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紙の本
反対進化 (創元SF文庫)
著者 エドモンド・ハミルトン (著),中村 融 (ほか訳/編)
●中村融氏――「途方もない奇想を情感たっぷりに語る短編の名手」途方もない奇想を情感たっぷりに語る短編の名手ハミルトンの傑作10編を精選。カナダ奥地で発見されたゼリー状の奇...
反対進化 (創元SF文庫)
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商品説明
●中村融氏――「途方もない奇想を情感たっぷりに語る短編の名手」
途方もない奇想を情感たっぷりに語る短編の名手ハミルトンの傑作10編を精選。カナダ奥地で発見されたゼリー状の奇妙な生物の驚くべき正体は(表題作)。人里離れた山中に落下した多面体状の隕石が秘めた秘密(「呪われた銀河」)。《キャプテン・フューチャー》と同じ宇宙を舞台にした冒険譚(「失われた火星の秘宝」)。未来が現実となったときのSF作家の哀愁(「プロ」)など。編者あとがき=中村融【本の内容】
収録作品一覧
アンタレスの星のもとに | 中村融 訳 | 9-76 |
---|---|---|
呪われた銀河 | 中村融 訳 | 77-108 |
ウリオスの復讐 | 市田泉 訳 | 109-159 |
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紙の本
SF神髄
2005/08/06 19:20
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
単なる奇想ではなく、常に文明を相対化して見ようとしている切れ味の鋭さが爽快だ。
最新科学知識に基づいた突っ込みをしたがる向きもあるだろうが、元々1930〜40年代にかけての米国で、冒険小説に科学的なアイデアを付加した小説がブームになり、西部劇=ホースオペラにおけるフロンティアを宇宙に拡大しただけだとしてスペースオペラと呼ばれていた。それが結果としては舞台の雄大さで新しい夢想の形を世に出し、例えば映画「スターウォーズ」を生み出す原点になった。当時、多くはベム(怪物)と美女とヒーローという単純な構図のものだったらしいのだが、その中でひときわ光を放ち、現代でも評価され愛読されている作家の一人が、キャプテンフューチャーシリーズ(NHKでアニメ化されましたよね)などで有名な本書の作者E.ハミルトン。
科学と冒険という新しい枠組みに水を得た魚のように、奔放な想像力を解放し、世紀が変わってもなおその創造世界は驚かされるばかりなのだ。
本短編集の各作品では、膨張宇宙論(ビッグバン理論の前)や、遺伝子レベルでのネオ・ダーウィニズム、核物理学といった当時の最新の科学的知見を駆使し、人類の持つ固定観念というものをじゃんじゃかひっくり返していく。
さすが30年代とでもいいたくなるような楽観主義、ご都合主義も、現代の読者であれば、人類文明へのアイロニーとして機能していることに気づくはずだ。例えば冒頭作「アンタレスの星のもとに」を単なる冒険小説として読むか、主人公の境遇と選択する道の関係の暗示を感じるかだ。そういう視点の持ち方は、やはり映画「宇宙戦争」の原作者H.G.ウェルズの系譜をしっかり受け継いでいるのではないだろうか。
これを読んでおけば映画の楽しみもひと際増すと思う、あくまでもポップなスタイルで貫かれた、いろいろな意味での原点の詰まった本。