紙の本
日本人だったら、こうまで堂々と日本の暗部を書くことはできなかったに違いない。六本木のあの店が、その街角がヤクザや日本の黒幕の持ち物だったなんて
2005/05/30 20:35
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《終戦直後からバブル崩壊までの東京を、六本木にピザハウス ニコラスを構えた〈東京のマフィア〉ニコラ・ザペッティの半生と共に語る》
プロレスファンお馴染みの鉄人ルー・テーズが亡くなって、どれだけ経つのだろう。もう私たちの前には、力道山もジャイアント馬場もジャンボ鶴田もいない。でも、この本の中には、日本がプロレスに沸いていた時代が、たしかにある。
1992年、日本の国籍をもった一人の外国人が死んだ。「六本木の帝王」と呼ばれたただ一人のガイジンの葬儀には、ビジネスマン、外交官、芸能人、外国人、元ヤミ商人、そしてヤクザまでが参列したという。その男の名はニコラ・ザペッティ、警視庁にかつてないほどの部厚いファイルを残し、大金を儲け失った男だそうだ。日本人と何度も結婚と離婚をし、民事訴訟に係わり裁判所で長い時間過ごしたアメリカ人。
戦後は闇市から始まった。そこに蠢いていたのがヤクザであり、その後、日本の黒幕となっていった児玉誉士夫たちだった。そして敗戦で、生きることに必至だった日本人に希望を与えたのが、力道山。彼が朝鮮人であり、娘が北朝鮮にいて、金日成が力道山のファンだったなどは、初耳で、全く知らなかった。おまけに刺されて死ぬ寸前の力道山が、アルコールと薬で体がぼろぼろだったなんて。
その力道山が暴力団東声会の町井と一緒によく現れたのが、六本木のピザ・ハウス「ニコラス」。そのオーナーがアメリカ人で、後に日本国籍を取ったニコラ・ザペッティ。彼は終戦直後に日本にやってきた。アメリカ軍の品物を安価に手に入れそれで安いピザを売る。ただし彼はイタリア料理をそれまで作ったことがなかったというのだから面白い。
でも凶漢に刺された力道山が、体にナイフを突き刺したまま、ニコラスのバーのステージにあらわれ「僕刺されちゃった」とふざけたように腹部を客達に見せる場面、その狂気ぶりには思わず震えてしまう。
上智大学で学び、自民党の研究をしていた著者が様々な資料と、ニックとのインタビューをもとに再構成した東京裏面史。その道の人だけが知っていた様々な情報が、手際よく纏められ詰まっている。あの店のオーナーが右翼のフィクサーだったとか、日本の裁判制度は酷いものだとか、官僚の姿勢は今も変わっていないとか、現在の日本の政治や経済の底流が見えてくる。
戦後は終ったどころか、いまだ戦後の中にいるんだとしか言いようがない。
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戦後日本の裏側を描いた本。
ロッキード事件など政界の腐敗ぶりや、六本木で暴れる力道山など様々なエピソードが盛り込まれている。
いやー世の中きれいごとだけじゃ生きていけないと思った。大富豪と呼ばれる人達は清濁併せ持ってるもんだ。
おすすめです。
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東京のマフィアのボスといわれたニコラ・サペディとのインタビューを軸に、戦後から20世紀までの銀座・六本木の社交場でのあらゆる人たちの交遊録。この国が如何に裏社会と密接に関わっているかということがこの記述からよくわかる。
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裏戦後史。闇ベンチャーでぼろ儲けしたマフィアのお話。
六本木を舞台に政治家、ヤクザ、プロレスラー、娼婦、諜報部員・・・ありとあらゆる人種が集まっって戦後の日本を築き上げてく。
ちょっとワクワクします。
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仕事の先輩から面白いと薦められて読んだ本です。今の六本木があるのは戦後の裏社会が築き上げたのかと衝撃的でした。
リアルで面白いです。
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ニコラ・ザペッティという任侠外人を主軸に日本の戦後アングラ史が軽くくだけた感じで読める本。
別にアングラものが好きって訳じゃーないんだけど、暗黒のトリビアが満載でストレス過積載の状況にピッタリフィットした。やはり歪みってのは面白いものなんだなと思う次第。
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日本の国の裏側の話と、日本で生き延びた大金持ちの外人の話だった。
やはり外人から見るとこの国のおかしさというのが良く見えるのだろう。
