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紙の本
ちょっと物足りないが、テーマに惹かれたのなら読んで損なし
2005/09/14 09:05
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台は第2次世界大戦前半、イギリスがまだ孤軍奮闘していた1941年初夏。イギリスは爆撃機によるドイツ攻撃を試みていたが、そのたびに敵の待ち伏せを受け、返り討ちに遭っていた。どうやら情報が漏れているらしい。
一方、ドイツ占領下のデンマーク。18歳の高校生ハラルドは、ドイツ軍の基地で、大きな長方形の金網が回転しているのを偶然目撃した事から、対独レジスタンス活動に身を投じていく。
レーダーという言葉すらまだ一般には知られておらず、イギリスが相手の技術レベルを把握していなかった、レーダー黎明期の状況が興味深い。また、ドイツにあっさりと降伏したため、比較的緩やかな占領状態に置かれていた、当時のデンマークの状況も興味深かった。このような背景が丁寧に、だが物語のテンポを損なわずに描き込まれているのは、さすがである。
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だが、物語としてはちょっと物足りなかった。邦訳版のあらすじ紹介が詳しすぎて、読む前から筋があらかたわかっていたせいもあるが、ストーリー展開がまともにすぎて、細部のひねりや波乱にいささか乏しいのだ。特にクライマックスは、もっと盛り上げてほしかった。また、登場人物がおしなべてステロタイプなのも、物足りなく感じた一因だろう。
だが、それでも充分おもしろいし、肩が凝らずに楽しめる。同じ作者の「針の眼」や「レベッカへの鍵」に匹敵する大傑作を期待するとガッカリするだろうが、本書のテーマに惹かれたのなら読んで決して損はないと思う。