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紙の本
不思議なコレスポンダンスと才能の哀しさ
2001/09/06 17:32
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山田登世子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ふとした風の吹きまわしで故郷の土地の匂いが懐かしく、松本清張のことが知りたくなって手にしたのがこの本。あっと読ませる達者な文章で、清張という人の愛情深さがよく伝わってくる。名作『砂の器』にひたひたとにじむ「愛」の哀しみが今さらのようにうなづけた。と思っている矢先、ハンセン氏病訴訟「訴訟せず」の大ニュース。何か不思議なコレスポンダンスを感じた。
そのコレスポンダンスは魯山人にも及んでいて、読み終えたとたん、愛に飢えたこの孤独な名匠が同じく孤独な誰かに似ていると思った。そう、あのココ・シャネルだ。「有名になるのって、孤独になることよ」──ひとり暮らしのシャネルはそう言った。しかも二人が似ているのは、それだけではない。その強烈な存在感がうとましさに通じる点もよく似ているのである。毎日、魯山人作の陶器に囲まれて「うんざりした」と著者は書く。「あくの強い陶器は神経を刺激する。磁器の自己を主張せぬ穏やかさが恋しい」と。晩年のシャネルの話相手をつとめたパリジェンヌもまた、香水のしみこんだシャネル・スーツがあまりにも重苦しく、以後スーツを着なかったという。
「平凡さ」に恵まれなかった才能の哀しさ。愛はせつない。けれど、才能もせつない。(山田登世子/フランス文学者 2001.6.5)