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戦後の日本の成長記録。すっげー。東京怖い。力道山の成れの果てが。あと朝鮮系の流入も圧巻。昔の人の東京のイメージはこれなんだろうな。
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ニック何とかという、戦後暗躍?した六本木の外人の話。
興味深いが、ドコまでほんとだろうか。。
まぁ、こういう昭和史もあって良いかな。
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嘘か本当かは別にして良くできた作品だと思う。
その時代を知ってる人も知らない人も
フィクションとしてもドキュメンタリーとしても楽しめる一冊。
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嘘か真か。終戦後の裏社会にぐいぐいと引き込まれます。
怪しげだけどおどろおどろしくなく、ハードボイルド小説を
読んでいるような錯覚を覚えます。登場人物が実名なのが更に
リアリティを持ち上げてどこまでが小説でどこまでがノンフィクションか。
一流のエンターテイメント小説だと思います。翻訳も絶妙です。
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ニコラ・ザペッティという男の半生や六本木という街を軸に、戦後日本の暗部を描き出した作品。取材対象や著者がアメリカ人ということもあり、日米の比較文化論という側面も併せ持っています。
巻末に付属している取材ノートを見るだけでも膨大な取材の上にこの本が成り立っていることがありありと分かり、ともすれば憶測や噂に流されがちなこの手の「ヤミ社会」の話題に一定の説得力を与えています。そして、「東京のマフィア・ボス」と呼ばれたザペッティを話題の軸に持ってきたことによって、彼やその周辺を取り巻くヤクザから政治家に至る様々な人物を余すところなく描くことが出来ているようにも思えます。
一方で、惜しむらくは全体の構成が半ば時系列順、半ばテーマ別といった感じで少し読みづらい所でしょうか。特に話の枝葉が長い分時間が前後する部分が多いような気もしましたし。まぁ、その長い枝葉がこの本の大きな魅力ではあると思うのですけれども。
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凄く面白かった。
日本史の教科書の近代史の章なんか読むよかずっと臨場感があってリアル。そして今までて一番ちゃんと納得できる。
「世の中」とか「社会」ってゆー今まで自分にとってボンヤリとしか見えていなかったものを、クッキリさせてくれた気がする。何か「腑に落ちた」とゆーか。
この本に出会えて本当に幸運だったと思う。感謝。
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10年余り前に出版された時から気になっていた本。先日ブックオフで105円だったのでやっと読んだ。
ニューヨークの貧民街ハーレムで生まれたイタリア系アメリカ人ニック・ザペッティは、終戦直後に占領軍の下級兵士として来日した不良外人である。この本は、そんな彼の目から見た赤裸々奇想天外な戦後史である。登場するのは彼自身付き合いのあった力道山をはじめ一般社会の人間が名前は知っているような政財界の有名人やヤクザ・右翼など日米のあやしげなヤミ社会の面々。日米の国家権力とヤミ社会の魑魅魍魎が跋扈する生々しい終戦後の日本。そんな戦後の混乱期に不良外人ニック・ザペッティは、ヤミ社会での不法ビジネスを軸に商売で大成功と大凋落を味わった。そして1992年72歳、バブルがはじけた時期の東京で波乱の人生を閉じた。
これも又戦後史の名著である「突破者」の著者宮崎学氏が巻末の解説でこう書いている。「日本社会は、今も戦後の混乱期と本質では何も変わっていないのである。」現在もヤミ社会と国家権力との関係は終戦直後と本質的に同じである。
教科書やマスコミ記事のような表面的戦後史ではなくリアルな戦後史がここにはある。この本と併せて、昨年ベストセラーになった孫崎享氏の「戦後史の正体」、上記の「突破者」を読めば本当の戦後史が少し見えて来るのではないかと思う。
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夜の東京を支配する「不良外人」ニコラ・ザベッティが戦後、進駐軍への日本人たちの卑屈な劣等感に始まり、国民の英雄:実は北朝鮮人だった“力道山”との関わり、児玉誉士夫、横井英樹ら闇社会の実力者との交友。そして腐敗した政界との深い関係も暴露!日本の戦後を裏社会から見た日本史が迫力あります。ニコラが晩年、日本に帰化した時には、日本は自信満々で、戦後と異なり米国を馬鹿にするという逆説もまた面白いです。裏日本史のどこまでが真実なのか?参考文献を見る限りどうなのか、興味しんしんです。