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商品説明
闇に谺する異能者たちの宴。すべては、月が知っている! 夜ごとに謎めく怪事件、めくるめくサイファイ・ホラーの万華鏡。あの「二重螺旋の悪魔」から8年、鬼才が仕掛ける初の中短編集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
月の部 | 7-330 | |
---|---|---|
断章の部 | 331-377 |
著者紹介
梅原 克文
- 略歴
- 〈梅原克文〉1960年富山県生まれ。コンピュータソフト会社勤務を経て、「二重螺旋の悪魔」でデビュー。「ソリトンの悪魔」で第49回日本推理作家協会賞受賞。
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紙の本
どこかB級、っていう感じではあるんですね。でも悪くはありません。特に「胡蝶乱武」のガラスのような美しさ・・・
2006/07/20 20:38
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《土井が見出した100m走の陸上選手。五輪の金メダル候補佐古京一は彼の目の前で、競技会場の窓から身を投げた。圧倒的な佐古の速さにドーピングの疑いが》広義のミステリ集。SFといってもいいのですが、梅原自身はサイファイ・フィクションと呼ぶそうです。ま、このとき梅原が世界の端っこで叫んだだけなので、結局、死語になっている気はするんですけど、わたし・・・
自分が発見し育て上げた選手が、成果を問う競技界の直前に自殺する。京一の遺品を引き取りに来た姉の不審な挙動。土井が見つけたゴミ箱の袋には「冬人夏草」の文字が。有名な「冬虫夏草」に似た名前の意味するものを求めて、佐古の故郷式田村で出会ったものは「冬人夏草」。
柿本人麻呂の短歌に顔を見せる言葉「かぎろい」。その取材に奈良を訪れた野地久雄の前にあらわれた老人。彼が述べる人麻呂像は、常識と大きく異なるものだった。「かぎろい」と人麻呂伝説を繋ぐものは。梅原猛「水底の歌」をうまく取り入れながら「人麻呂異聞」。
ボクシングの全日本新人王決定戦で優勝候補でありながらKOされた大介は、網膜剥離で選手生命を絶たれる。レーザーによる眼底手術で、普通の生活だけはできるようになった彼の目が見るもの。引退したボクシングジム会長の息子の行方は。虚空に舞う蝶のイメージが美しい「胡蝶乱武」。
東京に起きる連続傷害事件。自殺した佐古京一のコーチ土居昇は、事件の陰に共通したものを感じ、捜査に乗り出す。ゲームセンターを舞台に繰り広げられる追跡劇、四つの話が最後に一つに繋がる「科幻月輪〜サイファイ・ムーン」。
まとまりをどう見るかで評価が分かれるのでしょうが、この幻想味は悪くありません。特に「胡蝶乱武」のガラスのような美しさは絶品といってもいいでしょう。
あとがきで梅原はサイファイ・フィクションを、「アメリカではSFマニアたちが、SFもどきのくずみたいな娯楽作につける侮蔑語だったが、現在ではジャンルとして確立したもの」として、TVの『Xファイル』、映画の『ジュラシック・パーク』『ターミネーター』、小説ではクーンツの『ウォッチャーズ』やマキャモン『スティンガー』などを例として挙げています。
そして、梅原は自らの作品もそれだと宣言しています。確かにノンストップ、読み始めたら止まらないとはいえます。でもどこかB級の香りがしてなりません。それは過去の『ソリトンの悪魔』『カムナビ』にもいえることで、楽しいとはいえるのですが、人間というものの深さに迫るか、といえばまだまだ物足りません。それにしても最近、作品を書いているのでしょうか、沈黙が気になる作家ではあります。