紙の本
いつの時代にも普遍的なもの
2002/12/12 12:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:深爪 - この投稿者のレビュー一覧を見る
筆者はNHK−BSで放映されていた「世界の子育て」という番組にコメンテーターとしてレギュラー的に出演していました。著者の語る子育て観には納得したり感心したりさせられていたので、幼な子を持つ父親としては迷わず本書を購入しました。
どうして、時に子どもがまっすぐに育たないのでしょう? 不登校になったり、ひきこもったり、あるいはとんでもない事件を起こしたり…
現代において、何の不安も抱かずに日々の子育てをしている親など、いるはずもありません。自分自身の将来像もよくみえないのに、ちゃんとした子育てなんてできるんでしょうか? 漠然とした不安は、この社会システムの閉塞感とともにあるようにも思えます。
著者の指摘するとおり、忙しい母親と役割を分担し、母親の代役を務めることが父親の存在価値ではないことはうすうす実感したとしても、ではいったい何が欠落しているのでしょう?
子どもと接しながら、常々、「これでいいんだろうか」と自問自答は尽きません。
さほどの苦もなく、父親が父親たり得た時代というのも、かつてあったかもしれません。あるいは貧困なときこそ、子を思う気持ちは示し易かったとさえも思えます。生活が豊かになり、女性の社会進出が加速するにつれ、父親の役割などというものも衰退していくかのようです。
著者はアカデミックなアプローチから高言するでなく、不安の拭えない父親の一人として地道な検証を重ねていきます。もちろん絶対的な答えなどありえないんでしょうが、進むべき道を指し示そうとする姿勢は共感の持てるところではないでしょうか。
「父親だからできること」は、いつの時代にも普遍的なものとして必ずあるはずです。現代においてはそれが非常に見えにくくなっているだけです。読後、おぼろげながらそう感じました。そしてヒントは私たちの周りに必ず見つかるはずです。父親である以上、とにかく父親であることを逃れることはできないのだということなんでしょう。
「父親力」というタイトルそのものに、それがいまなお存在し、かつ必要だとしたい著者の信念を見たと思います。
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この本は、一時期いっぱい出た「〜力」みたいなハウツー本では全然ない比較的専門的なことも多い。やっぱりそこに持ってくるかというように、母子密着型の弊害についての話が出てくるけれど、それが大人になってパラサイトシングルになり・・・というくだりは、あぁ誰かのことだ、、、と思ってちょっとしゅんとなった。「めまい」に関する考察は、はっとさせられた。
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現代社会での父親の役割を論じている。最近の風潮として、母子密着の育児が進んでいる。その中で子供の「自己認識」を促進する役割が持つ意味が記されています。
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子供を、困難に自力で立ち向かうことのできる存在へと発達させる為に、
もうひとりの母親にならず(母親の役割と同化することなく)、必要に応じて子供に手をさしのべ、前方への踏み出す手助けをしてやるのが、父性の最大の任務とのこと。
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こういう生き方指南は、それそのものを題材としている書物を読んでどうこうする、ってことじゃなく、これまでの人生で培った素養、中でも書物に関していうと、様々な分野の様々な書にヒントが隠されているものだと思う。だから、これを読んだから父親力がアップするとかは思わないし、それを期待して読んだ訳でもない。いくら人生経験を積んでいても、子育て自体は初めての体験になる訳だし、失敗するときは失敗する。ここでもやっぱり中腰で、謙虚にかつ真摯に取り組む姿勢でのみ、自分自身が納得していくしかないんだと思う。で、この書物。父親にはどういうスタンスが好ましいかっていう、一つの目安にはなったと思います。
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父親はこうあるべきという主観めいた論説が続くと予想していたが、しっかりとした科学的医学的?根拠に基づいて父性とは一体どういうものかを論じたもの。そのときそのときで納得させられる部分もあったが、ではこの本を要約せよ、父親力とは一体何か、と問われたら、パッと答えが浮かんでこないようなモヤモヤとした感じは否めない。論が終始一貫し、父親力とは何かについての答えを論じているならまだしも、様々な寄り道を経ているため、何が言いたいのかよくわからない。小説ではオッケーだが、論文ではダメでしょって感じ。
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◾︎2015/09/05読了。
◾︎父性について、実例とデータを使って研究した内容。子供の成長には、母性とともに父性が必要との結論。
◾︎思った以上に骨太な内容。根拠がしっかりとしていて読み応えがあった。
