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青春の門 新装決定版 第1部上 筑豊篇 上 (講談社文庫)
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紙の本
愛する者の死を期待する感覚
2008/06/21 13:52
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナンダ - この投稿者のレビュー一覧を見る
久野収の対談を読んで五木を読んでみようと思った。久野は「雑誌や新聞記者は五木の文章に学ぶべきだ」といった主旨の発言をしていた。「冬のひまわり」という短編もそれなりによかったが、この本の比ではなかった。筆力と、人間の洞察力に圧倒されながら、500ページ余りをあっというまに読んでしまった。
はじめてオナニーを知るときの罪悪感。愛する人を守りたいと思いながら犯されるところを想像して興奮してしまう感覚。親の死んだ後の解放感を想像してしまう二面性と、それに気付いて「自分は冷たい人間じゃなかろうか」という自責の念……。
性に目覚め、自我に目覚め、生き方に悩み、先の見えない人生に茫漠とした思いを抱く主人公の青春時代を描く。
私自身の10代をふりかえると、こんなときに親に反発したなあ、とか、もてなくて苦しんだな、といった、言葉や理屈で追える部分はおぼえている。けれど、親や恋人を愛しながらもその死をどこか期待するかのような部分などは、読んでみてはじめて、「たしかにそんなことを思った」と思い出させられた。十代だったころのどろどろした感覚をすっかり失っている自分に気付き、愕然とした。
小説の舞台は戦中から戦後直後の筑豊だ。朝鮮人への露骨なまでの差別、戦後の労働運動、それを弾圧するヤクザといった、今とはまったく異なる舞台装置なのに、古さを感じさせない。