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商品説明
人はなぜ生きるのか? なぜ生命は大事なのか? 「人間の大地」から20年、女子大の教壇で人間の生きる意味を学生たちに真摯に問い、心をひらいて共に語りあった著者の講義を一冊にまとめる。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
ヒントはここにあります
2001/11/04 12:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る
生き方を模索する世代に向けて語られた本書は、犬養さんの他の著書よりも遙かに伝えようとする力の強い作品です。
講義録という性質上、押しつけがましく感じる方が出る可能性がある一方で、私にとっては、犬養さんの思想を理解する上で、大きな足がかりとなる一冊でした。本書の元になった講義を受けることができた幸福な人々を羨ましく感じつつ、この作品を手にすることができた小さな幸せに満足してもいます。
理想を抱いて始めた何かが、困難な壁にぶつかって苦しんでいる人には、ヒント集になるかもしれません。そっとお薦めします。
紙の本
福祉、奉仕、介護。なぜ人に仕える仕事を選ぶのか。そもそも人に仕えるということは何か。
2001/02/05 18:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カネ、モノの力だけで人間が突き動かされるバブルな時代はとっくに終わったけれど、人間はいまそれに変わって何を求めているのだろうか。「癒し」だろうか。「自然」だろうか。それとも「人間」だろうか。いずれもバブルの時代には見向きもされなかったものばかりだが、犬養道子氏はいまこそ人間が「人間」を求めていると強く訴えている。ただしどんな人間でもいいわけではない。彼女が必要とされると切実に訴えているのは、人間そのもの本質をきっちりと見極めることができる「人間」だ。
本書は四国にある聖カタリナ女子大学と神戸女学院大学での講義を収録したものである。特に興味深いのは、紙幅が割かれている前者の大学での講義だ。この聖カタリナ女子大学は時代に先駆けて、福祉・介護に関する学部を開設していた。ご存じの通り、最近福祉と名の付く学部を新設する大学が急増している。それは介護保険が開始され、ソーシャルワーカーのように資格を必要とする仕事の需要も社会で高まっているからだ。もちろん、こうした社会の風潮を反映して「将来、福祉の仕事に携わりたい」と志望する学生の数自体も増えているのだろう。
しかし犬養氏が最も懸念しているのは、「福祉とは何か」「人に仕えるとは何か」という問題を深く突き詰めることなしに、ただ何となく大学に入学してきて、漠然と日常を暮らしている学生が多いのではないか、ということだ。そこで犬養氏は講義中に、学生たちに対して「なぜ?」を徹底して繰り返す。「なぜあなたは人を介護する仕事に就きたいのか」。介護されてもロクに感謝もしないで嫌みばかりを言う老人たちもいる。きれい事だけでは済まされない仕事も多い。でもあなたは福祉の仕事に就くという。「なぜ?」。
これらの「なぜ?」に十分に答えるためには、「人間」について深く知らなければならない。そのためには、宗教、人権、戦争、自由、福祉の成り立ち…といった日頃深く考えることが少ないことを考えてみることが必要になる。一見取っつきにくい問題だが、犬養氏は学生たちと一緒に考えていくスタンスをとりつつ、これらを平易に説明している。
犬養氏が学生に贈った、福祉や教育に携わりたい「人間」に忘れてはならない言葉は、実は私たち全員に必要なものでもある。ひとつは「ヒューモア」。自分自身を一度突き放してから、まな板の上にのせて笑うことができる人間こそが「ヒューマン」になれる。2つめは「がんばらない」。かたくなに張りつめた人間が外国にボランティアに言っても長続きしない。リラックスすることが大事である。3つめは「イマジネーション」。自己中心的な世界観だけではなく、他人のおかれた立場を理解することが重要である。4つめは「イニシアチブ」。自分の責任でいますべきと判断したことを果たすことが、いまの日本人には最も欠けている。最後は「スマイル」。美しいものに感動する心をもっている人間こそが、心の底から笑顔を作ることができ、他人をリラックスさせることができる。
コソボやアルバニアといった世界の難民キャンプを支援し続けている犬養氏の現場での体験談を聞いて、「人間」について深く考える機会をもつことができた学生たちは本当に幸せだと思う。私たちもこの学生たちの追体験を本書でしてみたい。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2001.02.06)