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紙の本
洒落に徹した名解説
2004/12/26 23:37
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:北祭 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文藝春秋の編集部はまた奇妙なことを思いついたものである。物故者の解説を、ご本人その人に執筆願おうというのである。
その没年(架空)、経歴、代表作、望ましい死の状態描写、辞世の句から最後の言葉までどうぞ一切おまかせします、ただし執筆は三人称で、との依頼が各界著名人に送られた。ここで逃げたら寿命が縮むと思ったか、ぞくぞくと編集部に原稿が届いたようである。
たとえ洒落であるとはいえ、本人の死亡記事ともなれば、自身普段から意識している経歴や代表作に触れないわけにはいかないようで、各人なかなかに興味深いものがある。
ここでは、さもありなんと膝を打つ、洒落に徹した名解説のさわりのいくつかをご紹介する。
■「<歩く百科事典>逝く」荒俣宏
作家で博物学者の荒俣宏さん(六十四)が八月四日未明に杉並区の自宅で物故された。ここ数ヶ月体調不良を訴えていたが、病院ぎらいのため医師の診察を受けず、インターネットを通じポルトガルから取り寄せた民間薬を服用していたという
■「若者グループと乱闘、死亡」筒井康隆
二十七日午後三時二十分ごろ、東京都渋谷区神宮前の表参道で作家・俳優の筒井康隆さん(九十五歳)が、通行中だった原宿族の若者六、七人と乱闘となり、全身打撲、内臓破裂で死去した。筒井さんは数年前より自宅近辺のこの付近を散歩し、気にくわぬ若者とみれば杖でなぐりつけていたのだが、この日も若者のグループに襲いかかり、逆に袋だたきにされて死亡したと見られている。…
■「条理を欠いたそのDNA」別役実
先月十七日、新宿区西新宿二丁目新宿中央公園にて発見された白骨死体は、早稲田大学考古学研究所における考古学的検証の結果、かねて行方不明中の劇作家・別役実氏(七十二)のものと判明。本来この種の白骨死体は、医療機関に委ねてDNA鑑定により、身元を明らかにするのが通例であるが、同白骨死体のDNAは判読をするのが不可能なほど条理を欠いており、やむなく前記研究所に判断を仰いだもの。…
■「論壇の虚妄を叩き続けた波乱の生涯」谷沢永一
評論家 谷沢永一氏 死去
六月二十七日、吹田町の病院にて死去。七十?歳。死因肝硬変。…
荒俣さん、よしてくださいよ、あやしい民間薬は。 筒井さん、ありそうで恐い。 別役さんは、やっぱり人間じゃなかったのか。 谷沢さん、肝硬変ですか、なるほど。お酒の量はほどほどに。
文筆家の生涯とは、最後の記事を書くに及んでも目一杯自らを演出するしかないのだと悟らされた。
※本書の親本は2000年に刊行されており、記事を書かれ既に故人となられた方がある。安原顕氏がその一人である。bk1には氏の書評が残っている。「ぼく自身も、著名人ではないがなぜか頼まれて寄稿している。読んでみて、みんな巧いので感心した。…どうです? 面白いでしょうが。みなさんも各人がユニークな「死亡記事」を書いてみては如何でしょう。」、という言葉を拾うことができる。氏の意向に沿って本書の可笑しさを存分に味わいながら、ご冥福をお祈りいたします。