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商品説明
外国でうっかり口にすると恥かしい言葉のあれこれから、巨乳ブームの社会史、文化に貢献するネット不倫まで、知ってウフフの26篇。『オール読物』連載をまとめる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
鹿島 茂
- 略歴
- 〈鹿島茂〉1949年横浜市生まれ。東京大学大学院修了。現在、共立女子大学文芸学部教授。「馬車が買いたい!」でサントリー学芸賞、「子どもより古書が大事と思いたい」で講談社エッセイ賞受賞。
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紙の本
あのサルトルを、あたかも引きこもりの人間関係拒否症の人間では、とすんなり書くあたり、とてもこの人の柔軟性は団塊の世代らしくはなくて、好きだよね
2003/07/13 21:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いい装画だなあ、なにかデジスタのオープニングのアニメをやっている近藤 聡乃を思わせる、ちょっと退廃って感じの装画はジョルジュ・バルビエ、各話を飾るちょっとユーモラスな挿画は岸リューリ。個人的に、この色使いは無いんじゃあないの、と思う装幀担当は坂田政則。かなり目立つ本ではあるのですよ、タイトルとも。
全体は三部構成、ちょっとHな第一部、文明についての第二部、フランスについての第三部、と大雑把に色分けが出来る。「オール讀物」連載の「とは知らなんだ」がもとになっているという。発表誌のせいか、鹿島にしてはわかりやすい、というか柔らかな内容。で、その中で、ちょっと刺激的な項目を紹介すると
「巨乳vs.小乳」「フランス人はなぜキスが好きか」「白木屋ズロース伝説について」「「ズッズー」の文明衝突」「インド人もビックリ」「金より金が大事」「フリースの起源」「マロニエの木の根っこの会」「植民地主義とマラリア」「ラーメンマンとサラリーマン」などがある。
ここにあげたもの以外も、どれも軽いフットワークだけれど奥が深くて、読んでいて心地よい。何か、斎藤美奈子が本気で文章を書いた感じ(違うんだけどね)とでもいうのか。で、一番面白かったのが「マロニエの木の根っこの会」。斎藤美奈子の本を読むと、団塊の世代、全共闘世代なんてのは一刀両断されてる。それは斎藤自身が、その世代に属していないせいもあるのだろうけれど、やはり団塊の世代の限界が、というか彼らの時代が終焉を迎えているのが見えるからだろう。
で、鹿島も団塊の世代なのだけれど、その世代の裏切り者的に、哲学を「冷戦下の60年代でさえ、全然、ピンとこなかった」「現代はすでに21世紀。実存主義、アンガージュマンなどという言葉はとうに死語になり、サルトルも完全に忘れられたかと思ったが」などと、あの時代の憂鬱な気分ごと斬って捨てる(ま、鹿島はそこまで、大胆に断言せずに、私が勝手に反応しているのが正しいかも)。
で、鹿島によると、最近、サルトルの『嘔吐』が再び読まれているらしい。そして、サルトルや開高健のように、マロニエの根っこを見つめている時、突然、激しい嘔吐に襲われ、「存在」の「神の姿」を理解することのなかった鹿島は、現在の珍現象の背景から、サルトルの作品は、哲学小説ではなかったのでは展開していく(様な気がする)。
実は、今『嘔吐』を読んでいるのが「引きこもり」と呼ばれる人間関係拒否症状に悩む重度のオタクだそうだ。彼らは『嘔吐』を実存主義の思想小説、哲学小説としてではなく「引きこもり」の人間が自らの悩みを赤裸々に告白した「私小説」として、切実な気持ちで読んでいるらしい。そして、本当のサルトルは、となっていく。
多分、こういう素直な、というか柔軟な読み方は、哲学オタクたちには出来ないのだろうけれど、そう考えてくると腑に落ちることが多いという現実は大切だと思う。そろそろ時代の制約や、哲学が格好いいなどという馬鹿げた幻想から自由になって、足元を見つめる時が来ているのでは、と思うのは私だけだろうか。
それから、横浜で上下2000円のフリースに身を包む鹿島教授という姿が、未だに「鹿島茂=鹿島建設の御曹司説」を離れられない私には、ミスマッチに思えて、うそでしょ、また、と背中を叩きたくなる。フリースから、廃棄物を資源化することが如何に大切かと繋げていくのも、納得。植民地がなくなったから、先進国がマラリアなどを自分たちに関係ないものと判断し、特効薬の研究をやめたと進むのも、少し第二次大戦日本善玉論風のところが無きにしも非ずだけれど、肯ける。
巨乳ブームの裏に、古代からの文明史的考察をするのは、さすがプロは違うと感心するばかり。でも、ここだけ立ち読みは、やっぱり、関係者以外やっちゃダメでしょ。