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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2001.4
  • 出版社: 講談社
  • サイズ:20cm/454p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-06-209796-6

紙の本

邪魔

著者 奥田 英朗 (著)

【大薮春彦賞(第4回)】始まりは、小さな放火事件に過ぎなかった。似たような人々が肩を寄せ合って暮らす都下の町。手に入れたささやかな幸福を守るためなら、どんなことだってやる...

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邪魔

税込 2,090 19pt

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商品説明

【大薮春彦賞(第4回)】始まりは、小さな放火事件に過ぎなかった。似たような人々が肩を寄せ合って暮らす都下の町。手に入れたささやかな幸福を守るためなら、どんなことだってやる−。現実逃避の執念が暴走するクライムノベル。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

奥田 英朗

略歴
〈奥田英朗〉昭和34年岐阜県生まれ。平成9年「ウランバーナの森」で小説デビュー。他の著書に「最悪」がある。

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みんなのレビュー108件

みんなの評価3.8

評価内訳

紙の本

だらしない亭主のカミさんはこわいですぞ

2002/09/10 10:24

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

 奥田英朗の『最悪』、零細な町工場のオーナー、銀行勤めのOL、その日暮らしのチンピラ青年の三者が様々なトラブルに見舞われたあげく、最悪の結果に向かって暴走するクライムノベルだった。それぞれのキャラクターが身近に存在しそうな人物で日常生活もリアルに書けていた。かなり高い評価を集めた作品であったが、それぞれの人物の環境変化への対応の甘さ、なるようにしかならないとの諦観で貫かれているため、悪い方向へ踏みださざるを得ないステップごとに本来あるべき判断の緊張感が感じられませんでした。
今回の『邪魔』は前回の構成と同じく17歳のチンピラ高校生と、34歳の主婦、そして36歳の刑事、この3人の人生の歯車が少しずつズレていく過程を緊密に描き、しかもそのプロセスには、やむにやまれぬ状況での判断の緊張感がみなぎっているところで「最悪」をはるかに上回るできばえである。 特にこの主婦の変貌は際立って印象的であった。パートのスーパーで労働環境改善の運動に巻き込まれ、活動家になったり、夫の勤務先事務所の放火疑惑から生まれる周囲の冷淡といじめに家庭を防衛すべく敢然と立ち上がったり、情けない夫に愛想を尽かしながら女性としての自我を確立していくところが小気味よくテンポ快調である。
ところが結末が最悪ですね。もう少しこの主婦の行く末に展望を与えられなかったものかと、後味の悪い終わり方が残念です。
日本はまだまだ男社会なんだな。彼女の場合も所詮男の描く女性でしかないんですね。
それにしても女の自立を描くのに犯罪と直結させる物語が多いような気がするが、あるいは不倫の実行とか、ミステリーを読むことが多いからそんな気になるですかね。

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紙の本

一瞬の情景をつかみ取る作者の手腕に拍手

2002/09/08 08:41

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:山本 新衛 - この投稿者のレビュー一覧を見る

▼「とにかく動悸だけでも治まってくれればと、(恭子は)左の乳房を力まかせにつかんでいた」(P169)。▼彼女が自分をコントロールできないくらい膝を震わせ、改めて恐怖を味わったのは、二人の刑事を見送ったあと、彼らに供した湯飲みを洗っているときだった。▼普通に生活を送っていた主婦が、初めて刑事の事情聴取を受ける。しかもその内容が、長年連れ添った夫の引き起こした、ケチな犯罪にかかわっていると彼女は予感している。できることならば、子供を中心とする家族の平安は守りたい。どんなに情けない夫であろうと、我が身にまで事が及ぶようなら、隠せるものなら隠したい。それが一般的な主婦の願望だ。とりあえず、落ち着いてそれなりの供述はできたように思う。しかし、そんな表面的な平静とは裏腹に、急激に恐怖が彼女を襲う。それが冒頭の引用である。▼作品を読む楽しみは、上手く作られたプロットに酔いしれる事もさることながら、一瞬の情景をつかみ取る作者の手腕を見るときといっていい。これは、そんな描写の典型と私は信じている。並々でないこの人の才能を感じる。▼奥田英朗は、これまでわずかな作品しか発表していない。『ウランバーナの森』『最悪』、そして本書の三作である。2001年下期直木賞候補作。▼作品としての完成度は、残念ながら前作に及ばない。ただ、何でもない平凡な主婦が、現在の生活に見切りをつけ、大切な子供や夫を見限る。まさにその瞬間を書いていて、そこに彼の気概を感じた。人はこのようにして、違う人生を“歩むこともできる”。▼ぜひ『最悪』との併読をお薦めする。次作が楽しみな作家の一人である。

