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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.9
- 出版社: 集英社
- サイズ:20cm/249p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-08-773350-5
紙の本
宮廷の道化師たち
著者 アヴィグドル・ダガン (著),千野 栄一 (訳),姫野 悦子 (訳)
強制収容所の最高司令官の「館」の道化師として、20世紀の悪の極限を生きのびた4人の男達の運命の物語。いまチェコで最も読まれている、人間性への信頼を回復する哲学的歴史ドラマ...
宮廷の道化師たち
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商品説明
強制収容所の最高司令官の「館」の道化師として、20世紀の悪の極限を生きのびた4人の男達の運命の物語。いまチェコで最も読まれている、人間性への信頼を回復する哲学的歴史ドラマ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
アヴィグドル・ダガン
- 略歴
- 〈ダガン〉1912年チェコ生まれ。カレル大学で法学博士の称号を得る。政治的理由からイスラエルに出国。イスラエルの外交官として活躍する。77年以降は作家活動に専念。
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紙の本
脇腹を鋭いキリでもみこまれたような傷みに満ちた小説なのに、「人生は美しい」と思わせてしまうのは一体何の力なのだろう。強制収容所の司令官の道化師として生き永らえた男たちの復讐憚。
2002/04/30 17:54
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投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
「人生は美しいねえ」と最近、何人かの友人へのメールに記したばかりだ。
自分の身が、良い意味で整ってきたり固まってきたりしつつあるとき、それを勢いよくひっくり返したくなる破滅的な性分、加えてたぎりやすい血を私は何十年と持て余し続けてきた。それでも「そんな自己を結局は引き受けていくしかないのだよな」と、ここ1〜2年ぐらいでようやく自分との折り合いがついてきたところだったのである。
だが、神さまはいろいろなものを用意して待ち伏せしている。これまでに見たことがないような人との出会いがあった。というより正確には、知人だったのだが、その人が私のこれまでの価値観を揺るがすような圧倒的に見事な人だということを発見したのである。そのことを書いて「ちょっと惚れちゃったのかな(女が男に「惚れる」と使うのは下品だね)」と記して、「人生は美しいねえ」とつけ足した。
「ライフ・イズ・ビューティフル」という素敵な映画があった。
この小説も、舞台の半分はナチの強制収容所である。テーマは家族愛ではないが。
登場人物は、最高司令官の<館>で娯楽を提供する奉仕のために集められた4人の男たちである。ひょうきんな物言いと仕草で客たちを笑いの渦に巻き込む小人のリーゼンベルク。巧みな技による鮮やかなジャグリングで喝采を浴びるヴァーン。幸運な直観をもつ星占い師のマックス。そして、人の過去を透視する能力を秘めたせむしの私。
仲間のユダヤ人たちが次々と処刑されていくなか、4人は司令官のパーティーを盛り上げることで命をつないでいく。
「何より重要なのは、ただ生きること。生きて、存在し、生きのび、生き残り、息をすることでした」(61ページ)。
そんな彼らに、過酷な運命が待ち受ける。機械じかけのように正確な軌道を描きリズムを刻んで複数のカラーボールを投げつづけるヴァーンのバランスを崩せるものはいるのか——座興として、賭けが行われるのである。
突然跳びかかるように近づかれたり、耳元で大声で叫ばれてもヴァーンは一定の動きを保つ。司令官は次々に賭金をかきこむ。
場はエスカレートし、天井に発砲が行われ、ヴァーンの胸元に筒先が当てられる。衣服をむしり取られた女が、足元で脚を開く。
司令官は道化師の奮闘ぶりに大いに満足し、ゲームの終焉を宣言するものの、ヴァルツ大尉だけは納得しない。時間をもらった上で、収容所からヴァーンの妻を見つけてくるのである。
ここで起きる悲劇が、ヴァーンにとって新たに生きのびること、存在することの意義にすり変わっていく。物語は、ヴァーンの復讐劇を追いながら、道化師たちを待ち受ける運命をも語っていく。
「人生は美しい」という感懐は、すべて読み終わったとき、登場人物の価値観がひっくり返り、彼の人生が新たな局面をもって展開していくことを確認したときに生じてくるものである。
自分も最近遭遇したそれを、なぜ「美しい」と表現したくなるのか、私にはまだうまく言葉で説明ができない。平穏無事に穏やかに暮らしながら微笑む人の姿より、やるせない思いに焦げつきながら、千々に乱れて揺らぎたゆたう愚かな自分の生きざまを「美しい」と感じるのも、大いなる勘違いなのやもと思わなくもない。だがしかし、「美しい」と思える瞬間の連続こそが、まさに人の生きる証しなのかもしれないと考える。
紙の本
生き残った者
2018/05/15 04:04
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦下での強制収用のシーンには胸が痛みました。憎しみを乗り越えた先にある、僅かな許しが感動的でした。