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商品説明
いろんな会話が渦巻いている。じいちゃんがいる。あんちゃんがいる。街の止まり木、それが下町酒場。下町を愛する呑んべえ3人が人と街の織りなす光景を切り取る。消えゆく本物の酒場たちに捧げるオマージュ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
大川 渉
- 略歴
- 〈大川〉1959年生まれ。主宰するサイト「散人雑報」で酒や本に関するコラムを発信中。
〈平岡〉1961年生まれ。香川県出身。報道機関に勤務。
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紙の本
その土地に根ざし、憩いの場となっている東京・下町の大衆酒場を探し、歩き回ったルポルタージュ。
2000/12/27 21:15
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投稿者:高橋洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
東京・下町にひっそりと赤いちょうちんを灯らせる大衆酒場が今、消えようとしている。バブルの荒波はどうにか乗り切ったものの、世代交代という壁は大きく、厚い。70歳を過ぎた親父さんが切り盛りしている店も多く、閉店の危機は目の前に迫っている。30年、40年と月日を重ね、見かけは、看板が剥(はく)落し、寂れた様子だが、店の中は長い年月を掛けて築き上げた付き独特の雰囲気を醸し出している。その土地に根ざし、その土地の人々にとって憩いの場となっているそんな店を記録しようと、探し、歩き回ったルポルタージュだ。写真とともにその場を文章でも切り取り、四国巡礼になぞり、前編の大川渉・平岡海人・宮前栄著『下町酒場巡礼』と、このほど出版した続編で、合わせて88ヵ所集めた。
筆者らは「下町の酒場は地域のコミュニケーションでは大切な場所だ。その地域の人たちの『街の止まり木』ともいえる」と主張する。文中、人のよい親父さんが登場する。べらんめえ調の客もいる。入れ歯を忘れたおじいちゃんの話、アサリのかき揚げで死んだ女房を懐かしむシーンもある。グルメ本やユニークな店の紹介本とは全く違い、東京・下町の酒場の姿が凝縮して描かれている。
「コ」の字のカウンターだけの店もある。古びた市場の片隅にある立ち飲み屋で、つまみはもつだけという店もある。中には、店に入った途端に、労務者たちがつくり出す、もあっとした空気に「アジアを感じさせるような」店もある。天井に親父さんの巨大な写真を張った店なんかも登場する。東京下町の隠れた名店の集大成だ。
どの店も目立った宣伝をすることもなく、どこからともなく客が集まり、店はひたすら来た客にサービスをする。これらの店には一品200円のつまみがある。チューハイは1杯300円ぐらい。2000円で楽しめる店ばかり。なかには80円なんていうつまみを出す店もある。気取った素振りや、とげとげしい空気はここにはないようだ。客は店を、店の親父さんを大切にしている。そんな姿が『下町酒場巡礼』2冊の本の中に十分に込められている。
その店を守ってきた親父さんは高齢だ。それだけに、ここに来て相次いで店を閉じている。東京都内にあまたある居酒屋、酒場のなかで、この本が紹介する店は「天然記念物、ヤンバルクイナのような存在」かもしれない。
この本では、なんとか残したい、という熱意がそこかしこに感じられる。この下町酒場シリーズ2巻を読めば、下町の良さを十分感じることのできるに違いない。そして読み終えれば、登場する店ののれんを割って、ほのぼのした下町酒場の一員に加わりたくなるだろう。 (bk1ブックナビゲーター:高橋洋一/評論家 2000.12.28)