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商品説明
育児サークルへの嫌がらせの犯人は? 連続殺猫事件の真相は? 仁木探偵事務所に持ちこまれる様々な謎は、美少女安梨沙の助けで鮮やかに解決する。「アリス」と猫とティータイムを愛する名探偵登場。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
加納 朋子
- 略歴
- 〈加納朋子〉1966年福岡県生まれ。文教大学女子短期大学部卒業。92年「ななつのこ」で第3回鮎川哲也賞受賞、作家デビュー。著書に「月曜日の水玉模様」「沙羅は和子の名を呼ぶ」などがある。
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紙の本
さまざまな家族の関係が浮かび上がる一冊
2002/12/18 20:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山村まひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『螺旋階段のアリス』の続編。
サラリーマンだった仁木順平が会社のリストラ対策制度を利用して探偵事務所を開業して一年。ついに会社と縁が切れる時が来た。
泣いても笑っても、探偵として収入を得ていかねばならなくなった仁木。父親との意見の対立で家を出て、仁木の娘・美沙子と同居することになった押しかけ助手の安梨沙。
2人がそれぞれの思いを抱えつつ、児童館を利用した親子サークルへのいやがらせ事件や、猫好きたちの集まるホームページをめぐるABC連続殺「猫」事件、そして、産婦人科病院の密室からの「嬰児誘拐」事件に関わってゆくことに…。
探偵モノという言葉では語り尽くせない不思議なシリーズだなあ、と思います。この一年の間に、仁木は「万人に共通する価値観などというものが存在しない以上、つまらない事件というものもまた、ありはしない」という結論に到達しました。ある人にとっては「人間の子供が誘拐されるより、高価な宝石が奪われるより、一匹の犬がいなくなってしまうことの方がよほど大事件であることだってある」と仁木は思います。
仕事として収入を得るために「犯人を見つける」「事件を解決する」。けれど、それだけではなく、その事件の陰にある人々の「想い」を拾い上げる。なぜ、事件はおこったのか? ということを深くつきつめてゆく。このシリーズは、そういう物語なのじゃないかと思います。
今回は「家は家族を写す、この上なく正確な鏡」という台詞が示すとおり「家族」「親子」がテーマの一冊でもあります。
安梨沙と父親の問題。そして、仁木と娘の美佐子の関係。あるいは、仁木と息子・周平との関係。さらに、事件にからむさまざまな家族の関係が、ひとつずつクローズアップされてゆきます。
ひと山越えた登場人物たちの、新しい明日を暗示させるラストに、次回作への期待をこめて…。
横井司氏による「加納朋子論」、加納さんへのスペシャル・インタビューに、著作リストもついたお得な一冊です。
紙の本
収録作「鏡の家のアリス」に込められた、第三の鏡について
2002/11/15 20:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ささらさや』に、書評を投稿した日から一年。満を持して、『螺旋階段のアリス』の続編が刊行されました。
私にとってこの一年は、多くの変化を経験した一年ですが、加納氏の作品に魅入られている私自身は微塵も変わることがなく、さながら心の一部に加納氏の作品を「ほしがる・よみたがる」受容体を焼き込まれたかのよう。氏の作品の輝きをもってすれば、そのくらい造作もないことなのでしょう。
事実、加納氏の読者になるということは、年に一度だけ姿を見せる泉に取り憑かれたようなものです。ここで泉の水を口にすれば、また来年まで陽炎のゆれる荒野をさまよい続けることになるのですが、それでも既に「選択」することなど叶いませんから、この先一年、渇きを抱えて生きることになります。
宮部みゆき・若竹七海・光原百合の各氏の作品は、それぞれ「映像的」であったり、「優しい毒」が含まれていたり、「愛情」に特化していたりと、世界観こそ異なりますが、「独特の魅力的な女性を描く女性作家」という一点で強く共通しています(単に、私の好きな作家さん、というだけの話かもしれませんが)。
加納氏も、同様に氏自身にしか書けない「魅力的な女性」を描く作家です。北村薫氏という沃野から生まれた輝きであるため、ともすれば「日常の謎」に含まれる作家として紹介されますが(そして、もちろんそれは正しく、実に魅力的なミステリを読ませるのですが)、充実した表現力を備え(かつ語るべき事柄を抱く)、現代の日本を代表する作家の一人であることも間違いありません。もし、加納氏の作品に触れたことが無いのであれば、それは人生にとっての損失でさえあるかもしれません。是非、加納氏の作品世界に足を踏み入れることをオススメいたします。
