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  • みんなの評価 5つ星のうち 4.2 10件
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2003.5
  • 出版社: 幻冬舎
  • サイズ:20cm/277p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-344-00347-0

紙の本

ヤスケンの海

著者 村松 友視 (著)

余命一か月を宣言し他界した、超毒舌文芸評論家にしてスーパー・エディター安原顕の壮絶な生き様。大江健三郎をぶった切った事件の真相から、生涯の理解者まゆみ夫人との過激で麗しい...

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ヤスケンの海

税込 1,760 16pt

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商品説明

余命一か月を宣言し他界した、超毒舌文芸評論家にしてスーパー・エディター安原顕の壮絶な生き様。大江健三郎をぶった切った事件の真相から、生涯の理解者まゆみ夫人との過激で麗しい関係まで。怒りと笑い、そして涙の軌跡。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

村松 友視

略歴
〈村松友視〉1940年東京生まれ。慶応義塾大学卒業。中央公論社勤務を経て、文筆活動に入る。「時代屋の女房」で第87回直木賞、「鎌倉のおばさん」で第25回泉鏡花文学賞を受賞。

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みんなのレビュー10件

みんなの評価4.2

評価内訳

  • 星 5 (4件)
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  • 星 1 (0件)

紙の本

『ヤスケンの海』刊行記念特別対談村松友視×見城徹

2003/07/02 12:40

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る

→『ヤスケンの海』刊行記念特別対談 村松友視×見城徹もお楽しみください。

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紙の本

たくさんのお母さんを必要とする人

2003/06/10 23:35

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 エピローグで故辻邦夫のヤスケンについての評「たくさんのお母さんを必要とする人」という名言を引用しているが、吉田健一、辻邦夫等、大人(たいじん)の風格のある人には素直に身を委ねる心根は持っていたみたいである。八千草薫に理想の母親像を見ていたのではないかという作者のコメントも思わず、映像的に処理して微笑んでしまった。縮れ毛のヤスケン少年がぴかぴかの一年生になって誇らしげに、写真館で吉田健一、八千草薫に挟まれて夢の家族記念写真を撮っている。シャッーターを押すのは村松友視である。

 去年、PCを買ったばかりなので、ヤスケンサイトは新参者であるが、ヤスケンが竹内書店時代に企画制作した本のラインアップを見ると、私の書店員時代の翻訳棚がフラッシュバックする。
 だけど、彼の万引き体験は複雑な気持ちになった。日々、本の万引き対策に頭を悩ませていたからである。『シュールレアリスム宣言』は薄い本で、もっとも「引き」やすく、当時人気のあった本ゆえ、定食が七十円の頃、古書店の引き取り値は四百円であった。と記すが、そうかこの本は良く売れた?もんなあ…。
 ヤスケンとはタイムラグが三、四年なので、店頭で遭遇することはなかったと思うが、あんまり多くてスキルアップしたのか、お客さんの視線でぴんとくるアンテナが鋭敏になり、良く捕り物劇をやってしまった。事後強盗になり、「お手柄書店員」と全国紙の地方版に三文記事が掲載されたこともあった。
 そうやって昔の糸を手繰り寄せるとヤスケンの縮れ毛一本ぐらいは、ちょんちょんと、突くことが出来るかもしれない。天才ヤスケンの名を高らしめたのはマリ・クレール時代であるが、もうその頃、私は書店員を辞めていた。ただ、池袋近くに住んでいたので、人文、外文には独特の切り口で棚構成していたR書店は時々覗いた。その棚とマリ・クレールの書評欄が、がっちりと噛み合っていた。女性誌なのに愛読した。そうやって、ヤスケンをナビゲートに彼の紹介する本がいつの間にか、私の読書空間に入り込んだ。

 髭の有無、上品と下品の相違はあるが何となくオバサン風な体型でオーバーラップするのであるが、淀川長治はどんな映画にも良いところを見つけて紹介してくれたが、ヤスケンはそんな振舞は出来ず、つい悪態をついて物議を醸す。ワンパターンのお下劣を身上とするクレヨンしんちゃん的芸風は愛嬌があって私は嫌いではない。
 しかし、困ったことに私は坪内祐三のファンでもあるのです。
 彼は『en taxi』に収録のエッセイ「記憶の鞭」で痛烈にヤスケンを攻撃している。bk1にも二人の「論争ともいえない喧嘩?」の事情がアップされていたと思うが…。 そして、もうひとつと、坪内さんは記すのです。
 
