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商品説明
文学者、哲学者、政治家などの英語の名言を題材にしたコラム集。ウィットと人生に対する深い示唆にみちた言葉の英和対訳に、含蓄のある解説を添える。人生の本質が見えてくる。『Asahi weekly』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
小野寺 健
- 略歴
- 〈小野寺健〉1931年横浜生まれ。東京大学大学院修士課程修了。現在、横浜市立大学名誉教授、日本大学講師。英文学専攻。著書に「イギリス的人生」「英国文壇史」、訳書に「オーウェル評論集」など。
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紙の本
時を超えた言葉たち
2003/11/25 21:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
本を読んでいると、これは私のためにある言葉ではないかと思う表現に出会うことがある。線を引くだけでは足りず、紙に書き写して、机にはりつけて、何かにつけて眺める。友人からのメールでも、ふともらった言葉でも、気になるとその日付と誰がどこで言った言葉だったかまで書いてまたはりつける。ちょっと耳が痛いメールも、ちょっとしたはがきでも…。
この本はというと、1冊丸ごとそういう表現がつまっているのである。書き写そうとしたら何日かかるかわからない。著者の選んだ英語の名言、その対訳、そして、その言葉に添えられた著者の解説と、一粒で三度のおいしさを味わえる。付箋が少なくとも3種類は必要である。選ばれた言葉に、日本語訳に惹かれ、著者の解説の最後の一行に膝を打ってしまうから。一読しても使い方を考えたくなる。例えば、今流行りの占いの本のように、意識を集中させてページを開き、出てきた言葉が今日の教訓とか。
著者の半分も生きていない自分がこんなことをいうのはおこがましいと思うのだが、著者は、言葉を大切にして生きてきた人だと思う。英語でも、日本語でも、受けた言葉を噛みしめ、伝える言葉に気を遣い生きてきたのではないか。安易にカタカナを使わない姿勢にそんな生き方が現れている気がした。(eccentricも奇矯と訳すのだ!)日本語訳そのものが力を持って入ってくる。つい、英語は読めなくてもいいと安心しきってしまうくらい(それでは、残りの、いや、最初の3分の1の楽しみを放棄してしまうから、ちゃんと読めるように取り組むつもりなのだけど)。
私にとってもっとも大きな楽しみが、著者の解説だった。これがただ名言が並んでいるよりも、数倍の彩りを与えてくれる。「70代の名誉教授の名言の解説」という言葉では、この解説は全く括れない。
「この人生では、批判するなら具体的な対抗策を提示すること、あるいは自分自身の仕事をしてみせること−つまり、こちらも批判される材料を提示する−という形をとりたい。とにかく、収拾の仕方を考えずに始めてしまって、あとは火がひろがるばかりというのはみっともない」(p.5)と来たので、頭をたれて頑張ります! と思っていると、次の行で、「ただし恋だけは、そうなるのが自然なのですね。初めから収拾策を考えているようでは恋とは言えない。人生には計算や理性を超えるものがあることを教えてくれる、だから、ほんとうはやっかいなのだ」と締めるのである。何気に恋愛に関する話が多い。見開き半分がちょうどの量で語り過ぎてないだけに、奥行きが感じられ、講義を聴いてみたいのはもちろん、お茶会に呼ばれてみたいような気持ちになった。また、年齢も性別も全く違うのに、感情を揺さぶられ、共振させられたりもした。読み手を動かそうという変な色気はない文章なのに、いや、だからこそ、つい動かされてしまう。
最後のパラグラフ、最後のセンテンスにはっとさせられることも多い。例えば、「表現は、わかりやすいことがいちばん大事なのだ。分かりやすい言葉は、少なくとも、無意味な言葉の虚しさをはっきりさせる」(p.33)とか。
元の名言すべてに触れて、理解するには、相当な時間と教養が必要だと思う。今の私の教養では到底届かない世界である。この本は、そんな時空にある言葉たちを見えるところまで運んでくれたものような気がする。あるメッセージを伝えるために。
We are always getting ready to live, but never living.
From “Journals” by Ralph Waldo Emerson
われわれはたえず生きる準備はしていても、生きてはいない。
ラルフ・ウォード・エマソン (p.1)
まだ生きてもいないのだから、死ねやしない! 自分を精一杯生きたいものである。