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紙の本
フツーにちゃんと「人生の役に立つ」本
2001/02/28 15:36
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投稿者:宮島理 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和天皇は明治41年に学習院初等科に入学、大正3年に卒業した。同年、高輪にあった東宮御学問所(東宮御所の一角)に入り当時の中高一貫教育に相当する教育を受けた。そこで行われた御進講(講義)のひとつが杉浦重剛による「倫理」である。その御進講草案がこの度『昭和天皇の教科書 教育勅語』として復刻された。「朕惟フニ、我ガ皇祖皇宗……」で始まり「……咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ」で終わる教育勅語は今ではすっかり「古典」だが当時の小学生はこれを丸暗記させられた。しかし、意味までわかっていたわけではない。昭和天皇ですら学習院初等科時代には「朕」を「始め」、「冀う(庶幾フ)」を「おしまい」の意味に取っていたらしい。そこで教育勅語の意味をしっかり解説したのが「倫理」の御進講というわけ。で、本書を読んでみると、なるほど、こいつは日本版『自助論』(中村正直訳の『西国立志編』として有名)だ。教育勅語の神髄を明らかにするために、日本、中国、ペルシャなどの「偉人」によるエピソードが山ほど盛り込まれている。さらに「業ヲ習ヒ」の解説でスピノザとドルトンが登場してるあたりなんてまさに『自助論』を読んでいるのではないかと錯覚しそうになる。教育勅語という看板に騙されてはいけない。全体を通してきわめてまっとう、フツーにちゃんと「人生の役に立つ」本である。同時復刻された白鳥庫吉の『日本歴史』も東宮御学問所におけるこれまたまっとうな国史教科書。庶民向けには不必要な記述も多いが天皇家の教科書としてはいたって公平な歴史の本であることに驚く。
(宮島理/フリーライター・bk1「ノンフィクションの杜」担当エディター/2001.02.27.)