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商品説明
【野間文芸賞(第53回)】被爆した長崎高女の同級生が、戦後50余年、原爆の後遺症での発病で面会謝絶になる。私は、かつて彼女と約束した三十三ヶ所の礼所巡りを一人で廻る。他に「トリニティからトリニティへ」を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
長い時間をかけた人間の経験 | 5-126 | |
---|---|---|
トリニティからトリニティへ | 127-179 |
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紙の本
本当の八月九日の姿がここにある
2001/04/12 13:09
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nory - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカが最初に原子爆弾の実験を行ったのは、トリニティという場所である。著者は被爆者としての出発点であるその場所に行こうと決心する。人生の円環に組み込むことで、八月九日からの縁を終わらせるために。
終着の地で著者は、一番初めの犠牲者である物言わぬ大地に共振して、八月九日に一滴も流せなかった涙を流す。
この本では、統計上の数字では済まされない個々の人生が差し迫ってくる。夢半ばに死んでいった女学生たち、被爆後からだを売りながら生きてきた女、命ある限り被爆の実相を訴える覚悟を持つ老医師。肉体的にも精神的にも破壊された傷の深さは計り知れず、どうしてこんな運命に出会わなければならなかったのか、考えても考えても答えが出ることはない。
最後の被爆者がこの世を去ったとき、あの日は歴史になってしまうのだろうか。長崎、広島という街だけに、年老いていく被爆者の小さな肩だけに、この絶望的に深い業を背負わせていいのだろうか。核の本当の姿を訴えていくということは、この国の人間全員が抱えている世界的に重要な役割であるというのに。
この本はぜひ多くの人に読んでもらいたいと思う。八月九日以降生きてきた(あるいは死んだ)人たちの姿が、冷徹なまでのまなざしで淡々と綴られている。