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紙の本

気楽な自由に寂しい孤独?寂しい自由に気楽な孤独さ

2004/06/30 16:14

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:luke - この投稿者のレビュー一覧を見る

 久しぶりに読み応えのある本に当たりました。横山秀夫の警察小説を彷彿させるような警察内部の事情なども織り込まれリアルな世界が広がっています。身重の妻を交通事故でなくした刑事は今でも妻の母親、義母の元を訪れてはその身を気遣い墓参りを欠かしません。そんな刑事が同じ署内の刑事の素行調査を命じられ張り込み中にオヤジ狩りをしている不良少年を遭遇します。この変哲もないプロローグですが、ここまでさえリアルな世界に仕立て上げ存在感のある登場人物を作り上げているのです。ですから、読み始めからいつの間にか引き込まれ気が付いた時は手遅れ。こりゃ、すごいぞ。放火事件をメインに幾重にも交差される人間模様は現実感あふれる社会の表も裏も暴き出して、その人生の絡み合う複雑さコントロールの効かなくなった凧のようにひとり行くあてのない大空を舞うだけなのです。
 
さらなるどんでん返しの後に残るのは台風一過の青空でもなければ、暗澹たる終局でもない。そこには、まだまだ終わってないぞ、いや終わらせないぞと闇夜で目を光らせ牙をむいて今にも襲いかかろうとしている現実社会が息を潜めて待ちかまえているのでした。お薦めの一冊だ!

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紙の本

やっぱりね、偉い評論家が褒めすぎちゃうって言うのは、いいことばかりではないんだよね。私が奥田を見直したのは、この一冊から、なんていったら怒られるかな

2003/10/29 21:03

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

かなり評価の高い本だけれど、前作『最悪』にさほど面白味を感じなかったので、読むのが遅れた。『最悪』では、北上次郎はどうして、こんなにもこの作品に肩入れするのだろう?という疑問ばかりが残ってしまった。結局、これがトラウマとなって(用法が違うのはご容赦)、奥田の理解が遅れた。褒めすぎる書評の弊害だろう。ま、私がへそ曲がりという点は認めるけれど。

で、個人的には『東京物語』『イン・ザ・プール』『マドンナ』といった、犯罪がない作品の方が好きだけれど、社会性も含めた奥の深さでは今回の『邪魔』のほうが上かもしれない。『最悪』と二作並べて、そういった感想を抱いた。こう見るとどうも奥田英朗は、巻き込まれ型の人間を書くのが好きなようだ。

刑事の久野は上司の命令で、同じ刑事の花村を監視している。その花村の現在の想い人が久野の昔の愛人。そういった状況に高校生が巻き込まれていく。そして花村の背後には暴力団。警察の実態よりは、暴力団やそれを後ろ盾に大きな顔をしようとする少年たちが良く描かれている。ただし彼らの姿は、ありふれている。これは現実の反映だろう、少しは個性的に生きろ、ガキども!と小声で言いたい。

そして夫の小遣いに不審を抱きながら、ローン返済のためにスーパーのレジのパートをしている及川恭子。彼女にかかってくる、パートに就く際の契約や有給休暇や退職金の規定などを調査する電話。職場でさまざまな勧誘を繰り広げる同僚。恭子の就業に関する疑問に狼狽するスーパー。本城地域に発生する放火事件。暴力団とのつながりを追ううちに見え隠れする一本の糸。推理小説的な部分はここ。

この本の主人公は、私の見るところ及川恭子。パートの労働問題に巻き込まれていくうちに、自分や家庭についての真実を発見し、敢然と立ち上がる姿は、桐野夏生『OUT』の主人公のハードさを彷彿とさせる。ただし、多くの話が絡むために、『OUT』ほどのストレートな印象はない。

どうしても、巻き込まれ型の話は、前作『最悪』もだけれど、主人公が余程理不尽な目に会わない限り、読者の感情移入を妨げる。この作品でも、それは完全には克服されてはいない。でも、感動こそないものの、このラストに安堵しない人はいないだろう。そうか、北上はこういうところを評価していたのか、よかった、よかったである。

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紙の本

極上エンターテイメント!

