紙の本
叙述トリックは難しい。そこに挑戦し続ける著者が好き。
2012/04/02 14:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
叙述トリックに尋常なまでの情熱を注ぐ作家、折原一。
叙述トリックは難しい。
著者が心血注いで生みだしたトリック。
しかし残念ながら読者の目は慣れてくる。
そして「もっともっと」を要求する。
だけど…そんなにバリエーションないんだよな、
叙述トリックって。
だからマンネリ化する。
それはある意味、仕様のないことなのだけれど、
新しい作品が刊行されるたびに読者は
あの感動を超える作品を求めてしまう。
そして大概、がっかりする。
それは仕様のないことなのだ。
と、理解していても求めてしまう。
わたしももちろんそんな「求める」ひとり。
だけれども、がっかりはしない。
むしろ愛おしく感じてしまう。
これはある種の病かもしれない。
本書は樹海シリーズの第一作。
叙述トリックなのであらすじは書かない(ネタばれ防止のため)。
先にシリーズの『黒い森』を読んでしまっていたので、
だいたいのトリックは見当がついた。
そしてその通りの展開だった。
でもいいんだ。
刊行順に読まなかった自分が悪い。
刊行順で読んだら読んだで『黒い森』で
予想通りの展開を読むことになるのだろうけれど、
それはまぁ、それでいい。
驚きを求めて読書をするのも一興。
著者の心意気を買って本を買うのも一興。
十分満足した一冊だった。
(ただし、人にはすすめませんが)
紙の本
短いと侮ることなかれ
2002/08/03 22:32
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫版で160ページ弱、長編というよりは中編なのですが、十年前に起きた事件を調査した手記と現在、さらには追う者と追われる者の立場が交互に描かれていて、文章の魔術師にして倒叙ミステリの帝王・折原一のエッセンスが、短いだけにギューッと詰め込まれた感のある作品です。
書名にもある樹海の恐さ、不気味さもよく伝わってきて、あわや遭難か?という場面を読んでいると、背筋が寒くなってきます。
ちょっと時間のあるときに読むのにちょうどよい分量なのですが、短いからと侮っていると、最後にアッと驚かされますよ。
投稿元:
レビューを見る
ちょっと怖かったなあ。短い作品で一気に読めたのは良かったです。折原さんの作品だけに独特の叙述トリックなんですが、もう少しアクロバット的(笑)なトリックがあっても良かったかなと思います。短い作品だしなかなか難しいのかもしれませんが、こちらの期待も大きな作家であることにも変わりがありません。
しかし、樹海と言うのはやっぱり怖いところなんでしょうね?樹海の地図なんてないんでしょうか?誰か調査する人が出てきそうなものだけど。そうじゃないとこの小説が成り立たない?2002.8.4
投稿元:
レビューを見る
面白くないわけじゃないけど、やっぱりこの厚さでは魅力が表現されきれてないかな、というのが正直な感想。
中編かな。この安さで文句言うのもあれやけど…
あっと驚くって感じじゃなくてやっぱり途中でネタ最後まで全部わかっちゃったし、高くても分厚くてもいいからもっと上質のものがいいな
投稿元:
レビューを見る
やっぱりこの「騙し」がなくちゃね。それほど意表をつくものでもなかったけれど、雰囲気がかなりいい。こういうオチにくるか、といった感じ。
投稿元:
レビューを見る
4月25日読了。折原一の書き下ろし、「390円シリーズ」なる薄い文庫のミステリシリーズ。過去にも遭難事件のあった樹海に入り込んだ大学サークルの面々だが、意外な人物が意外な思惑を秘めて接近していた・・・。巻末の煽り文句などから、短いがぴりっと辛味が効いたドンデン返しミステリを想像していたのだが、これは明らかにスカ。つまらん。
投稿元:
レビューを見る
家族を惨殺した作家が住んでいたという家に向かった男は、手記を残し死んだ。その手記を手に、大学生の男女が樹海にはいっていく。
イメージは、スティーブン・キングの「シャイニング」ですかねぇ。
とはいえ、その当事者ではなく、年月を経てやってきた男と、さらに年を経てやってきた学生の視点なので、ある意味映画を見てる感覚にちかいかもしれない。
中盤までは、王道というか、ステレオなんだけど、後半のどんでん返し的な展開はさすが折原一といった感じ。
でも、結局のところ作家一家の事件については…。
まぁ、秘すれば花っていう部分もあるだろうしな。うん。
投稿元:
レビューを見る
「樹海へようこそ」
手記を見つけて樹海へ入るが……。
過去と現在が入り混じる。
ページ少ないから読みやすかった。
158ページ。
投稿元:
レビューを見る
ある大学のハイキングクラブの部員10人は、泊まった民宿でその主人から、地元に昔から伝わる”樹海伝説”を聞いた。樹海の奥深くにある山荘に暮らしていた鬼頭家の主人が家族を斧で惨殺した後に失踪し、後にその事件を調査しに行った者もまた、「遭難記」というものを残して遭難したという話だ。興味を持った部長の児玉俊介やその恋人・坂上麻衣は周囲の反対を押し切り、樹海に足を踏み入れる。
この作者にはお決まりの叙述トリック・・・あるのはあるのだが、軽いというか未熟というかで特に驚きはなく、いつもみたいな濃さを期待していると拍子抜け。中編ぐらいの長さで、物語自体が軽め。調べてみたら、今はこの話に「鬼頭家の惨劇」を加えて、さらに話が付け足されている「赤い森」というのが発売されているとのこと。加筆・修正もされているみたいだし、そっちを読んでみた方がよさそう。会話が安っぽいのも改善されているといいのだけれど。
投稿元:
レビューを見る
樹海に入り込んだ大学のサークルメンバー。部長の児玉俊介、彼の恋人・坂上麻衣、片岡哲也。途中で引き返した野々村直樹。俊介の持つ樹海で自殺した男の書いた『遭難記』。スランプに陥った作家が家族を皆殺しにしたと言われる山荘。樹海をいまだに彷徨っていると言われる作家。麻衣をつけ狙うストーカー。山荘で起きた事件。
投稿元:
レビューを見る
大学のハイキングサークルが樹海近くの民宿へやってきた
樹海の中には10年前に恐ろしい一家惨殺事件があった山荘が今も残っているのだという
サークル部長の児玉とその恋人麻衣は数年前にその山荘を探索に行って遭難してしまった若者の手記を片手に冒険に向うが…
折原一にしてはひねりがないかなぁ…?
しかしホラー感は満載で殺人のあった山荘で小説家の書き散らした紙を拾うところでは思わずゾクっとした
ラストもやや不満
普通に殺人鬼と対決して倒してハッピーエンドでも良かったのでは…
途中で野々村がオネエ言葉になるところは一体なんだったのか??
投稿元:
レビューを見る
予想を裏切らなかった!って言うか何もかも予想できた通りに話が進んだ。読み終わった感想は「でしょうね」だった。 文章は読みやすく、良かった。 長編を読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
樹海シリーズの一作目。150Pほどの中編小説。
山荘で起きた惨劇に興味を持った大学生、その事件を追っていくうちに彼らに災厄が・・。
この作品だけでは事件の全貌が解決せずぱっとしません。 シリーズ物を見越してということでしょうがあまりに疑問点が残り過ぎます。
手記と主人公、そして犯罪者の視点を複雑に使い分けるのは折原氏らしく好ましいですが今作の容量では如何せん厳しい。 ラストの展開に大きいものがあるのでもうちょっと話を膨らまして描いてもよかったかもしれないです。 尤もストーリーの破綻はしてないので手軽に数時間で驚きを楽しめるという意味では有りかもしれません。 ミステリーよりも樹海でのパニックホラー感が強く出ています。