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何とも魅力あるタイトルではないですか。好きな著者でもあったので広告を見てすぐ書店に行き、手にしました。読みすすむと第4章で「もう1人の母親」になっていないか、というテーマに行き当たり、ドキッとしました。うちには2人の母親がいる、そう言われてみれば確かにそういう気がしてきます。父親としての役割(これは必ずしも男親ということではなく、父性という意味で)はなんなのでしょうか。著者は言います。幼い子供は母親の元、安全地帯にいます。しかし、そこにとどまっていたのでは外の楽しい世界を見ることはできません。外に出ていけば危険なことにも出くわします。それでもあえて、外にはもっと魅力的なものがあるのだと、背中を押してやるのが父親の仕事だと。さあ、はたして私にそんなことができていたのか。確かにいろんなところに連れて行っていろんなものを見せてはいます。でも子供にとっては父親(もう1人の母親)の元、安全地帯にいることには変わりなかったのではないか。今春、幼稚園に通い始めた長男は、初めて外の世界に出て行き、とまどっています。素晴らしい出会いがそこに待っていることを伝えていきたいと思います。さて、著者自身がまえがきで断っているように、本書の前半は父親力と関係のなさそうな、古い記憶の話がずっと続いていきます。しかし、私にとってはこの前半の方が知的な興奮を味わうことができました。記憶というのが幼い心にどのようにできあがっていくのか。私自身の最も古い記憶は、幼稚園のとき水槽にはまってびしょぬれになったというおぞましいものです。でも古くは、肉親の死や病が強烈な記憶となって残ることが多かったようです。著者は、自伝的な作品を紹介しながら、記憶がどのように形成されていくのかを語っています。紹介された本をすべて読んでみたいと思いました。このように、1冊の本から読書の連鎖が広がっていくというのが読書のおもしろさでもあります。
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今度長女が産まれて父親になるので読んでみた。動物学的な知見や社会学的な見解と、様々な調査結果をもとに父親の役割を説明しており、とても説得力があった。子供が産まれてくる前の良い準備となった。
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幼年期に命の危険を感じることがなくなり、死を看ることもなくなり、闇や野生からも遠ざかった現代。かわいがり危険を回避する母性だけでなく、ストレスや挫折も経験させつつ見守る父性が求められる。
タイトル、サブタイトルともキャッチーなのだけれど、ノウハウというよりはエッセイかな。編集者がつけたんだったら、すごい力量だ。引用豊富で気持ちよく読んでいると、唐突な結論で終わるって感じ。
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(「BOOK」データベースより)amazon
子どもが成長し、社会に出て自分というものを表現できるようになるには、どういう経験が必要なのだろうか。自分たちの頃と比べ、「子ども」が変わったと途方に暮れる親も多い。けれどもちろん、そう嘆く親自身も変わっているのだ。本書では、現在の子育てに欠けているものを明らかにし、特に、子どもが他者、ひいては社会と向き合う際の、父親の役割に注目する。父だけが子にできることを、見直してみる。
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個々の議論や論証は、それなりにおもしろく読めました。ただ、サブタイトルにもなっている「母子密着型子育てからの脱出」という、中心になる主張にまで、論証のステップがとどいていないという印象を受けてしまいました。
自然人類学の研究から人間の文化や社会の起源にせまろうとする試みは、この飛躍をどのように架橋するのかというところに、その成果を左右するもっとも重要な鍵があるように感じます。
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この本を読んで学んだこと
・母性=安心してくつろげる居場所を提供
・父性=その居場所から外へ連れ出すこと
・父親は、学校行事に参加しているだけではダメ。「もう一人の母親になっていないか?」
1.読もうと思った理由
・1児の父(5歳・男)の父として、どう向き合えば良いか、考えていたから
・妻から「子どもと仲良いのは良いんだけど…」「ナメられているというか、一番怖いのは父親という風に認識させて欲しい」と言われたことがあるから
↑と言っても、子どもと仲良くならないと妻の負担が増え、僕への八つ当たりが増えるので、僕としては当然の自己防衛でもある(2.の1点目にも繋がる視点)
2.学んだこと
・子育て環境の変化。核家族化が進み、父親は母親のフォローに回るようになった。(本書では、「もう一人の母親」「やせほそる父性」と紹介されている)
・学校行事に参加しているだけだったり、休みの日に一緒にゲームをしているだけだったり、では「『父親として』子どもと話している」とは言えない。休みの日にどこか連れ出し「父親の視点から」子どもの本音を引き出すことが大切
・子どもに、ストレスを感じること、失敗することもあることを教え、後押し・フォローすることが求められている。ストレスへの耐性がないと、少年犯罪等へ発展することもある
3.どう活かすか
・子どもに仕事の話をする
・子どもに自分の失敗談、どう乗り越えたかを話す
・子どもが嫌がること(字の練習、箸の練習)に付き合う。練習の必要性についても根気よく伝える