のレストランである。前者2店は現在も営業中であるが、後者2店は閉店している。著者は各レストランのキッチンに入り込んで1ヶ月間観察し、コック全員に30回の聞き取り調査を行った。もちろん、この4つのレストランはすべて仮名である。
1人に数時間もかけて聞き取り調査しただけあって、各レストランのキッチン内部の様子が事細かにわかる。特に料理にまつわることは、目を疑うほどだ。床に落としてしまったものを皿に盛りつけし直すのは当たり前。おしっこにウインナーを漬けてオムレツの中味に使われたこともある。食べ残しのパンも再利用されるし、飲み残しのワインは調合されて別のワインボトルに入れられ、別の日に新品としてお客にサーヴィスされる。
キッチンという空間から浮上してきた人間関係は、食べ物を取り扱っているという特殊な状況におかれているものの、コックや下働き相互の「いたずら」を通じて共同意識が芽生えたり、上下関係があったり、「ネットワーク」があったり、それを維持するための暗黙のルールがあったりする。そのようなキッチンの中の共同意識は、レストランの経営者やお客への敵対心や卑下に転化することもある。キッチンの中のコックは、キッチンの外のお客が自分の苦労などまったく理解していないと打ちひしがれることが多いからだ。
つまりキッチンの中で見られる人間関係や組織の在り方は、一般社会のそれらとほとんど変わりがないことがわかる。日常当たり前のように行われているお客には知られたくない事件も(!!)、キッチン内部の人間関係の潤滑油になっているのだ。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2000.08.28)