 <去年の夏、かっての「海」や「リテレール」に載った作家たちの生原稿が多量に古書市場に流れた。特に村上春樹の手書き原稿は貴重で高値がついた。自分が口汚くののしっている作家の生原稿を売って金を得る神経を私は疑う。それが安原氏のアバウトな性格によるものだと言われたらそれまでだが、後世の文学史家(もしそんな人がいればの話だが)のために私がここで記録しておくのは、安原氏没後のどさくさでその多量の原稿が市場に出たのではなく、生前に氏が市場に流したという事実である。>

 きつい物言いである。でも、かように公然と坪内さんが公表することにヤスケンさんは異を唱えないと思う。照れ笑いと捨てぜりふは吐くかもしれないが、坪内さんはヤスケンのお母さんになれないだろうなあ。

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紙の本

安原顕の伝記というより、安原顕へのオマージュ

2003/07/13 12:22

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ゆうどう - この投稿者のレビュー一覧を見る

bk1の「『ヤスケンの海』刊行記念特別対談 村松友視×見城徹」のコラムを読んで、思わず買ってしまった。「ヤスケンって、誰?」というレベルの読者である。
本書は、安原顕(ヤスケン)の評伝、伝記というよりは、村松友視によるヤスケンにまつわるエッセーである。オマージュという言い方もできるかもしれない。ヤスケンの生い立ちに関する評伝的な章もあるのだが、むしろ、この本の本質は、出会いのエピソードや、中央公論社でともに過ごし、仕事をする中で起きたいくつもの「事件」を中心に語られた、「同僚」ヤスケンに関するエッセーである。
もちろん、著者に安原顕の伝記を書く意図など初めからなかっただろう。ヤスケンとの思い出を綴ったのであり、あくまでも著者の視点からヤスケンについて語られている。客観的な評伝でも、ヤスケン自身を主人公にした物語でもない。著者村松友視との接点から見ての「安原顕伝」であり、彼の残した事績をひととおり知りたいという読者の欲求には応えられないかもしれない。しかし、そういったスタンスであればこそ、安原顕という男の生き様が活写され、選りすぐりのエピソード満載で、息つぐ暇なく読ませてくれる。さすが、著者の筆力のなせる業である。評伝的な部分は、安原顕本人の文章からの引用が多く、本書全体のバランスを考慮して設けられた章、という位置づけではないだろうか。
本題とは関係ないが、本書で一点気になったのは、ヤスケンが学生時代に精を出した、万引きに関する記述である。とりあえず、ヤスケンの文章からの引用に括弧付で茶々を入れているが、「ヤスケンの天才的な」生き方と美化されているように感じられなくもない。正義派の私としては、ことさら挿入しなくてもよいエピソードであったと思う。そもそも、ヤスケンのすべてを描こうとした作品ではないのであるから。
万引きの件を除けば、ヤスケンが、会った人を魅了してしまう人間であることは確かのようだ。bk1の他の書評を読んでも、そう感じる。そして、本書を読んだ人が、ヤスケンという人間に興味を抱かされてしまうことも確かなようだ。

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紙の本

安原さん、ありがとう。

2003/06/30 03:04

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:奈伊里 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 読み終えて、しばし呆け、何も為すことができなかった。この世に、この人がもういないことが悲しかった。

