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商品説明
いかなる種族の特徴も持たない孤独な少女ベル。師シアンのもとを離れ、ただ1つ「唸る剣」だけを手に、今、旅人となるための試練を受ける−。勇気、冒険、幻想の世界。自らのルーツを求める少女の長編ファンタジー小説。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
冲方 丁
- 略歴
- 〈冲方丁〉1977年岐阜県生まれ。早稲田大学中退。1996年第1回スニーカー大賞金賞を「黒い季節」で受賞。その後、執筆活動、ゲーム製作に携わる。本作は執筆に丸2年を要した受賞第1作。
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紙の本
日本のファンタジーで、読むのにここまで頭を使ったものはありませんでした。でも、見返りはとても大きなもの。そんな本の文庫化を待っていましたが、一向に気配がありません。もう待ちきれない、書いちゃいます
2006/10/05 21:21
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《石の卵から生まれた少女剣士ラベラック=ベル。旅の者〈ノマド〉になろうとする彼女を待ち受ける試練とは》ファンタジー。
今に至るもこのての乱舞する色彩が、華麗さとなって結実したカバーの本は出ていないのではないでしょうか。それほどにユニークです。ただし、タイトルは、いかにもSFらしい雰囲気ですが、ちょっと安直。誰だって笠井潔の『バイバイ・エンジェル』を連想するでしょう、いやいや、笠井で矢吹シリーズを思い出せる人も、退職する時代か・・・。
それにしても著者名の「冲方丁」、いったいどこで切るんだ?とは、まだ私が彼の名前を知らなかった出版当時のこと。そのころ、私は手っきり冲 方丁だと思ってしまったぞ。中国人留学生が書いたのか、とも思ったりして。しかし、その内容ときたら、その姿同様、重厚長大、頭の限りを使って読まなければならない、トールキンの『指輪物語』に輪をかけたような話。
石の卵から生まれた少女剣士ラベラック=ベル。教示者シアンに導かれたベルは真の自分を求め、旅の者〈ノマド〉になろうと、双面のローハイド王のもとへ出向きます。王は神の樹と合体し己の姿を刻々と変える、憤怒と優しさの二つで一つの存在でした。ここらへんは、いかにもSFXに慣れた世代のものでしょう。
ベルは、剣を育てることの出来ない剣士アドニスの存在を通じて、女としての哀しみを知っていきます。絶対の存在であるかと思えたアドニスとの関係の意外な展開もですが、性を変えることで成長するベネデクティン、愚者で賢者でもある不思議なキティ、王の娘で歌姫であるシェリーといった脇役が実に面白い。そして繰り広げられるのが、音楽を武器にしたとしか思えない不思議な戦闘というのだから、想像力の限りを尽くさなければならないというのもご理解いただけるのでは。
最近では、500頁の上下本というのは珍しくありませんが、描かれる世界を構築するのに私がこれほど苦労する作品というのは、正直シモンズ『ハイペリオン』4部作以来。月瞳族、弓瞳族、水角族、蛍族、月歯族などと言った耳慣れない生き物について、姿形の詳細な描写は殆どありません。それは椎名誠の不思議世界を大きく越えます。だから思いも寄らぬルビを頼りに、読者は想像力を揮い、その世界を構築しなければならないのです。
それは何も生き物についてだけではありません。英語をアナグラムで変換するのは当たり前。旅の者は〈ノマド〉と呼ばれ、ベルの振るう巨大な唸る剣〈ルンディング〉に刻まれた文字は〈EREHWON〉、これはNOWHEREを逆に並べたもの。ベルの永遠の恋人になるアドニスや、剣の国の筆頭剣士シャンディ=ガフがふるう不可思議な剣にも同じような文字が刻印されているのです。
言語の持つ多義性で、読者に百人百様の世界を構築することを強いる絶句もののファンタジーといえるでしょう。正直、私自身理解できていない部分も多いのですが、感じるのは稀有の傑作に出会ったという心から叫びたくなるような喜びです。ただしS・キングの小説を読む時以上の努力だけは覚悟しなければいけません。
文章は、意外や簡潔です。決して衒学趣味に陥ることはありません。むしろ言葉自体が独立しているとでも言えばいいのでしょう。試されるのは読者一人一人の言語感覚です。決して終わることの無い永遠の流れ、反復されながら留まることのない時間。これは漢字の本質を利用した、日本人にしか味わえないワールドクラスの傑作でしょう。
蛇足ですが、この本には作者の紹介がありません。年齢も、経歴も読者は知ることが出来ず、その創作の秘密も窺うことはできないのです。無論、今では沖方が監修している『シュヴァリエ』というアニメも放送されているほどですが、この本で初めて彼の世界に触れる人もいるはず。やはり著者紹介くらいはすべきではないでしょうか。
紙の本
面白かった〜♪
2001/06/13 11:14
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あとりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに一息に読めた作品です。とにかく面白い。
何よりも驚かされたのは、その世界設定の緻密さと、色の鮮やかさ。私は個人的に色彩の豊かな文章が好きなのですが、この作品はもろに好みでした。私たちの基準では相反するようなものを組み合わせ、世界を構築する様々なものを表現している事も新鮮で美しかったです。少し、宮沢賢治の世界を連想させられました。
登場人物も個性的で魅力的でした(どんな風に個性的、魅力的なのかは、ネタバレになりますので伏せておきます(笑))。
上下巻2冊の厚さを見て、一瞬躊躇しましたが、読み始めるとほとんど長さを感じませんでした。異世界ファンタジーがお好きな方にはオススメの作品です。