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商品説明
少年が見つけた安楽椅子は、ホームズばりの名探偵だった!? 上海生まれの口をきく椅子と、ごくふつうの小学生・衛が出合った4つの謎−。奇想天外、「正真正銘」の安楽椅子探偵連作集。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
松尾 由美
- 略歴
- 〈松尾由美〉金沢市生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒。「バルーン・タウンの殺人」でハヤカワSFコンテストに入選。著書に「ブラック・エンジェル」「銀杏坂」など。
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紙の本
しょうじき、こましゃくれた女の子がえばりくさる話ってのは、またか、って思うわけです。流石の松尾もその壁を越えることは難しかった。でもミステリとしては立派です
2005/07/25 19:42
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
安楽椅子=アーム・チェア、この前後の一文字をとってアーチー。うーむ、結果として生まれた名前はなんとも親しみがあって、うまいなあ、松尾さんといいたくなります。で、自分の無知をさらけ出してしまうと、主人公の衛少年と同じく、私も安楽椅子というのは、あの揺り椅子=ロッキング・チェアだと思っていたんですね。
たしか、ヤッフェの『ママ』シリーズ、やオルツィの『隅の老人』シリーズなどのカバー画かイラストで、揺り椅子の画を見た記憶があるし。いやあ、勘違い。だって、それなら安楽椅子探偵ローチーになっちゃうし、なんだかゴキブリ捕りみたいだし。
カバー・イラスト&扉カットは、ひらいたかこ。装丁は磯田和一。ひらいたかこのカットは、主人公の衛が小学生のため、いかにも児童小説向きの優しく暖か味のあるもの。勿論、内容は大人から子供まで十二分に楽しめ、ある意味、講談社の新叢書の既刊分を凌ぐ作品といっても言い過ぎではないでしょう。
主人公はSF好きの及川衛。小学校五年生で、今度、11回目の誕生日を迎えます。誕生日に約束のゲーム機を買うことのできそうもない母親は、仕方なく息子に自分で近所のDSヤマゲンで特売の品を買うように、2万8千円という子供にとっては、かなりの大金を預けます。そして買い物に行く途中、衛少年は、西洋骨董アンティーク・ニシダで不思議なため息を聞きました。それが全ての始まりでした。
成績も優秀、顔もいいし、スポーツも得意、でも、マイペースの同級生の中西くん。唯一の苦手は、家庭科。そんな彼のあだ名は、宇宙人。少年が苦労して作っていたナップザックに事件が。衛の母が可愛いという、ミステリ好き野山芙紗の暴走が「首なし宇宙人の謎」。12月のある日、有名なヴァイオリニストの少女のことを話していた衛とアーチーのところに、衛の父親が靴の片方を持って上がって来た。その靴には「クリスマスの靴の謎」。野山芙紗が横浜の外国人墓地で見つけたのは、白いコートを着た女の人と、ラミネート加工された貼り紙に付けられたチョークの粉だった「外人墓地幽霊事件」。アーチーが衛に頼んだ、昔の椅子の持ち主探し、その人が書いたとしか思えない小説が見つかって「緑のひじ掛け椅子の謎」。それにあとがきと著作リストがつきます。
ま、はやみねかおるの『虹北恭介の冒険』『名探偵夢水清志郎』シリーズにしてもそうですが、どうしてこましゃくれた女の子が必ず登場するのでしょう。話に花を添える、というのも分からないわけじゃあないですが、だいたい、どの本でも女の子が積極的というか、それを通り越して図々しかったり、身勝手だったりと、パターン化が進みすぎて、またかと思えてしまうのは、色々なミステリに大学のサークルの連中が、登場するのと同じで、やは一工夫が欲しい所。無論、松尾が敢えて、このパターン化を楽しんでいるのは、あとがきを読めばよく分かりはするのですが。
ま、そのものズバリの安楽椅子探偵が出てくるのは、確かにヒットだし、起用された、ひらいたかこも十二分に力を発揮しているので、それだけでも評価はしたいところ。ひとつお願い。収められた4つの話、あとがきを読めば『創元推理21』に第一作が載ったとは分かりますが、それ以上の作品データが記載されていません。あとで纏めるのが面倒くさければ、各篇の終わりに( )書きでいいから、何年何月号掲載、くらいの記述は欲しいのですが。
紙の本
文字通り『安楽椅子』が謎を解くんだよ!
