「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
【星雲賞日本長編部門(第34回)】西暦2006年、太陽の周囲に突如出現した巨大リングは、地球環境に激変をもたらす。はたしてリングの正体は? 人類の運命は? 99年SFマガジン読者賞・星雲賞を受賞した短篇を長篇化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
野尻 抱介
- 略歴
- 〈野尻抱介〉1961年三重県生まれ。計測制御・CADプログラマー等を経て、92年作家デビュー。99年「太陽の簒奪者」短篇版でSFマガジン読者賞、星雲賞を受賞。著書に「ふわふわの泉」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
理屈抜きに楽しめる未知との遭遇
2002/06/27 12:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もぐらもち - この投稿者のレビュー一覧を見る
太陽の周りに突如リングが現れた。誰が何のためにつくったのか。
地球人は必死に調査する。幸いリングの創造者が用いる技術は地球人が推測可能な技術だったのだが、どうしても分からないことを残したまま最終局面に突入する。
そこにでてくる理論や技術は私にはさっぱり分からないし、地球の危機に対し、地球人がとる態度もありきたりだ。主人公、白石亜紀の内面描写もうすっぺらだ。でも、なんだか分からないうちに一気に読んでしまった。初めて未知の知性と遭遇した時、地球人はどんな行動をとるのだろう。そしてどんなことになるのだろう。ワクワクした余韻が読後に残る作品だ。
紙の本
「王道」
2002/06/27 11:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉振一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は個人的にはハードSFなんか別にぜんぜん好きではないつもりなのだが、本書を読むと、やはりSFの本道と言うか王道はハードSFなのだといまさらながら強く思わされる。
もともと日本のSFの第一世代は小松左京がはっきりそうであったように、戦後文学の鬼子というか落ちこぼれで、主流文学に対するルサンチマンがすごく強かったが、結局ルサンチマンだけではだめだった、ということか。いまや主流文学がかつてはSFにおいてしか許されなかった道具立てを自由に駆使できる時代になったので、かつての文学的SFにおけるような「重く困難なテーマをSF設定という裏技で玩具化して軽く探ってみる」というやり方が、正攻法の前に完全に失効したわけだ。ある意味、ジャンル全体で現代文学の前線を広げるための露払いをさせられて割を食ったわけで、気の毒と言えば気の毒なことだ。
しかしハードSFという、小説あるいは文学としては「奇形」に近い代物は、おそらく主流文学によって追い越されたり取り込まれたりすることはないだろう。それは「SF」にしか扱えないテーマを扱う「SF」でありつづけるだろう。SFの王道たるハードSFのそのまた王道である、異種知性体とのファーストコンタクトを直球勝負で描いた本書を読み、そういう感慨を覚えた。
また「ハードSF」という狭いジャンルの中の尺度で測っても、本書はある意味歴史的な意味を持つのではないか。古い話だが、ある意味本書の大先達に当たるだろう、ハル・クレメントやロバート・フォワードの描く異種知性体が「ものすげー変なかっこしてても所詮頭の中はアメリカ人」とよく揶揄されたのに対して、本書の描くエーリアンはスタニスワフ・レムばりの、まさに人間とは異質の何かである。しかもどちらかというと思弁的で文学志向のレム(しかし読み返すと意外とハードSFしているところもあってちょっと感動するが)に対し、徹底して具体的なハードサイエンスの成果の延長線上でそれを描こうとしているところが新しい。もちろんこの辺は、近年の認知科学や心の哲学の急速な発展を踏まえてこそのものではあろうが……。
それにしても、やはり近作『ふわふわの泉』(ファミ通文庫)でも語られていたが、野尻の考える「非適応的知性」とはどのようなものなのだろうか? もっとこのテーマを彼が突き詰めるのを見てみたい。
紙の本
輪をかけて壮大なSF
2016/02/03 10:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
野尻抱介は本書で星雲賞を獲得した。2000年に短編部門で2003年には長編部門での同じ作品で2回受賞するという初の快挙だ。太陽の周りにリングが出現して人類を死滅に追いやる。発想としては小松左京の「物体O」を思い起こさせるが、こちらのほうがよりスケールが大きい。
紙の本
ハードなSFを堪能!
2002/07/13 08:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Okawa@風の十二方位 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「水星に突如出現したナノテクノロジーによる巨大構造物。マスドライバーによって軌道上に打ち上げられたそれは、いつしか惑星を取り巻くリングとなった。望遠鏡のレンズの向こうに広がるその光景は、少女であった亜紀の心に焼き付けられた。それを作り上げたであろう異星人たち、いつしかビルダーと呼ばれるようになった彼らへのコンタクトという歴史の大きなうねりの中へ、亜紀は身を投じていく。いくつもの想いと共に。
歴史の向こうに亜紀が見たものとは?
圧倒的なスケールで描かれた、傑作ファーストコンタクトSF作品」
久しぶりにハードなSFを堪能させてもらいました!
