紙の本
骨董の世界は胡散臭いもの、そう思い込んでその世界に触れずに来た私ですが、その認識を変えたのがこのシリーズ。あの宇佐美陶子も40歳になりました
2005/09/26 20:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
旗師・冬孤堂シリーズで、40になったばかりの宇佐美陶子が主人公です。色々派手なパフォーマンスが得意な女白浪とまで云われる彼女が登場する短編が三つと、中編で構成された連作集。
他の作品にも登場して、陶子を利用するというか、彼女に頼る警察、練馬署の根岸、四阿なども登場するお馴染みのスタイル。
競り市の会場で、彼女の落とした品物を譲れと迫る同業者が洩らしたのは、宇佐美陶子をこの世界で教えたともいえる弦海礼次郎が自殺したということだった。目利きとして一流だった男の晩年に何が「陶鬼」。陶子のもとに老人が持ち込んだのは、何ともいえない笑みを浮かべた重文級の埴輪だった。その老人が自殺した「「永久笑み」の少女」。
銀座の貸し画廊で見かけた無名の作家が開いた友禅の個展。作品に惹かれた陶子は全作品を買い取ることにしたが、その作家からの連絡が途絶えた「緋友禅」。陶子の馴染みの客が亡くなった。納めた品ものを引き取って欲しいという妻の元を訪れた彼女が、自分が納めた陶器などとともに見つけたのは円空物だった「奇縁円空」
トリックは、ミステリとしてのものではなく、あくまで旗師や贋作者たちが仲間や客を引っ掛けるもの。作者オリジナルの技もあるのでしょうが、多分プロの世界では有名な技術が使われている気がします。そういった紹介が少しも陳腐ではなく、ああそうかと感じさせるのは北森の上手さでもあるし、このシリーズにとって重要なのは、そういう小手先のトリックではなく、やはり古美術の世界に住む魔だからでしょう。
一般的な美術はともかく、縁がないと思っていた骨董の世界の面白さを私に教えてくれたのは、実は白州正子や柳宗悦といった、如何にも訳知り顔のスノッブが好みそうな御仁ではなく、実は北森の『狐闇』『触身仏』などのミステリでした。しかし、この本を読みながら、こんなに宇佐美陶子って、クールだったかなあ、と何度も首をひねったものです。ともかく格好がいいです。
彼女の年齢は「陶鬼」の中で、軽く触れられていて、それでは40を過ぎたばかりなのですが、そして現代の40代の女性が若いのは分るのですが、やはり30代後半くらいがしっくりする気がしますがどうでしょう。持ち味は全く全く違いますが、これを読みながら何度か村田喜代美『蛙が見たらひとになれ』が頭を過りました。村田の作品とあわせて読むと、骨董の世界の奥の深さがわかって、あなたもその世界の虜になること間違いなし、そういうお話です。
装丁 大久保明子、千總 型友禅伝統図案集『友禅グラフィックス1』(グラフィックス社刊)です。
北森の経歴に1961年生まれ、山口県生まれとあります。萩焼についての知識は勿論でしょうが、骨董を扱った小説を書こうというのも、案外出身地が影響しているのかもしれません。骨董品の来歴もですが、こうやって見ると、作家のそれも興が尽きませんね。
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陶子は、無名の作者のタペストリーに惚れこみ、全作品を買い上げることを即決。しかし作品は届かず、作者のアパートを訪れた陶子は彼の死体を発見する。半年後、陶子は意外な場所でタペストリーを再び目にする……。
【感想】
http://plaza.rakuten.co.jp/tarotadasuke/diary/200506040000/
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陶子は、無名の作者のタペストリーに惚れこみ、全作品を買い上げることを即決。
しかし作品は届かず、作者のアパートを訪れた陶子は彼の死体を発見する。
半年後、陶子は意外な場所でタペストリーを再び目にする……。
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陶子は、無名の作者のタペストリーに惚れこみ、全作品を買い上げることを即決。しかし作品は届かず、作者のアパートを訪れた陶子は彼の死体を発見する。半年後、陶子は意外な場所でタペストリーを再び目にする……。
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友達に借りた。
面白かったぁぁ。
推理小説なんだけど、ちょっと異色で面白い。
骨董の世界って面白い。
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旗師・冬狐堂シリーズ短編集。
「狐罠」「狐闇」と壮大な悪と闘ってきた陶子が好きだったので、ちょっと短編集だと物足りないかも・・・
でも、骨董業と言う非日常の世界で、颯爽と生きる陶子がやっぱり格好良かったりします。
ミステリーと言うジャンルとも、ちょっと違う謎解きが、今一番のお気に入りです♪
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店舗をもたない古物商(旗師)の冬狐堂・陶子シリーズ。
短編集。
古物(萩焼、埴輪、友禅、円空仏)の裏側にある人間関係を解いていく。
面白い。
やっぱり、陶子は芯が一本通った、素敵な女性だと思った。
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『冬狐堂』シリーズ第3作。陶鬼、緋友禅、永久笑みの少女、奇縁円空の4短編を収録。
