紙の本
乱歩賞だけがスカというわけではない、たとえばあまり知らないような主要新人賞を独占したとの謳い文句のこの本も、正直、空振りだった
2005/01/07 21:00
10人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット。気持ちは優しいが、州知事を偶然検挙してしまうような不器用な男。ある日裏庭で娘と見つけた死体は、かつて彼の銃を奪おうとした密猟者だった。次いでキャンプ場にも二人の死体が……。
「新ヒーロー誕生」と全米で絶賛され主要新人賞を独占した、大型新人登場!」
さてさて、華々しいうたい文句だけれど、では具体的に「主要新人賞」とは何で、「大型新人登場」とあって「受賞作」と書いていないのは、この作品は肝心の受賞作ではないのか?と疑問を抱かせる案内文は下手である。ちなみに、カバー折り返しには本書がその受賞作と書いてある。それなら本の後にもきちんと書きなさいって!
それから疑惑の「主要新人賞」とはアンソニー賞、マカヴィティ賞、バリー賞、ガムシュー賞で、あとがきに依れば「史上初の四冠達成」だそうである。うーむ、聞いたことのない賞ばかり。知名度の高いアメリカ探偵作家クラブ賞にはノミネートどまり。シェイマス賞やCWA、ハメット賞などはどうなっておるんだ、なんだか世界一長いうどんを作ってギネス記録みたいなもんか?である。ま、悪口ばかり言うと好男者(変換間違いではない、ジョークです)に嫌われるので、アンソニー賞だけは有名なことは書いておく。
さて、イチャモンはこれくらいにして主人公のことを書こう。紹介にもあるように、ジョー・ピケットはワイオミング州に55人いるという猟区管理官の一人で何故か年齢不詳、妻のメアリーベスも美人とは書いてあるものの矢張り年齢は詳らかではない。ほかに読書好きの長女シェリダン7歳、あまり出番のない次女ルーシー3歳、資産家で主人公の稼ぎが少ないことに不満を隠さない義母のミッシーがいる。
で、彼の家で因縁のある男アウトフィッター(アウトドア・レジャーのサポートを行うガイド)のオート・キーリーの死体が、続いて彼の仲間らしき死体が発見される。にもかかわらず事件はうやむやにされそうになっていく。大自然のなかで起きる事件と人間たちの葛藤が描かれていく。
他に、引退したワイオミング州猟区管理官でジョーを後継者に推薦した、現在〈インターウェスト・リソース〉土地管理部長のヴァーン・ダネガン。この地域で連続して郡保安官を勤めるバド・バーナム。次回の保安官候補で猟区管理官のウェイシー・ヘイダマン、富豪の妻で奔放な生活を送るエイミー・ケンジンガーといった人物が面白い。
あとがきに、この作品がアメリカで絶賛された経緯が書かれている。いかにも能天気なアメリカ人丸出しの評のオンパレードには笑うしかない。たとえば主人公の造形に関して、家族のために立ち上がる男みたいなことが書かれている。しかしだ、そうではないことは読んですぐ気付くはずである。
ジョーは家族、妻のメアリーベス、娘のシェリダン、あるいは義母のミッシーが出している信号を読み取れない愚かな人間である。それについて、まったく反省がない。自分の思い込んだ生き方こそ全てである。どう考えても不必要な行動をして、その挙句が銃撃、しかも防ぐことのできる撃ち合いである。どこが勇者か? 勝手に戦争して威張っているアメリカそのものである。
しかもだ、圧倒的な自然描写? どこに? たとえばスティーヴン・キング『トム・ゴードンに恋した少女』の描写とどちらが優れているか、一読瞭然だろう。今のアメリカ人は、環境と武器を持たせれば、それだけで満足しているというのがよくわかる。新味のない作品で、この後に続くシリーズ作が評判になったという記事がないのも、むべなるかなである。
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後書きに訳者が書いているようには、自然描写が良いとは思わないし、伏線がみえみえで先の展開は読めるしということで、新味は感じられない。
視点が主人公ジョー、娘シェリダン、他の登場人物と分散して描写されているのが不満。視点を主人公に固定して、じっくり描写して欲しかった。
とはいえ、主人公が溜め込んだ感情が爆発するラストにはカタルシスを感じるほど、すばらしかった。
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あまり面白くなかった。
主人公にあまり魅力を感じなかったのが原因か。
【2008年5月18日読了】
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『さよならまでの三週間』が面白かったので未読の猟区管理官シリーズを買ってみました。面白くてどんどん読んであっという間に読了。でも、この作家のマッチョで銃所持に積極的に肯定的な傾向はやはり気になります。
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ちょっと頼りない感じの猟区管理官ジョー・ピケットが主人公。舞台はワイオミングの山奥っていっても全くどこだかイメージはわかない
このジョーは登場するといきなり不法な狩猟者(厳密には違うらしい)を捕まえるのだが、おおボケをかましてくれます。これで読者がこの人は主人公ではないと思ったとしても不思議はないでしょう。
いや、私はそう思いました。
しかし話が進むうちに家族が登場してきます。妻と3人の子供、そしてそりの合わない義母の4人です。
このうち、一人はまだおなかの中ですが…
中でも長女は本編のヒロインと言っても過言ではないでしょう
物語の中盤まで、人がよいだけのぱっとしないジョーですが、
終盤にはちゃんと読者にカタルシスを作者は用意しています。
はたしてハッピーエンドかどうかは読者によって感じ方は異なるでしょう
私としてはまぁ満足のいく結末と感じています。
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営業中に隙間時間ができたので神保町の古本屋でなんとなく買ってみた一冊。
さえない猟区監視官が主人公。
絶滅危惧種を守ろうとするのは人間のエゴなんだ!って密猟者が長々と語るシーンがとりわけ良い。
終わり方は実にアメリカ的なハッピーエンドw
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ワイオミング州山奥の狩猟管理官ジョー・ピケット。
二人の家族と娘を愛し、
そして狩猟管理官という仕事を愛している。
でもその収入の少なさから妻に満足な暮らしをさせてやれないという引け目を感じているジョー。
密猟の現場を押さえる場面でちょっとしたドジを踏み、周囲の冷ややかな視線にさらされちゃうジョー。
あらら~~の可哀そうなキャラですが、
後半ぐんぐんと本領を発揮。
密猟者が殺害され、犯人を追うジョー。
土地の利権、権力者との関係、密猟と絶滅危惧種の生物。
そして愛する娘が持つ秘密が狙われる!!
