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商品説明
1992年3月5日、千葉県市川市で起きた殺戮劇。その息を呑む14時間に及んだ惨劇の全貌と、「あの事件はチャラにしてほしい」と淡々と呟く犯人の破滅への軌跡、暴力と憎悪、底知れぬ「心の闇」に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
祝 康成
- 略歴
- 〈祝康成〉1960年鹿児島県生まれ。週刊誌記者を経て、フリーに。事件ノンフィクションを中心に活躍。
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紙の本
暴力の魔界へ迷い込んだ少年の罪と罰
2000/10/26 23:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山下淳 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これはホラー映画ではない。1992年、3月6日の雨の金曜日、市川のマンションで間違いなく実際に起きた惨劇なのである。殺戮は82歳の祖母から始まり、帰宅して来た母親と父親を次々に殺し、最後に泣きじゃくる4歳の女児を一突きして終わった。
ただ一人助かったのは、繰り返し強姦された15歳の少女だけだった。ただ獣欲の満足のために生かされたと言うべきなのだろう。鬼畜とも呼ぶべき犯人は19歳の少年だった。動機は金目当てというが、果たしてそれだけでこれだけの残虐な殺人を犯す必要が何処にあるのだろうか。
無抵抗の弱者を虫けらのように殺し、犯す……何処か戦争中に起きた虐殺と似てはいないか。何千年の人類の歴史の中で決して消えることはない人間の奥に潜む悪魔的部分。
著者は犯人の心に宿る暗黒の闇に迫ろうとする。少年の19年の軌跡を辿る取材は広範囲かつ詳細であり、複雑な家庭環境の中で屈折した幼なき心が、成長とともに凶暴な心に変貌していく経緯が克明に語られる。更に著者は拘置所での面接と手紙のやりとりを重ね犯人と対峙していく。
著者はあとがきの中で、取材時の苦衷を次のように書いている。『襲い来る現実の重さに慄然とし、唇をかんだ。犠牲者の苦痛と恐怖に思いを馳せ、空を仰いだ。(中略)「一体、おまえは何を知りたいのだ」声なき声が、頭蓋の中で木霊し、脳髄を締め付ける』。果たしてこの男の深層部に何処まで迫ることが出来るのだろうか。
暴力の魔界へ迷い込んだ少年は既に27歳になった。一、二審で死刑の判決を受け、いま最高裁の最後の審判を待っている。
(山下淳/フリーライター)