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紙の本
「在日」のはざまで (平凡社ライブラリー)
著者 金 時鐘 (著)
【毎日出版文化賞(第40回)】20世紀が戦争と革命の世紀であったとするならば、金時鐘はまさに「20世紀の詩人」であった−。強いられた日本語で文学を創造した「在日」を代表す...
「在日」のはざまで (平凡社ライブラリー)
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商品説明
【毎日出版文化賞(第40回)】20世紀が戦争と革命の世紀であったとするならば、金時鐘はまさに「20世紀の詩人」であった−。強いられた日本語で文学を創造した「在日」を代表する詩人の名随筆集。1986年立風書房刊の再刊。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
金 時鐘
- 略歴
- 〈金時鐘〉1929年朝鮮生まれ。73年から日本の公立高校教員となり、詩作を中心にエッセイ・批評執筆と講演活動を行う。92年すべての教職を辞す。本書で毎日出版文化賞を受賞。
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紙の本
言葉の重さに打ちのめされた
2003/12/12 03:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
金時鐘(キム・シジョン)さんは1929年に朝鮮・元山市に生まれ、済州島で育ち、戦後日本に渡った「在日」詩人である。その彼が書いたエッセイ(という言葉は何だか軽すぎる感じだが)を集めたのがこの本で、僕は、そこに書かれてある言葉のとてつもない重さに打ちのめされてしまった。
とにかく重いのだ。そして、鋼鉄のように硬い。20ページとか30ページとか読んで、「ふーっ」と息を吐くと、どっと疲れている。言葉にちょっと尋常ではない力がある。だから、ぐっと引き込まれる。でも、読み続けることができないのだ。
戦時中に朝鮮の地で日本語教育(皇国教育)を受け、日本の敗戦に「一週間余りもほとんどご飯が喉を通らなかったくらい、打ちしおれて」いたという彼の言葉。
<つきあげる感情が言葉になるには、言葉はいつも一つの「物」の提示としてしか現われないものである。>
そして彼は高史明(コ・サミョン)さんの言葉を引用しながら、語る。
<「自分をまず殺さなければ、自分の本当のことが一言も言えない在日朝鮮人」の存在性に、私の言語はどれほどの命がけの言葉を持ちよれるであろうか。>
金嬉老(キンキロウ)事件について語る彼(ら)の文章には、母国語を失い、日本語という他の国の言葉を母国語のように思って生きざるを得なかった人間存在の重い叫びがこだましている。
もうひとつ、高さんの言葉。
「朝鮮人として生きていくうえでの障害というのはさまざまにある。その中での最大の障害は、朝鮮人が朝鮮語を知らないときが最大の障害ではないか。なぜかというと、彼はもしも朝鮮人として侮辱されたときに、その侮辱をはね返そうと思う。思う言葉は日本語であり、したがって彼を抑圧している最大の根源は自分自身の中にあるという構造を、在日朝鮮人は、日本語しか知らない在日朝鮮人はもっている」
*金嬉老事件……金嬉老という男が、静岡県清水市で日本人ヤクザ2人をライフル銃で殺し、同県内寸又峡(すまたきょう)温泉の「ふじみや旅館」に爆薬を持って立てこもった事件(1968年)。
*ちなみに、高史明さんは、ちくま文庫の「ぼくは12歳」(12歳で投身自殺をした岡真史くんという男の子が残した詩を集めたロングセラー)の著者・岡真史くんの父親である。彼は在日二世であることを苦にして自殺したわけではないだろうけれど、「自分」という題のこんな詩を残している。
たくさん人がいると
自分がきちがいになる
そして人は
自分だけがきちがいだと
思っている
つまり
みんなが自分のことを
きちがいと
思っているのだ
「在日」の問題を考えるときに避けては通れない本、そして日本人として生きるうえで避けて通ってはいけない本、それがこの<「在日」のはざまで>という本であると思う。