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商品説明
おそらく最後の担い手になるであろう手仕事に生きる人々を全国に訪ね、彼らの仕事、自然とのかかわり、どのように手業を学んだか、職業的倫理観などを考察、記録する。「職人」を通して現代日本の根本を考え直す。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
塩野 米松
- 略歴
- 〈塩野米松〉1947年秋田県生まれ。作家として活躍する一方、聞き書きも精力的に行う。著書に「大黒柱に刻まれた家族の百年」「木のいのち木のこころ」「不揃いの木を組む」など。
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著者/著名人のレビュー
手仕事に生きる多く...
ジュンク堂
手仕事に生きる多くの職人が、いまこの日本から消えていこうとしている。若者が跡を継がないことが大きな理由の一つだが、私たちの生活がすっかり変わり、彼らの作る道具や製品を使わなくなってしまったことが最大の理由である。
たとえば、水切りのよい竹で編んだザルは、安価な中国製のものか大量生産されるプラスチックか金網のものにとってかわった。
また多くの家庭では、細胞を壊すことなく刺身が切れる和包丁より、研がなくても切れ、錆びる心配のないステンレスの包丁が使われるようになった。
著者の塩野さんは、早くから職人たちに今日あることを見越し、二十数年前から手仕事に生きる人人を全国に訪ね、彼らの仕事を聞き書きで捉えてきた作家である。
彼はこれまでのインタビューを通して、自らが考え続けてきたことのすべてを、一挙に吐き出し、総決算ともいうべき「職人論」を初めて、世に問うた。それがこの本である。職人を生かしてきた伝統社会をこのまま破壊させてもいいか。まれに見る問題作である。
出版ダイジェスト:2004年7月
テーマ『手から手へ伝承したい〈手仕事〉の世界』より
紙の本
日本から消えてしまった「手仕事」の思想と人間観を探る。
2001/10/22 22:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いまの時代、「手仕事」と聞いてイメージされるものには2通りある。ひとつは、高度な工芸技術に支えられた高価なもの。厳しい師弟関係。伝統。もうひとつは、コツコツと時間をかけて作られる割に、安価なものになってしまった現実。非大量生産性。厳しい仕事——。手に職をつけた「職人」に憧れる人がいる一方で、そこに至るまでの厳しい道のりを考えるだけでも嫌になる人がいる。安価な大量生産品が大量消費されるいまの日本で、「職人」が生き残ることはかなり困難だ。
本書には「消えた職人たち」が数多く収録されている。著者が綿密な聞き取り調査を行ったためであろう、かなり興味深い話が盛り込まれている。大分県佐賀関町の、地元で1、2を争う漁師が自分の息子を漁師にさせなかった話は特に強烈だ。「息子に漁師をやらせなかったのは頭が悪かったから。…だから、息子は会社員にしました。いわれたことぐらいはできるでしょ」。1日として同じ海や風の状態はなく、それを的確に判断して漁をしなければならない漁師は、私たちが考えているほど容易い仕事ではない。言われたことだけをやっているようでは、船底1枚下が地獄ともなりうる自然を、とても相手にすることはできないのだ。
著者いわく、その時代その時代の倫理は、一所懸命生きることから生まれてくる。たとえ安価であっても、自分が作った「もの」に絶対の自信を持っていた職人たちは、間違いなく一所懸命生きてきた人たちだった。質の良い「もの」を作り上げることに傾けられた師匠の精魂は、確実に弟子たちに受け継がれた。だから、弟子は「人間としてのマナー」を犯すような人間にはならなかった。著者がもっとも恐れているのは、「手仕事の時代」が終焉し職人たちが社会から消え、同時に日本人の倫理観と日本人そのものが変質しつつあるということだ。すなわち、日本という社会は、「よいものを、精一杯の力で作り、世に送り出す」送り手と、「よいものと悪いものを区別し選択する」使い手を維持することができなくなってしまった。日本のこれまでとこれからを考えながら、読んでみたい。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2001.10.23)