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紙の本
本土防空戦の集大成
2002/11/26 02:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワクロー3 - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供のころに、自分で選んだプラモデルは、『飛燕』と『屠龍』だった。これっ
てまったく偶然にもどっちも陸軍機だ。箱絵には、本土を焦土にした憎きB29爆撃機
に敢然と立ち向かう勇ましい姿が描いてあったので、大人になったら『俺もどっち
かの飛行機でB29撃墜してやるぞ』って、思ってました。もちろん大東亜戦争はずう
ううっと前に終わっているので、そんな夢は実現しないのですが。
日本の本土防空戦を主力として戦った陸軍航空の中盤から末路迄を描いたノンフ
ィクションのライターとして、彼の作品を読み続けています。陸軍機に関する著作
は多いので、ひょっとして彼も、ほんとは陸軍機好きなのかな、と思うのです。
この本は、圧倒的な戦力差の中で、本土を守るために、国民注視の戦場=日本上
空で戦った勇士たち。貧弱な機材と武装と工業生産力の限界の中で生産された国産
機を駆って、毎日のように迎撃する兵士たちの戦いを記録した貴重な本です。
上昇力に劣る乗機の武装をはずして、高度1万メートルに向かい、B29に体当たり
攻撃して死んでいった兵士。米軍に占領されたサイパンや沖縄の飛行場に片道爆撃
をかけた兵士たち。微弱ながらレーダーシステムを構築して米軍を迎撃しようと頑
張った人々。その話が淡々と書いてあるのです。
彼等の話は戦争中の新聞をめくると、連日のように大々的に報道されている。空
の勇士は、醜敵B29撃墜のために空対空体当たり攻撃で立ち向かっていった英雄だっ
たのだ。
しかし、戦後になって過剰なまでに反省した報道は、彼等勇士の姿を再び描こう
ともしなかった。あのとき、撃墜のたびに喝采を送った国民も、いつしか彼等の存
在を忘れようとしている。
結果として彼等は、B29爆撃機の無差別爆撃を阻止することはできなかった。国土
が米軍の無差別爆撃で焦土と化す中で、与えられた戦力と、限られた選択肢の中
で、からだがよれよれになるまで、醜敵アメリカに立ち向う姿を記録したのが、本
作である。
『本土防空戦』など、過去にあらわした著作の不備を補い、その後の取材で得た
新事実などを加筆してあるので、前作を読んだ人にとっても、より充実した本書は
読むに値する著作だと思います。