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商品説明
幼児虐待・リストラ・家庭崩壊…。誰が心の病にかかっても不思議のない時代。そもそもの原因って? 精神科医の抱える構造的問題とは? 社会的介入者の立場から、精神疾患の患者と語り続けた著者が、完全な対処法を大公開。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
押川 剛
- 略歴
- 〈押川剛〉1968年福岡県生まれ。専修大学中退。トキワ警備を創業、精神障害者移送サービスを専門に行う。現在、トキワ精神保健事務所代表。著書に「子供部屋に入れない親たち」など。
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紙の本
驚くべき奇跡
2003/12/05 14:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:110の王 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書が凄いのは、精神疾患の患者を治せる(本書では「病気を消す」といっているが)と、堂々と宣言しているところである。
確かに、「うつ病」は治るというようなことは、精神科の医師の書いた書物にもあるようだが、押川氏は、「うつ病」に限らず、「統合失調症(精神分裂病)」も、治ると言い切っている。
押川氏の仕事は、著者紹介でもあるように、精神病患者(病識がない場合が圧倒的に多い)を説得して、病院に移送することだ。それを成功させるためには、患者のこれまでの趣味・嗜好・性格・生育歴等はおろか、その両親や兄弟の性癖や生活スタイルまでもつぶさに調査して、「どこにボタンの掛け違いがあるか」を押さえて、説得に臨むという。そうした過程を700例以上の患者たちに対して誠実にこなしてきた。
精神科医が患者の病を診るとき、そのほとんどは、患者そのものを診る。患者そのものしか診ない。押川氏にいわせれば、患者の状態は結果でしかない、原因と過程は、その患者の育った家庭内にあるという。どんな問題を解決するにせよ、原因と過程を知らなければ本質的な解決にはならない。
窓ガラスが割れている。新しいガラスをはめる。確かに結果はとりつくることができる。しかし、原因と過程に目を向けなければ、そのガラスは再び割れるであろう。前の公園で、子供達が野球をしていて、そのボールがガラスを割ったことを考えれば、塀を建てるとか、市役所にクレームをつけて、球技禁止を遵守させるよう指導を要請するなどしなければ、同様の事故はおこり続ける。
精神科医が、単に「落ち着く薬」を処方したり、「元気が出る薬」を飲むよう指示したりするのは、ガラスを貼り替えたに過ぎない。しかも、それらの「向精神薬」は、いずれも恐ろしいほどの依存性がある。しかし、精神科医に同情の余地もある。現行の医師法では、薬を出さないと点数にならない、つまり儲けにならないという縛りがある。カウンセリングしたり、患者の育った家庭に赴いて、両親や兄弟の状況を詳しく調査したり、といった行為には、点数はつかないのだ。精神科医が精神病を治そうとすれば、破産するのだ。
押川氏は、その原因と過程を知り、どこにその患者の病の核があるかを的確に認識する。その一点を押さえて、患者の説得を成し遂げる。
押川氏が精神科医のもとへ患者を送り届けても、結局、薬を処方されるだけで、数ヶ月後には、患者は退院となる。しかし、家庭自体は、何も変化していない、つまり、患者を患者たらしめた空間のままであるわけだから、当然、もとの黙阿弥となる。その繰り返しの中で、押川氏は根治法を発見したという。非行少年の更生プログラムにヒントを得て、オリジナルの更生プログラムを考え出したのだ。
親が変わらなければならない。欠如していた家族愛から再生させなければならない。次ぎに、友人を作らねばならない。社会愛で育まねばならない。そして、異性愛を獲得させねばならない。抑圧された性欲を、健全化させなければならない。
やがて、患者は、患者でなくなるのだという。押川氏は、それを実践の中から発見した。
本書は、希有の書である。そうした患者を家庭に抱え、途方に暮れている、何十万の親たちは、一度、襟を正して、読むべきである。