「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
ベストセラーばかりが本屋に並ぶ時代にホントに読みたい本に出会うには? 本探し術、読書術を本のエキスパートが伝授する! ベストセラーを徹底分析するとともに、究極の本作り、こだわりの書店などを紹介。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
永江 朗
- 略歴
- 〈永江朗〉1958年北海道生まれ。書籍の輸入販売会社に勤めたのち、フリーのライター兼エディターに。ライフワークは書店のルポルタージュ。著書に「不良のための読書術」「消える本、残る本」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
ベストセラーになれない本の売り方
2003/04/21 22:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のライフワークは書店のルポルタージュらしい。リアル書店、オンライン書店とルポしているが、結局、二大取次(日販、東販)にパラサイトした体質から出版社、書店が方針転換しない限り、この業界は変らない。それはアメリカから自主独立を模索するのと同様、ある覚悟が要求される。
人文、社会科学を背負った取次、鈴木書店は倒産したが、二大取次をアメリカに擬して考えると、アメリカが戦後日本を支え、それによって未曾有の繁栄を謳歌したのは間違いなく、そのアナロジーが許されるなら、大取次が全国均一ザービス網で、再販維持制度にも守られ、新聞の宅配網、郵政のアナログ網と同様、戦争には負けたが、出版流通は維持、発展し、そのシステムは役割を果たした。巧妙に1940年体制は象徴天皇制のもと、いまだに継続していると言っても過言ではない。
だが、『新聞は生き残れるか』(岩波新書)が今月下旬に発売されるらしいが、日本郵政公社も発足と、ちょっぴり、変化が始まっているらしい。
新潮社も新書を創刊したが、新刊が店頭に並んでいるのは平均一週間ぐらいで、たった、一日で消えてしまう本もある。ところが、新書、文庫は「今月の新刊」「来月の新刊」と事前にラインナップがはっきりしているので、書店のほうも各出版社別の新書、文庫スペースを確保した棚構成をやりやすく、単行本の短命化に比して、延命化が可能だと、それが、新書、文庫ブームを呼び込んでいる。と著者は概略、述べる。
昔から、通勤、通学電車で気軽に読めることが大きな原因であろうが、携帯電話のモバイル性がアナログモバイルの便利性の記憶を思い出させ、携帯族を惹きつけたのかもしれない。
『村上春樹ロングインタービュー』(文学界2003年4月号収載)で、聞き手が「海辺のカフカ」は一冊にしようと思えば一冊にできた厚さかもしれないのに、これは途中から二巻にするぞという形で書かれているのですかと、問われ、春樹さんは「いや、そんなことはないです。最後まで一巻でいくか二巻でいくか迷ったんですよ。ただ、僕の読者は、通勤電車で読んでる二十代三十代の若い人が多いんですね。一冊にすると重いから一冊は勘弁してくれと言う人が多くって、それで止むなく二巻にしたんです。偶然です」と答えている。結構、細かい事まで、作家は気配りしているのだと、驚いた。
先日、日刊紙で世界各国の図書館事情を日本と対比して論じていたが、他の先進国に比して余りに図書館の数が少なく、お寒い状況であったが、逆に言えば、本屋網が全国津々浦々に完備されていたことの裏返しだったのだろう。一方で本屋さんが沢山、消えているのなら、他方で図書館を増やしていく公共投資を政策として取り上げてもコンセンサスを得られるのではないか。
そんなロビー活動を特に専門分野の出版社は戦略的にやる必要があるのではないか。そのためには完備した出版情報誌を必要としない日本の出版流通システムは改変されなければならない。著者は真っ当な出版情報誌創刊を提言しているが、大賛成である。
ただ、そのためには、本の印刷・製本が完了してから、発売まで、最低でも二ヶ月ぐらいの時間をおいて欲しいと言う。その間に事前の情報が充分行き渡るようにするわけである。当然、二ヶ月も商品を寝かせて置けない、潰れちゃうという出版社も出てくるだろう。そういう出版社は出版企画を担保にして社債を発行して資金を集めなさいと著者は言うが、難しい。
でも、社債発行など、資金調達を読者からといった方向性こそがパラサイト体質から脱却出来る意識を芽生えさす。そんな緊張感があれば、きっと、素晴らしい本が生まれると思う。