 没後4ヶ月で早くも出版となった本書には、安原さんの盟友である村松氏の記憶に映った天才ヤスケンの姿が、大別するなら二つの方向から描かれている。
 ひとつは、「海」編集部でともに仕事をした時代の具体的な記憶。
 編集部での出会いにはじまって、大江健三郎氏を激怒させた事件の顛末、できすぎた妻まゆみさんの横顔、編集部で持ち上がる人間関係のあれこれ。……どのページからも、天才エディターの型破りな生き様が彷彿としてくる。
 そしてもうひとつは、安原さん本人から聞き知ったこと、著作のことばなどから、村松氏が改めて、安原顯という人物を、自分の中で再構成しようとする方向だ。
 生い立ちから、その少年時代から、結婚生活から、働きぶりから。家族というものへの想い、母への想い、社会での自己表明の仕方、書物や音楽に対する愛情の根拠などなど、安原顯論が展開する。
 この二つが縒りあい縒りあい、立ち上ってくるのは、天才ヤスケンが如何に愛すべき人物であったかということ。天才ヤスケンを如何に村松氏が愛していたかということだ。これは伝記なんかではなく、終わらない弔辞であり、長い長い追悼文であるかのよう。実際、伝記であってこんなに著者自身のことが書かれることはない。同じ釜の飯を食った時代の自分を書くことが、ヤスケンを思うことになる。しかもその思いは、氏の文学的修辞からはみ出して、読者に直に伝わってくる。
 村松氏の文章にそって浮かび上がってくる天才ヤスケンの姿を追いかけているうち、読者は、自分の最期を知って、たくさんの人にたくさんの感謝とたくさんの「ありがとう」を投げかけるヤスケンに出会う。それは、過剰に愛し過剰に罵倒し、荒くれた海みたいに生きた男の、底の底にあり続けた、静かで穏やかな愛情を思わせて感動的だ。
 わたしは自分の読書生活の中で、天才ヤスケンを追いかけているという意識はまったくなかった。でも。
 20年ほども前。古本屋で、はじめて「パイディア」を見つけた時、なんてイカシタ雑誌なんだろうと小躍りして、収集した。R・カーヴァーという敬愛してやまない作家を村上訳で紹介してくれたのも安原さんだったし、カーヴァー全集が、チェーホフ全集と同じサイズの美しい体裁で刊行されたのも安原さんの企画だった。こんなに面白い女性誌があったろうかと目を見張り、マリ・クレールを購読し始めたら、編集長は安原さんだったし、「リテレール」は「読んでもたかだか五万冊」な我が読書生活の、偉大なガイドブックになった。安原顕の名前が付された書評が気になって気になって、これはと思う新刊を読んだ後、彼の名前をほうぼうに探したりした。「ねじまき鳥クロニクル」に続いて「海辺のカフカ」も酷評されていると噂に聞き、検索していて、このbk1というネット書店をはじめて知った。面白いものを求めて書店に通ううち、知らぬ間に、わたしは安原さんの仕事を追いかけていたのだ。そして、bk1を知ってからは、もう夢中で追いかけた。そしてそれは、彼が亡くなってしまうまでの凄絶な日々だった。

 言ってしまえば、「ヤスケンの海」を読んで初めて、わたしは安原顯の全体像を知ったのだ。それなのに、わたしは天才ヤスケンから、すでに色んな宝物をもらい、いろんなことを教えてもらっていた。そのことに深く驚く。一人の人の、深く激しい愛情の、その飛距離に。

「そもそも人間はゴキブリ以下の生き物なんだよね。そのゴキブリ以下の人間が、時々ホントに魂をゆさぶるような、ものすごい音楽や小説を創ったりする。それが不思議でしょうがない」という安原さんのことばには、多くの「本読み」する者が頷くことだろう。
 村松氏の愛情が産んだ一冊の青い本を前に、「安原さん、ありがとう」と伝えたい。

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紙の本

「天才ヤスケン」は、まさに天才である!

2003/06/20 15:11

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「天才ヤスケン」と呼ばれた本読み大人(たいじん)、安原顕の生涯が、本人の文と親友の目を通して1冊の本になった。「ヤッサン」「ムーサン」と呼び合う仲だった著者が、ヤスケン(以下、敬称略)の魅力を語る。
 「ヤスケン」のことも、彼が手がけた文芸誌「海」のこともロクに知らぬ純文学オンチの私だが、この本は純粋に読み物として面白かった。作家や編集部のとっておきエピソードもさることながら、なによりも熱い男の友情に胸打たれるのである。利害も保身も打算も関係なく、正義と論理を通す仲。いいなあ、こんな友情…。
 いかに彼が本好きであり、また好きのみならず大いに目利きであったかが、面白おかしいエピソードやドキリとするようなエピソードを交えながら、明らかにされていく。スリリングだ。
(ただ、「引く」のはちょっと。図書館ではだめだったのでしょうか…。)
 そして、ヤスケンの伝説として「同じ本を3冊買う!」というのがある。オタクな人がやはり3冊同じ本を買うということをやるが、彼らは保存・実用・布教という用途のためにやるわけだが、ヤスケンは違うのである。なんと彼は、愛読用・勉強用(ライン引くとか)・貸出用と3冊フル活用し、いわゆるオタク買いのように本を死蔵したりはしないのだ! 全てが読むために費やされるとは、その情熱におそれいる。
 ヤスケン本人の文章に、著者が入れる合いの手がこれまた絶妙で、面白い。
 そして、生い立ちで明らかにされる本の世界への耽溺は、やはり家庭にその礎があったらしく、本に逃避して生きてきた自分は(図々しくも)たいへんシンパシーを感じたのだった。
 そして、天才ヤスケンは享年63歳で、その熱く深い本と歩んだ人生に幕を下ろす。こんな、すごい人がいたのか…。今まで無知だったことをちょっと恥じつつ、ヤスケンご本人の著作も読んでみようと思ったのだった。 

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紙の本

最も早く読めて最も心に響く。村松評伝の最高傑作!