2003/10/15 00:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山村まひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
安楽椅子探偵というのは、事件現場に行かずに、資料を読んだり、話を聞いたりするだけで、謎を解いてしまう探偵さんのことなわけですが…この作品の「安楽椅子探偵」は、文字通り「椅子」です。
誕生日のプレゼントとしてゲームを買いなさい、とお母さんからお金を渡された小学5年生の衛くんは、もらった28000円全額つぎこんで、アンティークショップで見かけたひじ掛け椅子を買ってしまいます。
なんで小学生がそんなもん買うの? といういきさつは、中に描かれていますので読んでいただくとして、問題はその買って帰った椅子が、喋りだしちゃう、ということ。
年代モノのひじ掛け椅子は、まるで衛くんのおじいちゃんのように、年上の友達のように、ちょっぴり皮肉まじりで話し相手になってくれて、衛くんの周りで起こった事件の謎を解明してくれます。
衛くんのクラスメートで、ミステリー小説好きの活発な女の子・芙紗ちゃんもまじえて、学校の家庭科教室を舞台にした密室の謎(首なし宇宙人の謎)や、社会見学で出かけた外人墓地での暗号解読(外人墓地幽霊事件)など、全4話の連作ミステリーです。
最終話(緑のひじ掛け椅子の謎)では、アーチーが思考を持ち、喋れるようになる「きっかけ」となった「2番目の持ち主」の謎が描かれます。
60年前に上海で「待っていろよ」「今度会う時は横浜だ」と声をかけてくれた2番目の持ち主とは、日本でついに再会できなかったというアーチー。
「きみがもう少し大人になってからでいいから、彼がその後どうなったのか調べて欲しい」というアーチーの願いが、思わぬ手がかりから解明されてゆくのですが、このあたりはなかなかスリリングでワクワクします。そして、明かされる意外な結末。
今、講談社から発刊されている『ミステリランド』の1冊に加えたいような内容だなあ…と思いつつ読んでいたのですが、あとがきに「かつてそういう子供だった大人の人たちに、この本を楽しんでいただけたら」と書かれていて、思わず納得。
コンセプトが同じだったのですね。
イラストが『クリスティ』という画集まで出ているひらいたかこさんというのも、ミステリファンとしては嬉しくて、このまま飾って置きたいような1冊です。
『うたたね日記』 もヨロシクね。
紙の本
一癖ある性格のアーチー、好きです。
2003/09/30 22:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
ゲーム機を買いに出かけた小学生の衛は、アンティーク家具の店で、不思議な椅子を見つけ、購入する。吐息をたてるその椅子は、なんとしゃべる能力を持っていたのだ! 「アーチー」と名付けられた文字通りの安楽椅子探偵が、身近な謎を解く連作集。
伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」北森鴻「屋上物語」もそうでしたが、ミステリでは無生物もしゃべることがあるらしい。そして彼らは、しちめんどくさい有機物である我々よりも、高い知性や優れた人格(物格?)を有していることが多いらしい。血生臭い事件もなく、ほのぼのと楽しめるミステリ。甘くなりすぎぬのは、推定年齢60代のアーチーと11歳の衛の年齢差もあろうし、アーチーの愛すべくもひねくれものな精神によるところが大きいと思う。
本作では、しゃべる椅子アーチーが、柔軟な頭脳を持つ子供・衛とうち解け、衛の友人でミステリファンの少女・芙紗が主に持ち込んでくる謎を難無く解いていくのが魅力なのである。
「首なし宇宙人の謎」アーチーと衛の出会い&早速の事件。家庭科の時間に起こった、殺「もの」事件とは一体!?
発想の転換に、おおっと唸らされる展開。
「クリスマスの靴の謎」衛の父が見た謎。靴を落とした男は、なぜ片足跳びで逃げたのか!?
動機は納得出来るかというと何かモヤモヤするけれど、設定は面白いと思う。
「外人墓地幽霊事件」地域学習で訪れた外国人墓地。謎のチョーク印と、白いコートの女の関係は?
これも真相はええっ?って感じなんですが、アーチーはいいこと言ってます。
「緑のひじ掛け椅子の謎」アーチーそっくりの椅子が描写された小説を見つけた芙紗は、アーチーが会いたがっている元持ち主が、その小説家ではないかと推理するが。
この本では、この話がいちばん好きかもしれない。互いに思う人と物が美しいお話だ。
紙の本
著者のことば
2003/09/02 23:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松尾由美 - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供のころ「名探偵」が出てくるお話が好きでした。
一見普通の人物が実は——というパターンも素敵ですが、どうしようもなく惹かれるのは特徴的な外見や困った習慣、うるさい口癖などを持つ奇人変人の名探偵で、自分でもそんな探偵の活躍を書きたいと思っています。
というわけで本書『安楽椅子探偵アーチー』の探偵役はかなりの変わり種。シャーロック・ホームズより贅肉が少なく、ミス・マープルと同じくらい(?)お年寄り、何よりもまず人間ではなく家具なのですから。
第二次大戦前夜の上海で生まれたひじ掛け椅子が、なぜか口をきいて事件を解決。ワトスン役をつとめる衛くんは小学校五年生、私がホームズ物語を愛読していた年ごろです。そういう子供たちに──あるいは同じかそれ以上に、かつてそういう子供だった大人の人たちに——この本を楽しんでいただけたら、とても幸せに思います。