2002/07/30 15:02

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:marikun - この投稿者のレビュー一覧を見る

奥田作品、初挑戦です。一気読みで楽しめました。
長編3作目とは思えないエンタテイメントですね〜。

それぞれの人生から、ほんの少しずつだけはみ出してしまった3人。
惰性で高校生を続けている裕輔、警視庁から所轄署に移動され不眠
に悩みながら刑事を続ける九野、普通の生活の満足した日々を送る
主婦の恭子。なんとく毎日を過ごしていた3人が、ある放火事件を
きっかけに運命の糸が絡み合い、本当に自分の姿に気付いていく…

一応主人公は主婦の恭子になるのかもしれません。いちばん平凡な
日々を送っていたですが、がらっと違う日常に翻弄されることにな
りますからね。ストーリーにこれ以上踏み込むとネタバレになるの
で詳しく書くことが出来ないのが、もどかしいのですが、日常から
ちょっと踏みだすだけで、人生は大きく変わってしまうことがある
と言う感覚がとてもリアルで身にしみます。主婦が変貌していって
しまうという点では、ちょっと「OUT/桐野夏生」に似ているか
も知れませんね。

最後にそれぞれの道を新しく歩き出す3人。一体どの道が正解なの
でしょうか…。

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紙の本

うまくいかない人間たちの闘い

2002/01/13 23:00

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:格   - この投稿者のレビュー一覧を見る

 主人公は三人か。不良仲間に流される高校生祐輔。サラリーマンの夫と子供二人を持つ三十四歳の主婦恭子。上司の命令で同僚の捜査をする刑事久野。この中で恭子だけはうまく行っていたのだが、夫の会社でおきた放火事件から、この三人が複雑に絡んで来る。さらに,パートをしている会社で条件闘争に巻き込まれはじめ、しだいに恭子の生活もおかしくなってくる。

 東京郊外の日常生活など各種のエピソードは、詳細に描かれ、リアルで面白く、なかなか読ませる。

 しかし、起きる事件はたいしたことがない上に、放火事件の犯人もすぐ分かる。直接の動機は分からなくはないものの、そこまでに至る動機についてはほとんど何も書かれておらず、よく分からない。

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紙の本

普通の人々が持つ危険性

2001/05/23 16:01

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:上六次郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 その時は何でもないと思っていたことが、後から考えると人生の別れ道だったということがある。運命の歯車が変わってしまうのである。そしてそれは概して悪い方に流れていくことが多いのではないだろうか。

 放火事件をきっかけに関係者たちの運命が変わっていく。17歳の高校生、34歳の主婦、そして36歳の刑事のそれぞれの人生が狂っていく。特に主婦の及川恭子の変貌が丁寧に描きこまれている。夫が放火犯に疑われたことをきっかけに、すっかり自分を見失っていく。ベースにあるものは家族を守りたいという思いなのだが、そのための行動は常軌を逸していく。
 
 本書の帯には「クライム・ノベル」と書かれているが、ここに出てくるのは悪党ではない。自分の生き方や愛すべき人を守るために、社会や組織からはみ出してしまった人たちである。「守り」のつもりが、やがて過剰なまでもの「攻め」へと姿勢が変わっていく。追い込まれると何をしでかすかわからない。普通に暮らす人々が暴走していく危険性を見せつけてくれる小説である。

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紙の本

近郊都市における《組織の犯罪》と個人

2001/04/23 17:40

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たけのこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ジョン・レノンが便秘でもがき苦しむ『ウランバーナの森』(集英社文庫)、この町工場社長は「おれのことか」と思った『最悪』(講談社)につづく長編第三弾。今回も登場人物がどんどん追いつめられ、最後の最後にキレてとんでもないことをしでかす。その緊迫感と疾走感のジェットコースター・サスペンスであり、かつまた現代日本の社会システムに迫る批判的社会学でもある。

 舞台は東京郊外のベッドタウン「本城市」。17歳の裕輔ら3人組が“おやじ狩り”を仕掛けた相手は、本城署の刑事・九野だった。九野は7年前に交通事故で妻を亡くして以来の不眠症に悩みながら、上司の命令で、同僚・花村の素行調査を進めていた。花村は暴力団との交際がうわさされるが、上司の裏金作りに批判めいた口をきいた男で、彼の側に理がないわけでもない。板ばさみになった九野は、その鬱憤の腹いせを少年たちに向けて、彼らにケガを負わせてしまう。しかもその現場を花村に見られ、のちのち立場を危うくすることになる弱味を握られる。

 その後、自動車用品メーカー・ハイテックス社の本城支社で放火事件が起きる。捜査に出向いた九野は、第一発見者の経理課長・及川が不正を隠蔽するため火をつけた狂言なのではないかという心証を得る。ところがハイテックス社は企業のイメージダウンを恐れて、社をあげて内部犯行を否定しようとする。そこにからんでくるのが花村とつき合いのあった暴力団・聖和会である。花村と聖和会に脅され、手下に組み入れられた裕輔らは、九野に受けた暴行の被害届を出して、捜査を妨害する。九野は上司に辞表を預ける身となる。また亡き妻の墓参りがてら、義母の家を訪問することで精神の安定を保っていたのが、あることが原因でその支えも失ってしまう。