2003/05/28 23:41

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:室田 堯 - この投稿者のレビュー一覧を見る

こんなにわくわくする評伝読んだことがない。単なる一読者が「書評」というのもおこがましいが、思わず書いてしまいました。
著者の評伝を高く評価する安原氏自身が今回はその主人公だ。文芸誌「海」で出逢い、その二日目に主人公「ヤスケン」のセコンド役を決意したという著者が、共に編集者として転戦したデスマッチの記録。新しい文芸誌を模索する雑誌づくりのマット上で繰り広げられる数々の「タイトルマッチ」を、著者ならではの記憶から解きほぐし、セコンドの目線からしか見えない、驚くべきエピソードの数々で「ヤスケン」の天才ぶりを暴露していく。まるでリングのロープ下から手に汗握り観戦しているようだ。
その筆致は、例によって静かだが「大江健三郎事件」のくだりは圧巻だ。大江氏の「ヤスケン」に当てた手紙の全文を読むと心臓が早まってくる。「こんな手紙を公開しても良いの?」とも思うが、それを「ヤスケン」の天才の証明書としている著者の構えがたまらない。また、常に主人公「ヤスケン」にまつわる「勇猛果敢」「けんか腰」「毒舌」といった性格を裏側から見つめ直し、そういう形容に「照れ屋」「弱気」「甘えん坊」といった水面反射の逆像を与えることによって「天才ヤスケン」を画き上げていく。深い暖かみを湛えた評伝だった。

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紙の本

読み出したら止まらない、猛烈に熱くて無限に優しい評伝

2003/05/27 18:20

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:松本賢吾 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 bk1に予約しておいた『ヤスケンの海』が届いた。
 たまたまこの日は、吉祥寺の寺島靖国さんの店「メグ」で『安原顕追悼コンサート』が催される日だった。まるでヤスケンが、『ヤスケンの海』の発刊日に合わせて、本に登場する縁(ゆかり)の人間を一堂に呼び集めたような奇跡を感じる。こんな奇跡に近い偶然は前にもあった。訃報を載せた夕刊の別紙面に、自著『ファイナル・カウントダウン』『読んでもたかだか五万冊!』『ふざけんな人生』(いずれも清流出版社刊)の広告を大々的に掲げ、天才エディターヤスケンは、死しても仕切らずにはいられない編集者魂の不滅さを顕示してくれた。
 そんな感慨を胸に、吉祥寺に向かう車中で『ヤスケンの海』を読み始める。──書き出したら止められず、憑かれたように書いて脱稿した。というようなことを、四十九日の法要でお会いしたとき、著者の村松友視さんからお聞きした。読んでいるとその熱さが伝わってきて夢中になる。冷静な評伝の達人の文章と、セコンド・ムラマツの手に乗り憑いたヤスケンの過激な文章の相乗効果で、どのページも灼けるように熱い。そして限りなく優しい。「メグ」に入ってからも本を手放せない。ゲストにジャズボーカリスト小林桂さんを招いた追悼コンサートは盛況で、見渡せば本に登場する「神の贈物」のまゆみさん、「神秘的」な眞琴さん、懇意だった編集者、叱られまくった朝カルの生徒らの顔が鈴なりになっていた。
  帰りの車中でも読み続け、鶴見駅前の「松屋」で読了し、かつて原稿をボツにされたときに送られてきた、ヤスケンの罵倒の文章を思いだして苦笑する。
 そのときの罵倒の文章の大筋が、本書で読んだ大江健三郎をぶっ叩いたコラムの文章と同じなのだ。著者も書いているが、この「驚異のワン・パターン」が、ヤスケンの最大の魅力なのだと改めて思い知らされた。決めの部分を引用しておこう。
「──もしお前たちが作家なら、千年の時間にも耐えられる大傑作を一発書くことが、何よりいちばん肝心なことではないのか。」
また叱られた思いがし、本を小脇に抱えて家路についたが、本書のあとがきの最後の文章が浮かんできて思わず首を竦めた。──ヤスケンが活きているのはあきらかなのである。

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2012/10/21 02:42

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2013/04/10 23:17

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2017/02/27 20:54

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