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紙の本
キワモノ(たち)でよかった?んだよね。たぶん。
2003/02/19 00:45
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投稿者:KANAKANA - この投稿者のレビュー一覧を見る
『文章教室』『タマや』『小春日和(インディアン・サマー)』『道化師の恋』と書かれてきた、いわゆる「目白連作」の最新作…らしい。というのも、私が金井作品を読むのはこれが初めて。あとがきで『小春日和(インディアン・サマー)』の十年後を書いたものだということを知って、あわてて書店に走ったくらいだ。
何の予備知識もなしに飛び込んでしまった「桃子・花子・おばさん」の世界だったけれど、すべての路線からこぼれてしまったキワモノ(たち)がかっとばす悪罵の数々が、そうとう小気味よい。
女三十、もう少しハングリーに育っていれば、とうの昔に結婚に向かって滑りこんだだろうし(できれば玉の輿で。でもそうでない人もあきらめてではなく)、もうわずかでも小金持ちだったら、誕生日に母親から説教—高学歴で定職にもつかないで結婚もしていない三十女は、心構えとして、爪に火を点すようにして少しでも貯金しておかなきゃ、いざっていう時に、自立した女とかなんとかって大言壮語できないよ—を頂戴することもないだろう。
たしかに定職なし、彼氏なしの私・桃子ではあるけれど、新潟で旅館の女将をしている母も、くせものだ。桃子さんは東京でどうしているのかと訊ねられたら、ブラブラしてます、なんて、恥しくって答えられやしないさ—と「地元密着型おふくろ」丸出しで、桃子と小説家のおばさん(桃子のおばさん、なので実の妹)を叱咤激励しては実社会へ立ち返らせようとする任務を全うするかと思いきや、「無職の趣味人、ただし資産家」と結婚して旅館をたたむといきなり宣言する。
また、前作でいみじくも斉藤美奈子さんが「少女小説の仕返し/恩返し」で解説していたように、ヒロインは数奇な運命にもてあそばれる(多くは父母との死別ないし離別)少女小説の型を踏襲している。
桃子・花子の場合、どちらも父の影は薄い。いやもとい、立場がない。桃子のおやじは彼女が子どもの頃離婚して、フラワーアーティストの恋人(男性)と暮らしているし、花子のおやじは自分の娘がウェイトレスのアルバイトをするとは若い娘の「転落」だと説教をたれるわりには、セクハラ疑惑で編集部をとばされたり、ついには家を出奔してしまう。
結局、人生からいつもみごとな肩すかしを喰うのが、彼女(たち)の日常なのだ。
そして私は覚悟した。だれがまともな路線をいっているのかは、どうせだれにもわからない。キワモノでいこう、と。
だってあと何十年もすれば、キワモノだろうが、小市民だろうが、どうせきれいさっぱりこの世からいなくなっちまうんだから。