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紙の本
マンガを知らずに日本文化は語れない
2005/03/08 02:59
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
天才藤子Aの代表作は、おそらくこの「ハットリくん」だろう。それは、著者の本の中で最も売れたのがこのハットリくんであり、放送期間もおよそ6年に及んだことからも推測できる。「怪物くん」なども有力ではあるが、やはり客観的にはハットリくんだろう。
主人公のハットリくんは、伊賀の里から東京に出てきた忍者。そして、健一というわがままな一人っ子の家に居候することになる。その後、弟のシンゾウに忍者犬のシシマルが、伊賀からハットリくんを追ってやってくる。その二人がまた何とも言えず、愛らしい。
ハットリくんは、まだ10歳前後なのに、己を殺し、健一のためにいつも犠牲になってくれる。ライバルであるケムマキにすら、無私の友情を捧げる。そんな小難しい内容ではもちろんないのだけど、大人になってから読んでみると、ハットリくんこそ、忠烈無私な、人間の鑑だと思えるようになった。人は己のためだけに生きてはならない。ハットリくんを見ていると、「自己中」と言われる人種のなんと小さく見えることか。ハットリくんの高潔な態度を、面白く学ぶことが出来るのがこの「忍者ハットリくん」であり、子供の情操教育にこれ以上のものはそうそうあるものではない。
学校で下手な道徳の教科書を読ませるより、ハットリくんをビデオで見せた方がよっぽど為になる。なにより面白く学ぶことが出来る。道徳の教科書の朗読で道徳を身につけた子供を、私は知らない。
日本は、世界文化5大大国に数えられている。それは、何の力か。マンガ・アニメの力である。日本映画、日本文学はほぼ無力に近い。つまり、日本の文化戦略を語るに際して、マンガ・アニメを欠かすことは絶対に出来ないのである。もっといえば、マンガ・アニメを知らぬ人間は、文化戦略を語る資格がないとさえいえる。
日本伝統の忍者で、しかもこの面白い内容。忠烈無私こそ武士の本懐で、日本文化の根底だ。つまり、日本文化戦略の主力のひとつになりうるのがこの「ハットリくん」といえる。こうして、日本のアニメを世界中の子供や大人が見たりすることで、日本語を学ぶ意欲や、文化を学ぶ意欲の向上に繋がる。ひいては、それが国際発言力の向上にも寄与する。
実際、フランスではドラゴンボールの視聴率が70%近くまで上り、「ディズニー以上の文化侵略だ」として、日本アニメに規制をかけた。ヨーロッパでは、朝から晩まで日本アニメが流れ、書店のマンガコーナーにも日本マンガがずらり。ドラゴンボールを日本語で読む団体的動きも各所で起こった。
だからこそ、韓国は文化戦略を前面に押し出し、日本が得意とする分野にことごとく挑戦してきている。
マンガ・アニメは圧倒的だが、日本のお家芸・ゲームは、ネットゲームに限って韓国が拮抗してきている。通常ゲームも、いつまでドラクエ・FFだけに頼っていけるか心許ない情況だ。国家の無策が、日本の文化戦略の遅れを招いているのだ。JASRACに圧され、CD逆輸入を禁止する愚策を打つ前にすることがあるはずだ。それも、我々国民が、どこかで「マンガは活字に劣る」という偏見に捉われて、意見主張が出てこないからだろう。
もしお子さんがいらっしゃる方でしたら、このハットリくんを買ってあげたらどうだろうか。昔テレビ放送をみた今の30代の方も、たまには懐かしのマンガを読んでみてはどうだろうか。