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商品説明
7年間ミツバチの群れと寝起きした若者がいた。1匹1匹に背番号をつけ観察するとハチの様々な一生と多彩な個性が見えてくる。この世界的な発見は青年に生涯のテーマをつきつけた。ハチの社会は人間社会と無縁なのか?【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
本田 睨
- 略歴
- 〈本田睨〉1932年東京生まれ。帯広畜産大学中退。サイエンス・ライター。科学・教育番組の構成、博物館のプランナー、『ポピュラーサイエンス』編集顧問等を務める。著書に「性とからだの本」ほか。
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紙の本
ハチ学者・坂上昭一と彼の同時代人たちのエピソード集
2002/01/07 06:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1996年11月に亡くなった坂上昭一の研究上・私生活上のエピソードをつづった本である.坂上もまた「昆虫少年」出身の「プロ昆虫学者」だったのだ.北大での【ハチ小屋】修行時代からはじまる研究の生涯が,著者はもちろん坂上の多くの知人・同僚のことばによって語られている.ハチ個体の網羅的マーキングとその追跡調査を大規模に行なうという坂上の研究手法は確かに執念のなせるわざだった.
ハチ社会を見ていると「身につまされる」(p.21)と言う坂上は,ハチとヒトの社会進化のあり方を互いに照応させながら考え続けた.社会性昆虫の研究者は,その研究の過程で,ヒト社会を見る「眼」も育んでいるのだろうか.本書にも登場する E.O. Wilson や W.D. Hamilton の思想形成のあり方に光を当てるようで興味深い.
本書は,坂上の伝記としてだけではなく,ハチの社会生活の解説書でもある.とくに,挿入されている川島逸郎による生態画は印象的で,描写としては正確ではないのかもしれないが,多くの読者の目を楽しませるだろう.たとえば,《オオスズメバチ「ふとんむし」に息絶えるの圖》(p.68)などはどうだろうか.著者の生物進化に関する表現にはところどころ気になる点があるが,大きなミスではないと思う.
惜しむらくは,本書がシステマティックな伝記ではないという点である(著者もその点はきっと自覚しているのだろう).したがって,本書のいたるところに引用される坂上自身および他の人たちのことばの出典をたどることはできないし,彼が内外の研究者とともに進めた共同研究・論文についての情報も得られない.せめて,坂上の経歴年譜・業績目録・索引が巻末に付けられていれば,一般の読者にとってより親切だっただろうと思われるし,本書の資料的価値もより高まっただろう.
本書は,坂上昭一という世界的な昆虫学者の生涯を通した社会性昆虫の世界への招待である.昨年出た W.D. Hamilton 伝『虫を愛し、虫に愛された人』(文一総合出版,2000年)とともに,一般向けの読み物として勧められる.ただし,いずれも主人公たちが相次いで鬼籍には入ってしまったのは残念なことだ.
坂上昭一が書いた著作はいまどのくらい入手可能なのだろう? 以前に思索社から出ていた多くのハードカバー本はすでに品切れのはずだし,岩波新書や中公新書も今では新刊入手できないと思われる.
