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山田風太郎忍法帖短篇全集 6 くノ一忍法勝負 (ちくま文庫)
くノ一忍法勝負 ――山田風太郎忍法帖短篇全集(6)
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収録作品一覧
倒の忍法帖 | 7−66 | |
---|---|---|
叛の忍法帖 | 67−130 | |
虫の忍法帖 | 131−170 |
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紙の本
忍法とハサミは使いよう
2004/10/20 07:46
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投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
息子は父の背を見て育つというが、背を見られている父親はどう
反応するだろう。「俺もそんな年になったか。」と感慨に耽るか。
それとも照れ笑いを押し隠すか。ところが背を見られるのを好まない
父親もいる。さしずめ徳川家康など、そのタイプだ。常に自分の視界内に息子の姿をおさめ、自分の思考回路内で行動するよう制御する。だから息子に少しでも反抗的な兆しが見えると、「すわ謀反か。」と気になる。
「羅妖の秀康」で服部半蔵に次男・秀康を探らせていた家康だが、「倒の忍法帖」では越後の太守となっている六男・松平上総介忠輝を調査対象に選ぶ。彼は藩下の人間を優劣によって天・地・人の三段階に分け、優秀なもの同志をかけ合わせるという選民思想を実行した、いわば三百年早いヒットラーであるが、家康が気にしたのはこの点ではない。政策を実施する際に忠輝が高札に書いた文句「無刀の極意を以てあらゆる妨害者を慴伏せしめる」を、無力な大坂を力で攻めようとしている自分への面当てと取ったのだ。しかしいきなり息子を殺せと命じるのも気が進まず、「まずは閨での色仕掛けで、真意を確かめよう。」とこれも秀康の時と同じパターンで、くノ一を派遣する。しかし半蔵も家康も、前回の失敗から全然学んでおらぬ。真正面から正してみれば済むのに、まわりくどい方法を取るから、死ななくてもいい人達が次々と死んでゆく。世の中には、子供を作ろうと悪戦苦闘する人もいるというのに、何でわざわざ生まれてきた子を死なせようとするのか。「虫の忍法帖」における関白秀次の必死さを見よ。太閤に死を命じられた秀次は、自らの子を残すために、特殊体質のくノ一を介して、恋しい女に自分の子を生ませようとする。また、大名達にも子供の有無は、家の存続がかかった大問題である。「淫の忍法帖」では、世嗣ぎのできない藩主に代わって、選ばれた藩士達を奥方及び側室と交わらせるという苦渋の決断をする。しかしそのために、忍者の婚約者が藩士達の生贄に捧げられ、果ては狂ってしまう。「呂の忍法帖」でも、女嫌いの藩主の体質を改善させるため、肉輪の法を用いた呂の術によって、精気の有り余る人から藩主へと移し替える作業が行われる。想像するだにおぞましく、また滑稽な儀式には、丁寧に図式までついている。
奇々怪々、種々雑多の忍法は、いつも人を殺すために使われるのではない。人を生かすために使われる忍法だってある。要は、使う人次第である。そして息子がどう育つかも、実は父親次第なのである。
などというありがたい人生訓も、時には教えてくれる(?)、山風忍法帖シリーズ第6弾。