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紙の本
青い蜃気楼 小説エンロン (角川文庫)
著者 黒木 亮 (著)
〔「虚栄の黒船」(プレジデント社 2002年刊)の改題〕【「TRC MARC」の商品解説】規制緩和の流れに乗ってエネルギー先物取引で急成長を果たしたエンロンは、2001年...
青い蜃気楼 小説エンロン (角川文庫)
青い蜃気楼 小説エンロン
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商品説明
〔「虚栄の黒船」(プレジデント社 2002年刊)の改題〕【「TRC MARC」の商品解説】
規制緩和の流れに乗ってエネルギー先物取引で急成長を果たしたエンロンは、2001年12月、史上最大の倒産劇を演じた。グローバルスタンダードへの信頼を一気に失墜させた、その粉飾決算と債務隠しの全容!!【商品解説】
著者紹介
黒木 亮
- 略歴
- 1957年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、三和銀行勤務。エジプトに留学、カイロ・アメリカン大学で修士。ロンドン支店を経て投資銀行に移籍、さらに大手商社の現地法人へ転職。プロジェクト金融部長在職中に『トップ・レフト』でデビュー。作品はほかに『アジアの隼』など。
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紙の本
IT技術を駆使した企業犯罪の行く末
2006/05/02 16:07
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hisao - この投稿者のレビュー一覧を見る
2001年12月 米国エネルギー大手企業エンロンが破綻しました。貧困から身を興したIT革命の旗手達が世界にエネルギー革命を巻き起こし、複雑な金融工学と会計操作を駆使、一方では米国政府・ウォール街アナリスト・大手会計事務所との癒着を重ねて巨億の富を手中にしました。そして空前の大破綻。
世界の経済界を震撼させた事件をかって国際金融界で活躍した黒木氏が小説仕立てで語っています。小説とはいえ立派なM&A或いはIT技術の教科書です。先日保釈され法の裁きを待つホリエモン氏の戦術・詐術が僅か4年前に暴かれたこのエンロンの犯罪に余りにも酷似しており興味深く読みました。
小説の中から「エンロンの歴史」を辿ってみます。
1985年 一介の地方ガス会社としてケネス・レイ氏がエンロン設立
1980年代終盤には 時価会計等を悪用してはやくも粉飾会計に手をそめます。
1990年 中頃より
米国の電力規制緩和・自由化政策を契機にエンロンはエネルギー供給企業から石油・ガス・電力などの売買を仲介するトレーディング・ビジネスとして非資産型企業に傾斜します。
1999年
エンロン・オンライン(ITベースの電力市場)設置、
全てのエネルギー商品の売り買いともエンロン自身が取引相手になる事でリアルタイムプライシングを実現。
デリバティブ比率は8割を越え、見かけ上の売上・収益は急拡大
「フォーチュン」誌などに“アメリカで最も革新的な企業」と賞賛されます。
2000年
大統領選でブッシュを金銭支援、10万ドル献金。
カリフォルニア電力危機をも市場のカラクリで蓄財手段とします。
ブッシュ政権の規制緩和政策のもと自己粉飾による信用創出で全米売上第7位に登り詰めます。
粉飾はライブドアが大いに真似たSPE(特別目的事業体)を隠れ蓑にした会計のカラクリで行われました。自ら発行した実体のない有価証券を、自ら保証する事で売りまくり、その資金で更に会社を水膨れさせ見かけの信用を創出する。“偽札”は流通している限り“偽札”とは見なされず、信用を創出します。貨幣の本質を熟知した見事な“偽札つくり”と言えましょう。
2001年
社員数21000名に拡大するが、海外事業の失敗などが一部明るみに出て株価低迷、後継社長のスキリングは早々と辞任、逃げを打ちます。
経営役員会で子会社の赤字が10億ドルと内部告発、一部の赤字を決算発表、ケネス・レイ会長は自社株2400万株を売り抜けます。
業界紙が不正疑惑を報道、SEC(証券取引委員会)の調査が始まり株価急落、ダイナジー(パイプライン企業)との買収交渉も決裂、連邦破産法申請
当時としてアメリカ史上最大の破綻となりました。
2004年
FBIがケネス・レイを不正会計で訴追。
デリバティブやSPEばかりか、現政権への密着、世界有数の会計事務所(アンダーセン)の荷担、球団経営にまで乗り出した広報活動から幹部の”謎の自殺、”知らぬ存ぜぬ”で白を切る最高責任者までライブドアの事件はエンロンの歴史と何と符合している事でしょう。
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マネーゲームの果てに
2010/01/05 01:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
エンロンは、1985年7月、天然ガス輸送パイプライン会社インターノースと天然ガス輸送パイプライン会社ヒューストン・ナチュラルガスの合併によって誕生した。設立当初のエンロンはテキサス州周辺の中小ガス生産業者から天然ガスを買い上げ、それをパイプラインで輸送するという、堅実ではあるが利鞘は薄い商売をやっていた。創業当時の株価は僅か6ドル前後だった。
しかしレーガノミクスによる規制緩和に伴い、エンロンは野心的な事業拡大策に乗り出していく。1989年にジェフリー・スキリングが「ガス銀行」のアイディアを創案し、天然ガスのトレーディングを北米と欧州で開始したのを境に株価は上昇に転じ、1992年には10ドルを突破。アメリカのITバブルの波に乗る形で発展を続け、1999年には37ドルに達した。同年11月にはエンロンオンラインが稼働、12月には『フォーチュン』誌で「働くのに最高の百社」の第24位(エネルギー業界では1位)に選ばれた。
2000年1月21日には株価が71ドル63セントまで上昇、同年2月には『フォーチュン』誌において5年連続で「米国で最も革新的な会社」に選ばれた。アナリストはエンロン株は最高の買い銘柄で、株価は97ドルまで行くと予想した。
エンロンは 2000年度の売り上げベースでは全米第7位に躍進し、アメリカを代表する大企業にまで成長した。だが、この年の12月2日、エンロンは連邦倒産法第11章適用を申請し、事実上倒産した。
アメリカの1地方ガス会社にすぎなかったエンロンは、如何にして世界にエネルギー革命をもたらしたのか。そして何故、突如破綻したのか? エンロンの栄光と転落の軌跡を克明に描き出した迫真のノンフィクション。今またサブプライム問題という「偽装」に揺れる世界経済にとって、「エンロン問題」は決して過去の出来事ではない。