紙の本
蜂の群れは、人間社会と驚くほど似ている。
2002/02/19 22:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「人間と動物との違いは何?」と学生に何の前触れもなく尋ねると、必ずこんな答えが返ってくる。「人間は科学技術を使って、新しい役立つものを次々に作り出すことができる」「人間は本能だけではなく、理性ももっている」「人間は社会を作って暮らしている」。どの答えも、従来の(特に社会学や哲学といった文系的な)考え方からすると間違ってはいないが、実に中途半端なものであることがわかる。というのも、理性や社会の思想的な由来をたどってみると、そこには一切「ヒトとしての人間」という考え方は入っていないからだ。人文・社会科学系の知識に侵されてきた人たちを、自然科学系の知識に慣れ親しんでいる人たちは呆れながら笑っている。まずDNAなどの最新の生物学的知見にしたがえば、ほとんど人間とチンパンジーとの差はない。社会はチンパンジーにもシロアリにもある。新しいものを生きるために作り続けているのは、人間だけではない。砂漠にそびえたつ巨大な巣・アリ塚を作ったのは他ならぬアリ自身だ。それはアリのために大いに役立ってもいる。
著者がしぶとく迫り続けた坂上昭一は、ミツバチと人間の社会を常に比較し続けてきた。もちろん、ミツバチと人間を分け隔てることなく。ミツバチを観察することで、人間社会の不可思議さが浮上してくるからだ。その一例に、働きバチが集めてきた蜜を巣の中の貯蔵係のハチに渡して、すぐに採餌行動に飛び立つ際に、次の飛行分だけエネルギーとして蜜をもらうということがある。「次の飛行分だけ」のエネルギーというところがミソである。ミツバチは決して自分のためだけに生きていない。このことを坂上昭一は、ミツバチが「汚職構造向きでない構造で生まれついている」と述べている。坂上は「群れで暮らすハチが興味深いのは、おなじように群れて暮らす人間として、しばしば身につまされるから」とも述べている。これらの言葉を読んで、思わずうなってしまうのは私だけだろうか。「個と群れ(全体)」の関係を大切にするミツバチと、私たち人間はどこまで同じでどこから違うのか。ミツバチの背中に一匹一匹ナンバリングをしながら個体の動きを周到に観察した坂上の研究から、人間の社会も考えてみたい。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2002.02.20)
紙の本
目次
2001/12/29 12:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
プロローグ:ハチ小屋伝説 7
1 背番号をつければハチの世界が見えてくる 14
働きバチと鵜飼いの鵜
働きバチは滅私奉公
わが友ハチのパンダ
ハチ小屋の徒弟時代
分業——最初の研究テーマ
SFSの署名
2 ハチの履歴ハチの個性 35
スーパーファミリー
仕事の分担は融通無碍である
働きバチの履歴書
幻の論文「ハチの個性の研究」
〈コラム〉生きもの社会を知るための個体識別法
3 ミツバチも“所変われば品変わる” 55
虫屋を驚かせた虫屋
“8の字ダンス”にも方言?
基礎研究ならぬ純粋研究
東西ミツバチのオオスズメバチ対決法
4 昆虫少年津軽海峡を渡る 69
「インド駈けある記」
無視がとりもった生涯の友
仲間は二人でもボスはボス
「お前,藤川の敵になるのか!」
昆虫少年が生まれる条件
戦中世代の眼
ハチのカミカゼ特攻隊
〈コラム〉ハナバチ誕生までの長い道のり
5 社会進化の頂点に立つ?ミツバチ社会 99
政治の季節と生きものの群れ
つつくものとつつかれるもの
ミツバチの社会ヒトの社会
アリの二大文明
幼虫が紡いでつくるアリの巣城
農耕文明をもつハキリアリ
ミツバチ社会は進化の極みか?
女王と働きバチを分けるもの
盲目の天才生物学者ユーベル
奇怪な王位継承物語
6 女王物質という秘薬 134
『在来種ミツバチ研究会』
新社会性のネズミがいた!
女王は経口避妊薬の製造者
秘薬の保存場所
“奪女王”の方程式
バトラーの実験
万年助教授
ブラジルからのラブコール
〈コラム〉わたしの出会った戦中派世代の昆虫学者たち
7 ハナバチの宝庫南米大陸 164
ドクトル・ベルトニ
“私”のブラジル
ブラジレイロ気質
空飛ぶ宝石
君はヌスミハリナシだ!
ハチ版『七人の侍』
首を捨てて戦うツリハリナシバチ
8 女王食卵——もう一つのカースト制維持法 190
ハリナシバチ対ミツバチ
ニクロム線入りの観察巣箱
ハリナシ女王の栄養学
愛弟子ヅッキ
アフリカーナ騒動
再び“私”のブラジル
〈コラム〉ハミルトン革命
9 押しかけ弟子たち 222
兵隊を持ったアブラムシ
地上三〇メートルの空中回廊
オオミツバチは“ハチの渡り鳥”
独居から不平等へ
生涯最初で最後の大実験
ハチの群に人間を見た男
エピローグ:死の三日前の電話 249
謝辞 254
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