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商品説明
アメリカ同時多発「テロ」の背景にあるのは何か。パレスチナ問題にまつわる80年間の怨念、憎しみの乱反射、そして9・11後の世界は…。ビンラディンたち「テロリスト」の胸中に渦巻く怒りの根源をたどる書き下ろし。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
芝生 瑞和
- 略歴
- 〈芝生瑞和〉1945年東京生まれ。米アーモスト大、仏ソルボンヌ大卒。国際ジャーナリスト、国際問題評論家。著書に「アンゴラ解放戦争」「ユーロ・コミュニズムの実験」「パレスチナ問題とは何か」など。
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紙の本
著者の遺言
2005/04/27 03:03
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
先ごろ新聞でも大きく死亡記事が報じられた芝生瑞和氏が,専門のイスラム・アラブ世界の思想や現実を踏まえ,9.11にまつわるアラブとアメリカを論じた本である。
9.11のあの時,著者がたまたまニューヨークに滞在し,現場までわずかの距離にいたことが,この本が生まれるそもそもの経緯と記されている。しかし,そのような些細な事実を抜きにして,アラブ世界とアメリカとの対立を的確に論評するにはまさに最適の著者を得て書かれた本といえる。
自衛のための戦争や民族自立のための蜂起に立ち上がる“まっとうな”戦士に対し,相対する権力側が「テロリスト」と呼ぶことに関し,これまでも何となく違和感があった。
「テロリスト」という単語は,もともと「恐怖政治」を語源とし,現在でも「卑劣な行為」というニュアンスを含めて使われている。日本の小泉首相がイラク人質事件の犯人に対し,「テロリストには屈しない」と無謀な挑発を仕掛けた場合を端的な例とするように,権力側が聞く人に,暗に自分の正義を印象づける際に使われる言葉である。
この本で著者が国際的通信社であるロイターの通達を紹介している。
「ある人にとっての『テロリスト』は,他の人にとっては『自由の戦士』だ」
自分自身の尊厳を守るために戦う“まっとうな”戦士に対し使われるべきことばではない。しかし,9.11の犯人達はどう考えても「自由の戦士」とは思えない。アラブの尊厳を守るためにアメリカに敵対する戦士ととらえるには,起こした事件があまりにも残酷すぎる。思考が矛盾する。
この本で著者はその問いに明確に答えてくれる。著者は言う,彼らは「破壊の戦士」であると。
オサマビンラディンと従来の自由の戦士の違いを著者は解き明かしてくれる。それは,「民族自決に対する姿勢が違う」のである。オサマビンラディンの行っていることは,西欧を恐怖のどん底に陥れること自体が目的であり,肝心の民族自決に対する明確な未来図がないのである。
9.11により,これまで“まっとうに”戦ってきたアラブの戦士達までが,十把一絡げに「テロリスト」呼ばわりされるような風潮が見られる中で,アラブの歴史・イスラムの思想から説き起こし,「テロリスト(一般的なに言うという意味でかっこ書き)」がアメリカを憎む正当性を明確に解説する有益な本である。
最後に著者は言う。
「日本はアメリカの轍をふんではならない。憎まれる日本になってはならぬ。これは近隣のアジア諸国との関係においても言えることだ。そのためにも,私はこのささやかな本を書いた。」
著者の心から発せられた遺言である。しかし,現実の日本は暗い。