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商品説明
恐ろしきは人のココロ。ふとしたきっかけで生まれる家族、親友、恋人に対する疑念や邪推。それらが引き起こす13篇の、思わずゾクッとするストーリー。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
心的外傷 | 7-34 | |
---|---|---|
ガラス玉遊戯 | 35-58 | |
犬を飼う女 | 59-86 |
著者紹介
阿刀田 高
- 略歴
- 〈阿刀田高〉1935年東京生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。国立国会図書館勤務を経て、作家に。著書に「来訪者」(日本推理作家協会賞)、「ナポレオン狂」(直木賞)、「花あらし」など。
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紙の本
衝撃は感じない。でも、自分の家に帰ったような安心感がある。中学生がでてくる「幸福ゲーム」が我が家にピッタリ
2004/09/30 20:23
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
13の短編がおさまっている作品集で、2001年と2年に書かれたもので構成されている。黒いカバーだから、ダークな話、というわけではない。収録作品数が多いので、記憶に残った作品だけを紹介するが、冒頭の、病床の姉の看護の場で繰り広げられる義兄と妹の痴態。遠い日の思い出が最後の一行に凝縮される「心的外傷」、話自体は好きではないが、ラストは見事だなあと思った。正直、固まったといっていい。もっと技巧を凝らすことは出来るだろうが、ストレートでいて含蓄がある。
最後に残ったパンを買われてしまったことがきっかけで知り合った男女の恋の行方「犬を飼う女」は、逆に最後まで腑に落ちなかった話。多分、速読の弊害というか、同時期に鈴木光司『枝の折れた小さな樹』を読んでいたせいかもしれない、スパッと割り切れないと、話が混ざってしまってぴんと来ない。でも、何回か読み直せば、きっと手を打って納得するのだろう。
自分の前から姿を消した恋人を、忘れられずにいる男が、友人の一言を頼りに動く「鈍色の海」は、恋愛に不器用で、いつまでも過去を忘れられない男性には納得が行く小説。病院に向う途中にある喫茶店で知り合った二人の男が、心の赴くままに自分の犯した犯罪を告白する「告白願望」は、仕掛けの予感がする点が不満だが、読みやすい。
双子であることを知らされた一方が、相手のことを知ろうと探り合っているうちに出遭う地方の人の悪意「遺伝の研究」も、じっくり読み直したい作品。田舎の風情が良く描けていて、皆、何となく原風景みたいなものを思い浮かべてしまう気がする。中学生の従妹同士が思いついた、ちょっと救いのある賭け事。それが二人の死までついて回る「幸福ゲーム」。最後は、人間の嫉妬を主題に、じわっと肉親の愛の怖さを描く「愛はいつまでも」。
どれをとっても納得である。作品によっては、じっくり考えなければ分からないものもあるが、どれも職人芸の奥深さみたいなものを感じさせてくれる。一読した印象は、決して強くは無い。現代人のドラマというよりは、もっと普遍的なものを読んでいる気がする。ある意味、同時に読んでいた鈴木の短編集にもいえるが、切ったら血が出るような現在を扱っている活きのよさみたいなものは感じない。
池永陽『コンビニ・ララバイ』や重松清、山本文緒の作品を読んだときの感動は無いのである。割り切れてしまうことの、簡潔であるが故の限界。しかし、いつ、どういう読み方をしても満足が出来るという強み。
個人的には、麻薬のような底の知れない魅力がある池永や山本のほうが好きだが、阿刀田の作品を息抜きにたまに読むと、その簡潔さが心地よく、やはり職人芸は良いなあと思ってしまう。中毒になる怖さはないが、安心して帰ることの出来る家みたいなものかもしれない。