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紙の本
PR! 世論操作の社会史
著者 スチュアート・ユーウェン (著),平野 秀秋 (訳),左古 輝人 (訳),挟本 佳代 (訳)
商品の広告から情報戦争まで、パブリシティが誕生し成長・肥大する過程を描き、その生理と病理の深層を暴き出す迫真のレポート。【「TRC MARC」の商品解説】商品や企業の広告...
PR! 世論操作の社会史
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商品説明
商品の広告から情報戦争まで、パブリシティが誕生し成長・肥大する過程を描き、その生理と病理の深層を暴き出す迫真のレポート。【「TRC MARC」の商品解説】
商品や企業の広告はもとより時の政権による情報操作まで,パブリシティの誕生と肥大化の物語。その生理と病理の深層,人間と社会に対する深刻な影響をあばき出す。【商品解説】
著者紹介
スチュアート・ユーウェン
- 略歴
- 〈ユーウェン〉ニューヨーク市立大学教授、同大学ハンター校映画・メディア学部長を経て、同大学美術学大学院教授・特別勲功教授として歴史学等の博士課程を主宰。
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日本の世論操作の社会史が知りたくなる本
2004/01/02 10:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sheep - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカにおける世論操作の堅い社会史だが、読むのに困難なことはない。それぞれの時代の専門家、企業の世論対策活動のあり方が興味深く書かれているので、むしろあっけなく読み終える。
先駆的な理論家バーネーズとの面談から本書は始まる。面談当時何と百歳。
彼は著者に、広告専門家は「知的少数者」の一員で、「心理学を応用して、…大衆を操作する」方法を顧客に助言する人間だと述べた。インタビュー時に、著者に向かい、自分が著者なら「米国最大の消費者団体に電話をかけて自分を売り込む。」といった。そうすれば全国をカバーする通信社がとりあげるかも知れず、あっと言う間に国際的スターになれると。そして実際インタビュー三カ月後、著者がその話を忘れた頃になって、実際全米消費者連盟から声がかかり、全国ネットに登場するこになった。そこにバーネーズの影響があったかどうかわからないと著者はいう。本書はそうした専門家達の活動記録だ。
ところでル・ボンによる古典「群衆心理」この業界基本的古典のようだ。「群衆心理」を偶然読み、与党政治家の教科書に違いないと想像していたが、著者によれば何と実際セオドア・ルーズベルト大統領は、在任中本を常に手元に置き、懇願して彼と会ったという。これには驚いた。
産業界による世論工作の例が次々例示される。第一次大戦時の米国広報委員会の組織的活動の描写は、まるで今のアメリカ政府の動きそのもののようだ。
新聞に対する産業界、NAM(全米製造業者協会)等のあまりに強い影響を、大不況時フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、新しいメディアであるラジオを通し直接民衆に語りかけ回避した。彼は公衆の理性に期待したのだ。この時期は、政府と産業は、世論工作という点で、手法も狙いもむしろ敵対的だった。後に彼の画期的なニューディール的政策は、産業界から「アカ」のレッテルを貼られるようになる。
企業は、政府は、戦時そして戦後、世論操作手段を手中のものとする。ラジオ、映画、万国博覧会。さらにテレビ番組、そしてニュース。世論は実は少数権力者によって形成されている。
バーネーズは言う。「豊かな想像力によって作られた事件は、ひとびとの注目をあつめる力では、他のどのような事件にも負けない。ニュース化する価値があり、ひとに見せられるような事件が偶然によっておきることはほとんどない。そのような事件は、人々の思想と行動に影響をあたえる目的のもとに、熟慮によって作られたものだ」。あの事件を想起するではないか。「コンセンサスの形成技術」
訳者の一人が著者との打ち合わでニューヨークで面会したのが偶然9.11事件の日というのも実に因縁めいている。
日本の、政権党、経営団体、広告代理店の協力による世論操作行為についてこうした研究書はないものだろうか。瓜二つになるのか否か。
強力な世論管理の機構が地歩を獲得している今、社会的コミュニケーションの構造を考えなおし、デモクラシーにおける参加がどのようにして可能か考えなおす必要がある、と著者はいう。その鍵のひとつは教育で、若者に早くからメディア批判の眼をもたせることだとしている。日本の大問題は、それを防止すべく「教育基本法」改悪が着々と進められていることだ。一つの対抗策が封じられるのも間近だ。
「われわれ自身が、階級とか人種とか民族とかジェンダーとか思想とかによって通常のアメリカ人同士を区別し、ありもしない下らぬ口実で争いあう、心の習慣を考え直すべきである。区別の意識が共通性の意識とバランスを取り戻さなければ、デモクラシーの為の公衆は出現できないだろう。より大きな善が実現されるには、われわれ自身がより大きな公衆であることを思うべきである。」という最後の言葉は実に重い。掲示板で罵り合っていても大きな善は実現されまい。本書に問題があるとすれば、唯一価格だろう。