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商品説明
「からだ」「こころ」といった弁別以前の身体そのものには、どのように近づくことができるのか。非西洋の諸地域に残る「身体そのもの」と関わる伝統の糸を、東アジアの宗教や儀礼、身体技法等に焦点をあてながらたぐりよせる。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
憑依について | 立川武蔵 著 | 8-17 |
---|---|---|
遊体論 | 古東哲明 著 | 18-54 |
房中と内丹 | 石田秀実 著 | 56-85 |
著者紹介
石田 秀実
- 略歴
- 〈石田秀実〉1950年千葉県生まれ。東北大学大学院博士課程修了。国際日本文化センター客員教授等を経て、現在、九州国際大学教授。著書に「死のレッスン」ほか。
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紙の本
「身体そのもの」へ肉薄する学際的研究のプロローグ
2000/11/19 01:18
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩本道人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
気功、仙道、密教から整体術まで、現在身体論関係の本は花盛りである。裏をかえせば、それほど私たちの身体は管理されているということか。本論文集は、東アジアにおける行法に関する、学際的な論文集である。
参加している執筆者は、哲学、宗教学、中国思想、民俗学の錚々たる専門家たちであり、テーマはチベット密教、中国の錬丹術、太極拳、韓国の仙道、日本の巫女、アジアの民間祭祀に及んでいる。技法の理論については、太極拳の体系化における朱子学などの影響を論じた三浦國雄、錬丹術の周天法における心腎交合に男女間の性的ダイナミズムの影響を見る石田秀実などの論文が収録されている。韓国の「国仙道」を論じた野崎充彦の論文は、檀君神話の受容、超能力の実践など、現代仙道の実態を紹介していて興味深い。
こうした実証的な研究の一方で、自らの病いの経験を手がかりにチベット僧の憑依経験を理解しようとした立川武蔵の憑依論、チベット密教の複雑な観想法について実践経験を交えつつ解説を試みた正木晃の論文、エレウシスの密儀を存在への驚きという観点から今現在の人間の問題として解釈しようとした古東哲明らの主体的な問いかけも印象的だ。
しかし考えてみれば、一見秘教的なこれらの技法も、畢竟、当たり前の生理作用を利用しているに過ぎない。その当たり前と思いこんでいる身体作用を意識的に操作するところに、管理された身体を越える可能性、弁別以前の「身体そのもの」と出会う可能性が潜んでいると編者は言う。しかし性的技法に見られるように、それは突き詰めていけば両刃の剣でもある。正木晃の仮説では、チベット密教の修行は人為的な精神の分裂状態を引き起こす方法だという。では伝統社会はそこにどのような安全弁を施していたか。怪しげな修行法が横行する今、必要とされているのは、むしろそうした智慧かもしれない。
惜しむらくは、本論文集にはそうした東アジアの伝統的身体論全体を見通すような議論が欠けている。とはいえ編者も指摘しているように、こうした身体論の歴史は、今までの概念偏重の宗教史からは抜け落ちやすかった部分であり、本格的な研究は端緒についたばかりなのだろう。インド生理学の中国への影響関係の検証、東洋と西洋の身体技法の比較論など、さらなる研究の進展に期待したい。(岩本道人/オカルト史研究家)