前作『螺旋階段のアリス』では、「夫婦」と「アリサは誰か?」が語られましたが、本書では、「家族」と「大人になるアリサ」についての物語となっています。6つの短編で構成された本書は、ゆるやかに時間的なつながりがあるものの、短編も作品として独立していますので、一章だけお読みになることも可能です(しかし、徐々に大人になっていくアリサを追うことができますので、やはり収録順にお読みになるのがよろしいかと)。
どの短編も、心地よい切れ味の作品揃いですが、特に「猫の家のアリス」と「鏡の家のアリス」が私には印象的でした。中でも、気づかずに自分自身が抱えている、あまり望ましくない「先入観(あるいは偏見)」を照らし出す「鏡」としての機能を果たす、後者に衝撃を受けました。
加納氏は、「主人公アリサの鏡像的な、由理亜(ゆりあ)」を登場させ、主人公の探偵氏の息子の恋愛模様を描くことで、「父親」としての顔を描き、また「家族を映す鏡のような、家という存在」を描いたのですが、私には「第三の鏡」である「読者を照らす鏡」が隠されているように思えてなりません。
新作を発表するごとに、技の冴えを見せる加納氏の到達点、ぜひお楽しみください。
紙の本
少女から女へ、天使から小悪魔へと変わっていくアリスがいいですね。ほんの少しの毒が、とっても女らしくて、これは女性じゃなきゃ書けないぞ、って思ったりします
2005/09/27 21:37
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「仁木探偵事務所に勤める20歳を迎えたばかりのアリスこと市村安梨沙。仁木とアリスのコンビが、〈主婦道〉のメンバーの悩みを解決する」推理小説。
可愛いらしくて、頭が良くてというアリスが、自分を主張し始めました。天使が、ちょっと普通の女性になってきて、話がぐっと身近になった感じがします。
市村安梨沙は20歳になったばかり、でも誰が見ても高校生くらいにしか見えません。で、渾名はアリス。今は、実家を出て探偵事務所の所長仁木順平の長女美佐子と暮らしています。そんな彼女が心配しているのが事務所の経営状態。順平が利用した転身退職者支援制度の支援も、一年経った時点で終るのです。それなのに、仕事がありません。そんな2人が訪れたのが、アリスの伯母である篠原八重子の家。彼女はそこで〈主婦道〉の教室を開いているのです。
教室の主婦たちのなかでも、一番やさしそうな女性。彼女が参加する児童館で毎週行われる母親の会、そこで怪しい事件が「虹の家のアリス」。前に事件を解決したことがある産婦人科病院で起きた乳児誘拐、調べれば密室の様相が「牢の家のアリス」。〈主婦道〉の仲間で、猫好きで有名な早苗。31歳で独身の彼女が見ているHP、そこで報告される連続猫殺害事件。クリスティーの名作『ABC殺人事件』を連想した彼女に襲い掛かる悲劇「猫の家のアリス」。
現在家出中のアリスが実家に着替えを取りに行った時、出会ったハウスキーパーの蕗子からの依頼は、変わってしまったアリスの性格の謎を解くこと「幻の家のアリス」。仁木の息子周平の婚約者にストーカーが。それは以前、彼が付き合っていた女性だった「鏡の家のアリス」。長男に続いて今度は美佐子まで結婚しそうな気配、そんな仁木の元に殺されそうな女性から依頼が「夢の家のアリス」。
今回は、順平が表に出て、アリスは黒子になった印象です。それには理由があって、それがアリスの本当の姿に関係があるのでだが、それは小説を読んで理解してもらうのが一番。可愛い少女、そんな印象しか与えていなかった彼女が、すでに大人の仲間入りをし、女であることを主張し始めました。少女から女への軌跡が、少し子悪魔的なところが北村薫の円紫師匠シリーズとは違います。これは女性ならではの視点でしょう。
巻末の横井司の加納朋子論「つながることへの信頼」は、かなり本格的な論考です。ただしあまりにマニアックで、初めて加納の本に出会った読者には難しいかもしれません。なかに北村薫への言及があって、それは加納自身も認めているところが素直でいいです。ただし、表題作を読み終わったとき、わたしはが思ったのは宮部みゆきですね。無理せず、すなおに松尾由美や若竹七海といった同世代作家にも触れて欲しかった気がするのは私だけでしょうか。
インタビューではアニメ少女だったというところが意外で、特に最後の挨拶は加納の人柄がよく出ていて、ファンになる人も多いことでしょう。ただ、インタビュアーが加納に遠慮をしすぎてしまって、何処にも笑いがないのは失敗です。あまりに奇麗事に終始し、距離感を感じてしまいます。せめて、同じシリーズの折原一『倒錯のオブジェ』の対談のような親密さが欲しいものです。結局、作品の話で終始して、加納が見えてこなかった気がします。