「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
放射線と健康 (岩波新書 新赤版)
放射線と健康
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
目次
- まえがき
- 第一章 放射線とはなにか
- 1 初めて発見された放射線の正体は電子であった
- 2 二番目に発見された放射線、X線は光であった
- 3 放射線を出している物質がある
- 4 アルファ線の正体と陽子線・中性子線
- 5 放射線は物質を通り抜ける
- 6 放射線を分類する
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
日々目にする放射線数値を正しく理解するための基礎として。
2011/05/11 20:09
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
震災後一月を過ぎるころから、書店に行くと雨後のタケノコのように地震・原発・放射線関連の書籍が登場している。数年前の書籍の緊急再販もあれば、急いで出版されたものもある。震災直後の日記というのがあり、著者のあとがきが韓国のどこかからになっていたのを見たときは複雑な気持ちだったが、とにかく玉石混交である。メディアから毎日流れてくる情報が本当に正しいのか、関係する基礎知識をきちんとした書籍で確認したいのだが、なかなか適当なものがみつからない。これも、普段私たちがそういったものにいかに無関心であったかをよく表しているのだろう。
本書は少し古い出版であるが、基礎的なことをかなり中立に、淡々と綴ってある点を評価したい。まえがきの説明には、1974「放射線と人間」の改訂として書き始めたが全て書き直し、医学利用の部分を減らして影響に話題を絞った」とある。
放射線の発見の経緯に第一章をあてるなど、研究者の説明だと感じるオーソドックスなまとめ方である。それでも「放射線のなにが身体に影響するのか」などはきちんとしかしわかりやすくという姿勢がうかがえる。
様々な情報の中で、放射線をわかりづらいものにしているものの一つは単位の錯綜ではないろうか。「第二章 放射線の量を測る」はそのあたりのことを理解する基礎であり、歴史的に様々な考えや誤解が積み重なっている背景がわかる。少々面倒なところでもあるし、歴史経緯がわかっても複雑さはなくならないのだが。
「第三章 日常の放射線」には、世界中の空気中の放射線量、体内に存在する放射線量などの数値が載っている。このような「平常時の値」というものを知っておくことはとても大切なことである。漏れ聞く外国のニュースなどでは「線量が3倍になった」と騒いでいたりするが、殆どゼロに近い値が3倍になっても平常値の範囲であったりもする場合もあるのである。本書にはネット情報の活用などは記載されていないが、現在の値を参照できるホームページなども記載してあればよいのに、と感じたところであった。
「第四章 放射線障害」「第五章 遺伝影響と発がん」「第六章 放射線障害からみた医療」。どれも、長期的にどうなるのか、我々が不安に思う話である。この中で単位のややこしさに関して「みなさんお困りでしょう P116」というサブタイトルがあり、「だいたいこんな読みかえをするとおおよそ比較できる」という記述がある。著者の一般人への気遣いが感じられて嬉しかったところだった。
今現在の要求に直接応える構成や内容にはではないかもしれないが、急ごしらえで出版される本にはない、冷静な(いい意味でも悪い意味でも)スタンスが感じられた。これでも難しいとは感じる部分はあるが、玉石混交の中から良い情報を見つけるために先ず読んでみるにはよい一冊だろう。
間違いを繰り返さないために、今度はチェルノブイリの報告でも読んでみようか。