 一方、及川の妻・恭子は、子供二人を抱えながら近所のスーパーで働いていた。そこへ市民運動家と弁護士の煽動に乗せられ、会社相手の待遇改善闘争の矢面に立たされる。夫が放火犯であるかもしれないという疑惑に目をそむけて運動にのめり込むが、パート仲間から孤立し、手痛い裏切りにも遭う。やがて九野らの捜査の手が伸び、マスコミの取材が押し寄せるなか、夫の口から事件の真相を聞くに及んで逃げ道を封じられた恭子は、子供たちを守るため、ある行動の決意をする。

 この小説、追いかける九野と追われる恭子の双方が、それぞれ組織の論理にはじき出された存在であるところが社会学的な読みどころか。近郊都市における警察と企業と暴力団のもたれ合いの構造。正義をふりかざす市民運動も、組織の維持のためには平気で個人をふみにじる。——奥田英朗という作家、小説誌に断続的に発表している自伝風の連作短編は、地方から出てきた青年が大学の演劇部やら広告代理店といった、いかにも《80年代東京》的な都市文化に接してカルチャーショックを体験する物語になっているのだけど、そこから人生のどの時点でどう屈折して、こんな小説を書くにいたったのだろう。
【たけのこ雑記帖】

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紙の本

追い詰められたとき「邪魔」になる家族

2001/09/21 13:40

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:吉野桃花 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 及川茂則は、会社でちょっとした不正をはたらく。経理をいじって自分の懐に、というあれだ。それを取り繕おうと、狂言の放火事件を起こしてしまう。不正を小手先で何とかしようとする小心者のパターン。自分は第一発見者で、火を消そうとして火傷までした、と言い張って事無きを得ようとするのだが…。事は簡単にはおさまらず、警察、会社、地元のやくざ、それぞれの関係と面子が絡み合い、収拾がつかないような事態になってしまう。もうぐちゃぐちゃ。

 夫の様子がおかしい。会社の態度も警察の動きも、なんだか夫が悪いことをしているみたいじゃないか? 夫は被害者でしょう?妻である恭子の不安はつのっていく。その気持ちの混乱の描写が素晴らしい。
 とにかく子供を守らなければ。この買ったばかりの家を失いたくない。この町での暮らしを失いたくない。1人でいると、様々な考えに押しつぶされそうになってしまう。夫に自分の思いをぶちまけることはできない。言えば何もかもがすぐに壊れてしまう。
 とにかく、パートに出よう。レジ打ちをしていれば、その間は他のことを考えなくて済む。夫への疑念、先行きの不安。それらを考えないようにするために、妙な市民運動にも参加してしまう。普通なら絶対しないようなことなのに。
 何もあるはずはない、と考えたい恭子の気持ち、しかし振り子のように揺れる思い、それに伴う行動は痛々しいほどである。特に、市民運動に参加していき、陶酔していく様子には、「ああ、こういうふうにして何かから逃げるためにはまっちゃうんだなあ」と思う。そうでもしないと、自分を支えていられない。耐えられない。

 私が思ったのは、「人ひとりだと話は簡単なのにな」ということである。茂則は、もうシラは切れないと思えば、自首すればいい。恭子だって、よその町に引っ越して新しい生活を始めることは不可能ではないのだ。何がそれをためらわせるのかというと、夫と妻、そして2人の子供、越してきたばかりの家、その町で落ち着きつつある生活、という「家庭の暮らし」を失うまいという気持ちが大前提にあるからだ。今まで通りに暮らしたい。そして、子供たちを「犯罪者の子」にしたくない、という強い気持ち。
 結婚していなければ、子供がいなければ、ここまで執着心もないだろうし、その先自分ひとりくらい、何とか暮らせるだろう。家族を切っちゃえば、すごく気楽になれる。
 なんかちょっと陳腐だけど、家族がいるって、喜びも悲しみも楽しみも悩みも、1人のときの数倍の重さだな、って思う。
 ただ、この物語のなかでは、夫の茂則は相当情けなくて、その重さを一身に背負って家族に執着しているのは、妻の恭子なんですね。恭子はそれに耐えて家族を守り抜くのか、スパッと家族を切ってしまうのか、恭子の選択を、ぜひみなさん読んで確かめて欲しい。
 ラストの小道具(大道具?)、「自転車」がピリッと効いている。うまい!

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2004/11/02 15:42

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2004/11/28 11:14

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2005/03/01 10:54

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2005/03/10 09:13

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2005/06/07 18:02

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2005/12/15 19:07

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