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著者 池内 紀 (著)
ちょっと寄り道美術館 (知恵の森文庫)
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評価内訳
2005/08/04 23:36
投稿元:
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国内の大小さまざまな美術館を訪問し、その美術館の紹介のみならず、そのとき行われていた展覧会の内容やその土地の故事、来歴などをまとめたもの。紀行文エッセーである。 大小さまざまと書いたが、どちらかというと小ぢんまりしたもの、個人美術館が多い。だから今回はイロイロと勉強になった。 川上澄生美術館(鹿沼市)、篁牛人記念美術館(富山市)などぜひぜひ行ってみたい美術館を見つけてしまった。 大川美術館(桐生市)というのがある。 大川栄二氏が集めたコレクションを元に開設された美術館なのであるが、その収集作品は松本竣介や野田英夫を中心に「この二人の周辺を巡る画形の作品群で構成され、絵を人格と見てその人脈をたどって収集した日本で唯一のユニークな展覧」(cf.p69)とある。 作品に作者の生き様を見ようとする姿勢がうかがわれるのだが、昨日読んだ『日本美術応援団』で山下裕二氏は青木繁の項で「僕は基本的には、画家がどんな生涯を送ろうが、絵とその人の生業とか生活とかは切り離して見るべきだと思うんですよ。特に近代の画家だと、どうしても「生涯と芸術」みたいな語られ方になっちゃうでしょう。「生きざま」っていう言葉、大嫌いなんです」(cf.p109)と述べている。 正反対なのである。 赤瀬川さんも山下さんよりの発想であって「そうそう。絵よりも人間物語みたいになっちゃって」と言われている。 解説書には、作品自体よりもそっちにウェイトをおいた書き方はまずいけど、やはり作品はその人のその時点の生き写しだと思う。その作家の精神状態を無視して作品は語れないはずだ。 ちゃんと確認してみないと分からないけどね。 それから、神奈川県真鶴町にある「中川一政美術館」の項。中川は小説を書いたり詩集を出したりする文筆の才を有した人であるが、彼が絵の見方についてこう言っている。 「わからないものはわからないとしておいて、わかるものを先ず味わって行けばよいのです」(cf.p150)と。 絵を学ぶために先生につくことの欠点を述べた延長にこの話がある。 池内さんの文章では、理屈攻めにしてはいけない、いずれ成長すれば分かるときがくるのだ、成長することを考えるほうが近道なのだ、と続く。 なんだか人生経験を積むことと同じだよなあ、とワタクシは感じ入るのだった。
2012/09/30 23:43
表紙が静物画で有名な瀬戸照さん。真っ白な背景に日本の野原や脇道でよくみかける植物が添えられていて、まさに本のタイトルのごと「寄り道」の雰囲気にピッタリだ。内容は常設展、特別展にあれこれ立ち寄った筆者の思い出レポ。掲載されている画像が少ないけれども、レポというよりはもっと私的な日記やポエムにちかい文体で心が弾む。美術館の建てられている土地の風景をぐるりと見回しながら建物に進んでいく展開は非常に僕の好み。特別展レポ、もう見られない口惜しさよ。
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