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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.11
- 出版社: ワイズ出版
- サイズ:27cm/131p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-89830-046-4
- 国内送料無料
紙の本
日本映画ポスター集 大映映画篇2 昭和30年代
勝新太郎、若尾文子、長谷川一夫、市川雷蔵など、日本映画全盛期の昭和30年代のスクリーンを飾ったスターたちが勢揃い! 懐かしい顔がいっぱいの大映映画のポスター集。オールカラ...
日本映画ポスター集 大映映画篇2 昭和30年代
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商品説明
勝新太郎、若尾文子、長谷川一夫、市川雷蔵など、日本映画全盛期の昭和30年代のスクリーンを飾ったスターたちが勢揃い! 懐かしい顔がいっぱいの大映映画のポスター集。オールカラーで収録。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
観客人口が11億人もいた映画黄金期の映画の匂いが漂ってくる。
2000/12/13 18:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:上野昂志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
このところ、連日のように、大映マークの映画を見ている。
といっても、むろん、いまの作品ではなく、増村保造監督の作品だが、その回顧上映が行われている渋谷の映画館は、土日ともなると、立ち見が出るほどの盛況ぶりだ。まあ、増村といえば、いわゆる巨匠ではないものの、作家性が強い監督として昔からファンが多かったし、それが同時代に彼の作品を見ていない若い映画ファンの間にも、情報として浸透したためであろう。
だが、こんなふうに回顧上映が行われる作家というのは、決して多くない。ほとんどは、公開されたときに見られるだけで、見た人たちの記憶が失われれば、そのまま闇へと消えていく。映画史も、ほかの歴史と同様、大文字で書かれた作家なり事件なりを中心に書かれるしかないからだ。しかし、ある時ある場で、映画を支え盛り立ててきたのは、決して一部の巨匠や優れた作家たちだけではない。いまでは名も忘れられた多くの監督たちが、会社の企画のもとにおびただしい映画を作り、多くの観客を引き寄せていたのである。とりわけ映画産業が最盛期を誇っていた1950年代後半は、そうである。大映のポスターを集めた本書のページを繰っていたら、そんな時代の空気がまざまざと蘇ってきた。
ところが、驚いたことに、そのポスターに書かれた監督名を見ても、憶えていない人たちがかなりいるのだ。たとえば、最初のページを飾っている『母笛子笛』。三益愛子主演の「母もの」映画だが、監督の斎村和彦という名に覚えがない。そこでキネマ旬報社から出ている『日本映画監督全集』に当たってみるが、よほど資料がなかったためか、記述は、作品歴を含めてもわずか8行。が、ともかく、それによると、1955(昭和30)年のこの作品がデビュー作だったようだ。大映は、1948年ぐらいから「母もの」映画で売っていて、10年間で32本の「母もの」を作ったというから、これもそのなかの1本だろうが、それ以上のことはわからない。ただ、ポスターに書かれた「泣いた涙にまた涙! 二つの笛にお互いの運命を託した流離の母子!」などという惹句を見て、カラーで印刷された三益愛子の写真などを見ていると、なんとなく雰囲気は伝わってくる。
それにしても、このポスター集に収められていて、名前を覚えていない監督で、1年で3、4本も作っている人がいるのも、やはり映画産業の最盛期だからだろう。たとえば、枝川弘監督は、『誓いてし』と『哀愁列車』と『駐在所日記』に、ポスターにはない『朝の口笛』の4本を、57年に作っている。また、この年に監督デビューした原田治夫は、『ふるさとの灯台』に『花嫁立候補』に『十七歳の断崖』の三本がここに収められているが、それ以外に二本作っている。つまりデビューしたてで、立て続けに五本も撮っているのだ。観客人口が最大になるのは翌年だが、この頃から60年ぐらいまでは製作本数が増え続けていくから、新人監督でも休む暇なく映画を撮り続けていたということだろう。
本書は、そんな時代の空気を思い出させてくれるという点では貴重だが、巻末に封切りの年月日があるだけではいささか物足りない。作品や監督についての資料的な記述がもう少しあったほうが、一般読者には親切だったのではないか。 (bk1ブックナビゲーター:上野昂志/評論家 2000.12.14)