綿矢りさのしくみ （Ｌｏｖｅ ＆ ｐｅａｃｅ）

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投稿者：みーちゃん　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

この本、奥付らしきところに沢山の関係者の名前が載っていて、写していると間違えそう。とりあえず表紙デザインが、コンコルド・グラフィックスの相馬章宏、表紙と扉のイラストがオオクボナオミとだけ書いておく。

本の隅っこに「Love＆Peace」、裏に「Install＆Kick!!」。裏表紙に目次と著者案内を兼ねて、第1章「「綿矢りさ」と同世代の文学少年少女たち」吉本譲次（元早大生）、第2章「徹底吟味　『蹴りたい背中』の技術水準」渡部直己、第3章「「にな川」の欲情する背中　『蹴りたい背中』を尋常に読む」小谷野敦、付録「綿矢りさキーワード小辞典ほか」とある。

てっきり小谷野敦の本だと思ってネット注文した読者は、手元に届いた本を見てあっけにとられると思うんだね。まず共著と言う点。本のつくりが、如何にも便乗本らしく貧相。表紙の「小谷野敦　渡部直己　吉本譲次」という著者名の並べ方が、本の内容にリンクせず、多分、有名な順に（小谷野以外、誰も知らんぞ）並んでいること（これって、典型的な詐欺の手口）。

笑えるのが目次の吉本譲次だけ（元早大生）と注記してあること。吉本だけが無名なわけ？「綿矢りさ」の名前に惹かれてこの本を買った人にとっては、残りの二人だって、無名。ま、私のように小谷野命みたいな人もいるけれど、それなら渡部直己って何なのさ？

その渡部の文が、あまりにエラソーなんで噴飯してしまうわけ。しかも、自分の章の最後を、自著を読めと締めくくるなんざぁ他人の褌で相撲を通り越して、庇を貸して母屋を取るというか、盗人猛々しいというか、あんた何者？と思うと、これが早大卒の文芸評論家で、近畿大学文学部教授というから、笑える。

むしろ、付録がいい。その内容は「綿矢ワールドを歩く」：「無印良品」と「高校」番外編「綿矢カレー」、「綿矢りさキーワード小辞典」、「第2の綿矢りさをさがせ！文学少女ポートレイト集」で、特に巻末に早稲田大学文学部が誇る？美女軍団の顔写真がいっぱい。工夫という点では田中啓文『蹴りたい田中』には、負ける。完敗である。なんと言っても安直。笑い、と言う点でも少し負けるかもしれない。でも、それはそれ、B級映画ならぬC級本の楽しみここにあり、でかわす。これぞ便乗本。

なんたって、著者の三人は実際の「綿矢りさ」と話すらしていないのだ。しかも、この本には肝心の綿矢の写真は載ってはいない。やれ『インストール』の写真の大きさは凄いとか、他の文藝賞受賞者である黒田晶、佐藤智加との肖像写真寸法比較までやりながら、多分版権のせいと、パクリ本という安直さというか胡散臭さに対するKWD書房新社の反発もあってだろう、その実際を紙面上で見せることが出来ていないのである。

さて、内容的に納得したのは、やはり小谷野敦「「にな川」の欲情する背中　『蹴りたい背中』を尋常に読む」。似非評論家に対する直言には、思わず前の章を思い浮かべてしまう。次は、付録「綿矢りさキーワード小辞典ほか」。「綿矢ワールドを歩く」に関しては、ちょっとストーカー染みてキモイ。番外編「綿矢カレー」は、この本のコンセプトと同じ。何だか切なくなる。その点ポートレイト集は、楽しい。

次点は「綿矢りさ」をだしに、女子学生と話をしたかっただけじゃないの、とその品性を疑わせる吉本譲次「「綿矢りさ」と同世代の文学少年少女たち」、補欠が、そこまでいうなら自分で傑作書いてみな、結局自分の本の宣伝かよとムカつく渡部直己「徹底吟味　『蹴りたい背中』の技術水準」という順。大学生活が伝わるだけでも吉本が上。

それにしても、渡部直己、何様？教科書どおりに書けば傑作が書ける？指導に従っていれば名作が生まれる？男は権力に逆らってナンボなのに、先生、自分に従えばかりのたまう。こんな先生にぶつかったら、悲劇だね。やっぱり習うなら、小谷野さんかな。