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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2002.6
- 出版社: 広済堂出版
- サイズ:20cm/252p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-331-50897-8
紙の本
食の堕落を救え! スローフードの挑戦者たち
著者 小泉 武夫 (編著)
味噌、醬油、納豆、塩辛、日本酒…。日本人のかけがえの無い「食」が、いまピンチに陥っている。悠久の味、「食の世界遺産」を守るために果敢な闘いに挑んでいる人々を、ベストセラー...
食の堕落を救え! スローフードの挑戦者たち
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商品説明
味噌、醬油、納豆、塩辛、日本酒…。日本人のかけがえの無い「食」が、いまピンチに陥っている。悠久の味、「食の世界遺産」を守るために果敢な闘いに挑んでいる人々を、ベストセラー学者が鋭く紹介する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
小泉 武夫
- 略歴
- 〈小泉武夫〉1943年福島県生まれ。東京農業大学教授。専攻は醸造学、発酵学。食物・微生物関連の特許は20件以上。ニッポン東京スローフード協会の顔役を務める。著書に「酒の話」「納豆の快楽」など。
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紙の本
ここに本物の食品を作る人たちがいる。この人たちを見よ!
2002/07/09 15:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:上野昂志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
雪印食品の食肉ごまかし事件もひどかったが、協和香料化学とかいう香料会社の無認可香料事件もひどかった。とにかく主だった食品会社の多種多様な食品に、許可を受けていないさまざまの香料が使われていたというのだから。
だが、問題は、それらの香料が人体に有害かどうかということだけでなく、スーパー・マーケットなどで売られている食品に、それほど多くの香料が使われているということのほうだろう。香料だけではない。発色剤とか防腐剤といったものを含めると、われわれは毎日毎日、何十種類、何百種類もの化学製品を口に入れているというわけだ。そして、いまではそんなふうに人工的に味付けられ、匂いづけられた食べ物に慣れて、何の不思議も感じなくなっている。まさに、われわれの食は、すでに十分堕落しているわけだが、そんな時代にあっても、本物の食品を作り続けている人たちがいるのである。本書は、醸造学・発酵学の権威として、また本物の味の探求者として知られる小泉武夫氏が、そういう人たちを訪ねて、それぞれの食品作りの現場を明かしたものだ。それが実に面白い。
たとえば小泉氏が、最後の晩餐は何にするといわれたら、この白菜漬けに炊きたてのご飯をくるんで軍艦巻きのようにして食べるという針塚藤重さんの話。大量の農薬や大型の農機具を使わせることだけに精力を注いできた日本の農政は、健康な人に薬を押しつけるのと同じだと批判する針塚さんは、まず、小麦の隣に白菜やキャベツを植える共生栽培でミネラルや有機物を十分吸収した白菜を育てることから、その漬け物づくりをする。
あるいは、イタリア人もビックリするような美味しいチーズを作っている吉田全作さんは、チーズは生乳で決まるといって、ホルスタイン種ではなく、十頭のブラウンスイス種と五頭のジャージー種の牛を自分の牧場で放牧している。また、琵琶湖ですしの源流といわれる鮒鮓を作っている北村眞一さんは、昔から家訓のようにしていわれてきた製法を守って、「飯漬け」だけでも一年をかけてニゴロブナをゆっくりと発酵させる。
その他、加納長兵衛さんの醤油にしても、加藤孝明さんのみりんにしても、山本伊助さんの鰹節にしても、みんな素材選びから製品化のどの行程でも、昔ながらの手法に創意工夫を加味して実に丹念な食品作りをしているのには、改めて感嘆するし、物作りということの基本を教えられる思いがする。
彼らの力だけで現在の食の堕落が救われるとは思わないが、消費者が、彼らの食品作りの姿勢を知って、自分の毎日の食のあり方を考えるようになれば、変わる可能性はあるだろう。 (bk1ブックナビゲーター:上野昂志/評論家 2002.07.10)