ちょっと、翻訳が読みづらかったけど、内容は文句なく面白い!!
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米国のミステリ界では絶賛されたらしいが、どうにも退屈な作品だった。絶滅危機種を題材にした所謂環境保護を大きなテーマとし、私利私欲にまみれた権力者と猟区管理官の主人公の対決を描くのだが、これがなんとも頼りない。娘が事件に巻き込まれ、自宅から失踪したと聞いた直後でさえ現場に駆けつけることなく、回り道をして真犯人探しを続けるなど、あり得ない行動ではないか。どの人物も平凡な造形で、プロットの練り込みも足りないと感じた。
恐らく、いかにもアメリカ的な舞台と家族愛、さらには暴力的な決着の付け方が、当の国では受けたのだろう。
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猟区管理官ジョー・ピケットシリーズ第一作目。真面目で型物で正義感の強い猟区管理官が主人公。密猟者や自然の中で生活を好むアウトフィッターと呼ばれる男たちが殺される事件が起こり、主人公も捜査に乗り出すのだが、かつての上司や所属する局上層部から圧力がかかる。絶滅危惧種をめぐる事件の真相を追う話。序盤は頼りない印象の主人公だが、後半ピンチに直面すると突然家族のため正義のために英雄と様変わりする。主人公の妻と子供がすばらしい。猟区管理官というなじみが全くない職業について知れるのはおもしろい。
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猟区管理官という仕事を心から愛するジョー・ピケット。
しかし管理官としては誠実であるものの、少々頼りない。
ある日、自宅の庭で男の死体を発見する。それはジョーと少し因縁のあるレジャーガイドだった。
その男の死から引き出される疑惑を追ううち、ジョーは陰謀的に追い詰められ、家族も窮地に追い込まれる。
犯人や事件の原因は途中から想像できますが、おおかた頼りなかったジョーが、家族の信頼に支えられ、その家族を守るために犯人を追い詰める様は定番ゆえの痛快さ。
自然の描写が多かったのも、世界観に厚みを足していて好みでした。
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猟区管理官ジョー・ピケットシリーズ第1巻
ジョーの頼りなさが、捜査の進展のなさ
安い給料で、才能のある嫁の将来を奪ったとの姑からいびり
とともにストレスを感じるのだけど
(主人公なのか?と疑いたくなる)
娘が頑張るのでそこは気にせず
むしろラストに迎えるカタルシスにつながる
「現代のウエスタン」であり
サラリーマンや、時代劇、任侠モノにも
通じる「悪に立ち向かうただ一人の正義」
に心を打たれる。
読み終えてからジョー・ピケットシリーズは全巻手元に揃えました。
ここに
「真夏のジョー・ピケットフェア」開催
を宣言いたします!
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間抜けすぎないか、この主人公。どう考えてもモブ。とか思ってたらやってくれました。後半戦。次巻も読みます
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ちょっと間抜けなエピソードから導入されるので、主人公のジョーに対してハラハラしながら読み進めることになるのが心憎い。ジョーが腹を括ってから、話が加速する。腹を括ることになる奥さんのメアリーベスがかける言葉が素晴らしい。子供のころからなると決めてなった猟区管理官。家族のこと・収入のこと・仕事に対する誇りの間で悩むジョーのことが、他人事と思えない。面白かった。
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猟区管理官 ジョー・ピケットシリーズの第1巻。
天空の犬シリーズ樋口明雄氏が、インスパイアされた雰囲気がよく伝わる。
一言で言えば、かなり面白い。
自然、野生生物を守るジョー・ピケットは、スーパーマンではない。
猟区管理官の仕事を精一杯やり、そせて家族のことも精一杯護り、育てている。
しかし、彼がトラブルに巻き込まれ、家族が危機にさらされたとき、敵の能力をはるかに凌駕する彼の真価が発揮される。
その後の展開は、痛快。
面白かった。
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図書館の本 読了
内容(「BOOK」データベースより)
ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット。気持ちは優しいが、州知事を偶然検挙してしまうような不器用な男。ある日裏庭で見つけた死体は、かつて彼の銃を奪おうとした密猟者だった。次いでキャンプ場にも二人の死体が…。「新ヒーロー誕生」と全米で絶賛され、主要新人賞を独占した、大型新人登場。
普通の男性がヒーローになり得るっていい展開でした。
悩むし、ブレるし、義母は苦手だし。
でも良き父親、良き夫。
ジョーピケットはシリーズなのでつつけて読みたい。
ジェシカ、ルーシーもどう育っていくのか。
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