相変わらず、骨董の取引を通してトラブルに巻き込まれまくる宇佐見陶子。しかし、それもこれも、一つ一つの古物には関わった人々の半生が映し出されているからなのかもしれない。かつての目利きの師匠とも言うべき男の死は、陶子を男の過去をなぞる旅へといざなう。
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骨董の世界に跋扈するのは魑魅魍魎、狐と狸の化かし合い。いつもトラブルに巻き込まれる陶子だが、?を滲ませながら果敢に核心を求めていく姿が気持ち良い。奇縁円空以外は、話の構成もシンプルで、事件の謎を解く鍵としての骨董ネタが秀逸と思いました。特に、「永久笑みの少女」では幻想的とも言える未発掘の古墳に入る瞬間の描写が事件に絡んでくるのが良かった!これまた、オススメマークはつけていませんが、ものすごくオススメ!なんです〜。
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久しぶりに北森鴻に手を出してみた。
やっぱり大好きだわ。「香菜里屋」シリーズの雰囲気ももちろんすきだけど、この冬狐堂シリーズは的が骨董品ってきちんと絞られてるのがいい。
読んでてまったく苦にならない文章力と、川端祐人みたいな、自説をきれいに展開できる辺は…大好き。
もっと読みたいよ。
とりあえず、かなりや買おっかな。。。
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「冬狐堂」シリーズ短編集。短編とはいえボリューム感たっぷり。
殊にこの本の半分くらいの量を占めている「奇縁円空」が凄い! ミステリとしてももちろんだけれど、他の部分がそれ以上。仏像などに関してはこれっぽっちも興味がなかったのに、めちゃめちゃのめりこんだ。読後感も、長編ひとつ読み終えたくらいの感覚。ただしこれは前作「狐罠」「狐闇」の後で読むべきかな。これといって支障はないけれど、登場人物への感情移入の度合いがまったく変わってくると思うので。
一方、ミステリに重点を置くなら「『永久笑み』の少女」。比較的骨董に関する薀蓄も軽めで、初心者にも読みやすいかも。物語の転がってゆく過程が、かなり巧妙。そう来るか! と思わされた。
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冬狐堂シリーズの短編集。
師匠の一人であった弦海礼次郎の自殺と萩焼との関係を描いた「陶鬼」
伝説の掘り師から持ち込まれた埴輪、その微笑の背後にある哀しい事件「「永久笑み」の少女」
陶子が売買契約を結んだはずの糊染めタペストリーが消え、製作者は殺された。品物の行方を捜すうちに陶子はある着物と出会い。。。「緋友禅」
故人のコレクションの処分を頼まれた陶子はそこである円空仏と出会う。しかしこの円空仏には秘密が隠されていた「奇縁円空」
の4編収録。
今回はまた扱っている商品がバラエティに富んでいて面白かったです。
萩焼、古墳の盗掘、友禅染め、そして円空。
どの薀蓄も楽しませていただきました。
陶子への悪意も深くはなくて一安心。
最後の円空は中編くらいの長さだったので心配したのですけど、痛い目をみなくてよかったぁ。
この中ではやっぱり「奇縁円空」が一番引き込まれたかな。
仏像、わかりませんけど見るのは好きです。
「永久笑み」も構成が変わっていてよかったです。
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「陶鬼」「永久笑みの少女」「緋友禅」の短編三つと「円空(ごめん忘れた」の中編一つ。 タイトルにもなっているように「緋友禅」が色彩が見えるような鮮やかさをもって、調子よく読める話。 中編のほうが当然話は長いんだけど、入り組みすぎていて難しい!銘木屋が大槻さんていう名前だって初めて知ったのに、殺される役でした。あらら。
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冬狐堂シリーズ。今作は4編から成る短編集。
久しぶりにこのシリーズを読んだけれども、やっぱり面白い。短編集でも一つ一つ読み応えあって、読後感大満足。陶子のキャラも好きだし、骨董とミステリがきちんと繋がっているところがこのシリーズの魅力。このシリーズや蓮杖那智シリーズを読んでいるうちに、骨董美術やら民族学やらの知識がやたらと増えたし、魅力も感じるようになった。
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前の2作は長編だったが、
これは4つの短編から成っている。
陶鬼
独特な萩焼・秋霜萩の茶碗
「永久笑み」の少女
古墳から発掘された埴輪
緋友禅
糊染めという技法でできた緋色の友禅
奇縁円空
円空仏の贋作・鬼炎円空
それぞれの作品で、陶子は事件に巻き込まれていく。
というより事件を呼び寄せているような気がする。
周りにいる人々が何人も死んでいく。
そのため、友人の硝子には「トラブルメーカー」と言われてしまう。
骨董の世界の話にもようやくついていけるようになった。
それでも陶子の心を理解するまでには至らない。
真作、贋作。
作り出す者の執念を理解することはできそうにない。
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『瑠璃の契り』を会社の人に薦められて読んでから、時々無性に読みたくなる作家さん。まだまだ読んでないのばかりですが。乾いた世界で渦巻く湿った感情。けっこうどろどろしてて怖いところもあって、前作の人形関係は私最初怖くて再読できませんでした。今作も、萩焼き茶碗に…とか若干怖いですが、それよりも、美術品・工芸品に対する情熱と言うか純粋な思いが強くて切ない気持ちになります。そこをぐっとおさえて商売したり探偵したりする冬狐堂。読むうちに彼女に惹かれていきます。