やっぱりハードSFは、科学考証よりも歴史を感じるかどうかですね。人間が自分の手ではどうにもならない自然を描き、それに時を越えて翻弄されていくさまを描くのが、ハードSFの醍醐味というものではないでしょうか。科学考証なんざ、そのためのツールです!(<神をも恐れぬ発言)
作品では、ヒロイン亜紀を中心に何人もの人々、そして人類全体がファーストコンタクトという歴史のうねりに翻弄されていくさまが、実に見事に描かれていました。さすがは野尻氏、緻密でありながら詩的な雰囲気を漂わせた世界設定です。
紙の本
ハードSFらしい作品だが
2002/05/13 00:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sfこと古谷俊一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
異星文明のナノマシンが水星を解体。はたしてその意図は? 地球の滅亡を妨げられるのか? といった感じにはじまる、がちがちのファーストコンタクトものハードSFです。
技術的・考証的にディテールは優れているんですけど、全体として小説としては盛り上がりに欠けるきらいがあります。面白くないわけではないんですけどね。科学を志した一人の人間の話として読み、あとは細部の仕掛けやガジェットを味わうと楽しみやすいと思います。
連載時に比べてプラスされてるので叙情的になってはいるし、ネタは面白いと思うんですが、なんというか個人的な満足の範疇で展開が片づいてしまった感がありました。一部シーンは短編ラストであってこそ切れのあるものでして、長編に組み込まれると感動が薄くなっちゃったし。
社会や人間の変化のネタになる材料は多いのに、あまり扱われてないのも残念です。そのために人類の窮地の実感が弱くなっているように思いました。ハードSF的な謎解き・困難の設定と解決は、良くできているんだけど、溜めが少ないとか。
紙の本
著者コメント
2002/09/09 13:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野尻抱介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これはSFマガジンに掲載された三部作を大幅にリライトして長編化したものです。新しく一冊書くのと同じくらい労力がかかりました。目標としては、ファーストコンタクトを隅から隅までみっちり描くこと。異星人の正体などは明かさないほうがボロが出なくていいのですが、できるだけ逃げずに明確に書こうとしました。制約の多い近未来の技術で、宇宙戦闘も盛り込んでみました。ここはひとつ「あら探しをしてツッコミを入れてやろう」ぐらいの気持ちで読んでみてください。
紙の本
いざ、想像もつかない世界へ!
2002/04/25 22:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こじましゅういち - この投稿者のレビュー一覧を見る
日ごろ僕たちは、晴れや雨、四季の変化などの気候の恵みを当たり前のように享受している。その変化のエネルギーが、空に浮かぶ太陽からもたらされていることを意識もしなければ、そもそも、太陽の光が失われてしまうことなど考えたこともない。だけど、もし、その太陽の光が、とてつもなく大きな遮蔽物で遮られてしまったら、地球はどうなってしまうのだろうか。さらに、そのような遮蔽物を築き上げることができるほどの、超絶的な技術力を持った知的生命体の存在を知ったとき、地球に住む人類は、どうするのだろうか。
野尻抱介の新作『太陽の簒奪者』は、そんな地球と人類の姿を描いた作品だ。
すべては、白石亜紀が高校2年生の時に始まった。水星に突如として出現した巨大構造物。そして、その巨大構造物から宇宙空間に打ち出された物質によって、徐々に形作られていく、太陽をとりまく、直径8千万キロにも及ぶリング。このままでは、地球はリングに日照を遮られ、破滅的な気候変化に見舞われてしまう。人類はリング破壊のために、宇宙船UNSSファランクスを建造しリングに送り込む計画を立案。そのファランクスの乗務員に志願したときから、白石亜紀の人生は、リング、そしてまだ見ぬリングの創造者の探求の人生となった……。
この作品の面白さは何と言っても、もし人類が想像も及ばぬ危機的状況に陥ったなら、というスケールの大きな「もしも」の世界を存分に味わわせてくれるところ。人類の前に突如として出現したリングとは何なのか。リングを建造した謎の存在の正体とは。人類は降りかかってきた困難を振り払うことができるのか。物語はそれらの要素を軸にごりごりと突き進む。ポイントを絞り込んだ剛直な展開はこの作品の大きな魅力のひとつ。
さすがは野尻抱介だけあって、さりげない描写のディテールの緻密さは冴え渡ってる。小は宇宙船やリング構成物質などの各種ガジェットの描写から、大はリング出現による社会変化まで、過不足なく、無理なく物語に溶け込んでるし、その描写のさまを読むだけでも結構楽しい。
しかし、それ以上に強調しておきたいのが、物語の持つその雰囲気。人類の危機といえば、時には悲惨さが、また時には勇壮さが強調されたりすることが多いもの。けれど、この作品は、主人公の白石亜紀の半生を通して物語を語ることで、そのどちらにも偏ることのない、詩的ともいえる静かな雰囲気が醸し出されてる。亜紀の感情の機微も物語に彩りを添えてます。
日常と違う世界を垣間見ることができるのが小説の醍醐味のひとつというならば、この作品は、その醍醐味を存分に振る舞ってくれるはず。普段はこういう作品は読まないけど、たまには目を通してみてもいいかなぁ……と思ってる人にはとりわけオススメ。いざ、想像もつかない世界へ! (bk1ブックナビゲーター:こじましゅういち/ライター)