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江戸の検屍官 北町同心謎解き控 時代推理小説 (祥伝社文庫)
江戸の検屍官 北町同心謎解き控
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紙の本
江戸時代の検屍を楽しむ、連作短編ミステリー六話
2011/05/13 09:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年、海外小説や海外ドラマなどで、しばしば取り上げられ、人気を博している検屍もの。
本書が、その影響を受けたかどうかは不明だが、時代小説で題材として選ばれることのなかった検屍を取り上げたのは、大いに興味を誘う。
解剖が許されないこの時代、死体の精緻な観察によって、死因を特定する。その手引きとなるのが、江戸時代の検屍の教典『無冤録述』である。
「水落河投死(みずにおちかわになぐるし) 井戸へ落死したる者、その死人が我と我が身を投じたれば足が下になって居るべし」
各話の冒頭には、この『無冤録述』の遺体の状態を示す一部が記載されており、検屍官ミステリーとしての雰囲気は、いやでも盛り上がる。
主人公・北沢彦太郎は検屍好きである。遺体を徹底的に調べなければ気が済まない。それが事件の隠された真相を暴き出すことになり、上司からは褒められるものの、仲間の同心で彼の検屍につき合う者はいない。
そんなことは気にもせず、彦太郎は『無冤録述』を用い、同じく検屍好きの医師・古谷玄海とともに、遺体に隠された真の死因を、さまざまな薬や手法で徹底的に調べ、事件の真相を暴き出していく。
その様子が新鮮で、現代検屍官もののように解剖もできず、特殊な薬品もない時代、どのような検屍が行われるのか、遺体にどんな秘密が隠されているのか、そんなことが気になって、物語の世界に引き込まれていく。
ただ、艶本、残酷絵の絵師・お月の巧みな人相書きが、事件の解決に大きく寄与している点がもったいない。人相書きがあまりに似すぎているため、真相究明の足取りを急速に進展させており、少し強引な展開が気になってしまうのだ。
惜しむらくは、たびたび描かれている生々しい男女の交合が、検屍官ミステリーを希薄なものにしていることである。
紙の本
江戸時代の検屍を扱った捕物帳。
2002/07/25 23:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代の警察制度は、当たり前だが現代からすると幼稚で、自白偏重の為に被疑者を責問(拷問とは少し違う)することが多かった。しかし、TVの娯楽時代劇ほど滅茶苦茶だったわけではない(特に後期)。
本書は「江戸の検屍官」こと北町奉行所同心・北沢彦太郎の活躍を描いた捕物帳。こうした個性の強い作品は、個性が逆に命取りになる恐れもある。今後、検屍がマンネリにならなければ良いと思う。
それと、時代考証がしっかりしているということで、根拠無しに「健全で堅めな作品」という予想をしていたのだが、実際は違った(汗)。この作品にエロ描写はあまり必要無い、というか不釣合いで変な感じになってしまっている。……個人的は、特に現役の医者には、あまりエロは書いて欲しくないのだが……。
紙の本
ちょっと変わった捕物帳。おもしろいことはおもしろいんですが…
2002/03/22 19:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代、文政の世を舞台にした捕物帳。なのですが、他の捕物帳とは少し趣きが変わっています。と言うのも、書名にあるように主人公の同心・北沢彦太郎は、江戸でも一、二を争う検屍の腕前も持つという設定。死体が見つかる度に、友人でありライバルでもある医師の古谷玄海とともに出向いて、中国から伝わった検屍の手引書を元に死体を検分していくのですが、これがおもしろい。現代のような整った法医学など無く、何よりも死体を解剖することが禁じられていた時代に、これだけのことをしていたのかと驚かされ、聞きこみ情報などの状況証拠のみで犯人を捕らえてきて、後は拷問で口を割らせていた、と漠然と思っていた江戸時代の警察制度・司法制度について考えを改めさせられました(解説によると時代考証もシッカリしているとのことなので)。
短編6作が収録されていて、溺死、縊死、毒死、中には自殺に見せかけた死体など状態の異なった死体を、それぞれに合った方法で検分していくのでおもしろく読めます。が、死体というのがどれも若い女性ということもあってか、エログロまではいきませんが、2、3話読むと、ちょっともういいやって感じになってしまいます。殺しの動機がどれも似かよっているのも残念です。設定などはおもしろく、ちょっと変わった捕物帳という点は買うのですが。